障害者による文化芸術活動推進に関する取組について
「新ノーマライゼーション」2026年1月号
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室
障害者文化芸術計画推進官
森真理子(もりまりこ)
1.障害者文化芸術活動推進基本計画(第2期)について
厚生労働省と文部科学省は「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」(2018年公布・施行)に基づき、文化芸術活動を通じて障害者の個性と能力が発揮され、社会参加が促進されることを目的に、2023年3月に「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画(第2期)」(2023~2027年度)(以下「基本計画」)を策定しました。
この基本計画は、障害の有無にかかわらず、すべての国民が文化芸術を創造し、または享受する環境を整備すること、多様な人々がお互いを尊重し合いながら、文化芸術活動に関わる社会を構築することを目指しています。第2期基本計画では、合理的配慮の提供とそのための障害特性に配慮した情報保障や環境整備に留意し、障害者による文化芸術活動の裾野を広げ、実践の場となる地域における基盤づくりを進める観点から、1.障害者による幅広い文化芸術活動の促進や展開、2.文化施設や福祉施設等をはじめとした関係団体・機関等の連携による、障害者が文化芸術に親しみ、参加する機会等の充実、3.地域における推進体制の構築を目標に掲げています。文化庁をはじめとする関係省庁と連携を図りながら、施策を総合的かつ計画的に推進しているところです。
2. 厚生労働省の取組
厚生労働省では、二つの事業を軸に施策を進めています。一つ目の事業は、2017年度から実施している、地域における障害のある人の文化芸術活動の支援拠点となる「障害者芸術文化活動支援センター(以下「支援センター」)」を全国に整備する「障害者芸術文化活動普及支援事業」です(本誌4~5ページに実施団体による詳細な記載がありますので、ぜひご参照ください)。
2025年度に全都道府県に設置が完了した支援センターは、各地域の障害のある人による文化芸術活動の現状を把握し、文化芸術活動に関する相談支援、必要とされる人材育成、関係者とのネットワークづくりなどを行っています。この取組を通じて、障害のある人を中心に、家族、支援者、住民、福祉団体、文化団体、教育機関などがつながり、誰もがお互いを尊重し合う豊かな地域社会の土台が築かれつつあります。また、活動分野が多様化するなか、全国各地で障害のある人が、美術、音楽、演劇、舞踊などの様々な文化芸術活動に参加できる環境づくりを進めています。
二つ目の事業は、障害のある人の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害のある人の自立と社会参加の促進に寄与することを目的として開催されている「全国障害者芸術・文化祭」です。文化庁が主催する「国民文化祭」と一体的に開催することで、障害のあるなしにかかわらず、さまざまな交流や出会いの場が創出されています。2025年度は長崎県で「ながさきピース文化祭2025」として9月14日~11月30日に開催され、「文化をみんなに」をキャッチフレーズに、全国作品展や平和をテーマに障害のある人とない人が共に参加するワークショップ、コンサートなど、多くの魅力あふれる催しが行われました。2026年度は高知県で「よさこい高知文化祭2026」として10月25日~12月6日まで開催される予定です。
3. おわりに
文化芸術は、新たな価値を社会に生み出すとともに、多様性を尊重し他者との相互理解を進める力を持っています。本来、文化芸術活動においては、障害の有無にかかわりなく誰もが対等に享受・創造する権利をもっていますが、障害者による文化芸術活動の推進は、現在生じている文化芸術活動への参加や創造における物理的・心理的障壁を取り除き、誰もが多様な選択肢を持ち得る社会を構築するためのものであり、文化芸術活動全般の推進や向上に貢献し、新しい価値の提案をもたらすと同時に、共生社会の実現に寄与するものです。このような文化芸術活動の意義やその広がりを認識しながら、関連施策を推進していきたいと考えます。