当事者主体の災害準備-東松山市と埼玉県立東松山特別支援学校との福祉避難所開設・運営に関する連携
「新ノーマライゼーション」2025年11月号
東松山市健康福祉部社会福祉課
福島朋和(ふきしまともかず)
本誌令和7年7月号で、東松山市社会福祉課(以下、市)における避難行動要支援者避難支援制度と福祉避難所の取組の設計について報告しました。本稿では、令和5年度から令和7年度にかけての埼玉県立東松山特別支援学校(以下、同校)と市との具体的な連携について述べます。同校は知的障害を対象とした特別支援学校で小学部・中学部・高等部があります。また、同校は市の指定避難所(水害)および指定福祉避難所であり、福祉避難所としては在校生と卒業生が受け入れ対象です。
筆者は埼玉県立松山高等学校に在学時に、埼玉県立松山女子高等学校および同校(当時は東松山養護学校)の3校の生徒会で年に一度の「交流会」を始めました。20年以上経った現在もこの行事が継続していたのは嬉しい驚きでした。
1. 教職員向け防災研修会(令和5年度の取組)
福祉避難所開設運営マニュアル(内閣府、令和3年)の改正を受け、市では、福祉避難所への直接避難に向けた協定書を見直しの上、運用の整理に着手し「毎月の福祉避難所防災倉庫の点検」「年2回の福祉避難所担当者会議の開催」「年1回の福祉避難所開設・運営訓練の実施」を始めました。協定施設、市、社会福祉協議会の各担当者が顔を合わせる機会が増え、同校は外部講師を活用して教職員向けの防災研修会を行っていることを知りました。
令和5年8月25日の防災研修会の参加者は、市からの呼びかけで自治会や民生委員など地域から8名、社会福祉協議会から2名、市から5名の他、同校が呼びかけた就労継続支援B型作業所でした。外部講師が呼びかけた市内のNPO法人、大学の防災サークル、防災士からは、防災の取組について説明(各10分)がありました。同校を中心に防災について多様な関係者が顔を合わせ議論することができたのは大きな成果でした。
2. 同校と市の合同防災訓練(令和6年度の取組)
市では、前項で説明した協定の運用の整理と合わせて、市独自の福祉避難所開設・運営マニュアルの作成に向けて、災害が起きた際の「市災害対策本部」「市社会福祉課」「福祉避難所協定施設」「避難者」の動きを整理したフロー図を作成しました。また、前年度から避難行動要支援者を対象にした自治会単位での避難訓練を行うなかで、前稿で触れた「当事者に寄り添った対応」という課題が見えてきた時期でもありました。
図 福祉避難所 開設フロー(直接避難)
(拡大図・テキスト)
市から同校に福祉避難所開設・運営訓練の実施を打診したところ「児童生徒を対象にした防災訓練と組み合わせた訓練ができないか」という申し出がありました。そこで、「児童生徒が避難所に慣れる」「市の避難所担当職員が当事者の特性を理解する」「作成したフロー図に沿って運営する」の3点を目的として合同訓練を実施しました(令和7年1月21日)。
開設フローに沿って市の避難所担当職員10名が参集し、受付、簡易ベッド、間仕切り、テント、簡易トイレを体育館に配置しました。児童生徒は、教員と共に学年ごとに教室から校庭に避難した後、体育館の各ブースを回り、市の避難所担当職員による説明を受けて、避難所の生活を体験しました。
この訓練で、当初に掲げた目的を一定程度果たすことができただけでなく、「テントの入口でつまずきそうになる児童生徒が多く、テープで留めるなどの工夫が必要」などの外部講師からの指摘を実感し共有することができました。また、初めて見る物品に興味と戸惑いを感じている児童生徒もおり、継続して訓練を実施することの重要性を再認識しました。訓練を踏まえて、市は、令和6年度末に福祉避難所開設・運営マニュアルとアクションカードを作成し、市内10か所の協定施設に配付しました。
3. 地域住民の防災見学会(令和7年度の取組)
令和7年7月15日には、同校の協力のもとに「防災見学会」を、自治会等を対象に行いました。訓練後に「本校は一般避難所としての指定も受けて、令和元年東日本台風では金曜深夜から土曜に市職員により開設・運営された。地域住民が開設や運営を担うことも考えられるが、校内の防災倉庫の場所、物資の移動ルートなどが知られていない」という指摘があったからです。
当日は、近隣自治会関係者2名、埼玉県防災士10名(同校学校評議員を含む)、社会福祉協議会2名、市職員4名が参加し、防災倉庫と避難場所である体育館等の見学と意見交換を行いました。物資の移動には、同校の備品であるリヤカーを使用することを想定し、リヤカーの保管場所も確認しました。
防災見学会により、広大な同校の敷地で、防災倉庫や避難場所となる建物の位置、鍵の所在や開け方などを自治会関係者が把握し、災害時の備えとすることができました。また、自治会関係者にとっての最大の心配は、高齢者も使えるような洋式トイレの個数でしたが、「すべてのトイレが洋式であること」を確認し安心を得ました。基本的なことを平時から確認しておくことが必要であると改めて感じました。
4. まとめ
前稿では事業の設計を、本稿では具体的な実践を報告しました。同校と市は継続して話し合い、新たな課題を設定し取組を続けています。何よりも「継続すること」「繰り返すこと」が重要であると考え、引き続き、市では同校と連携を図りながら、防災に関する実践を重ねる予定です。