文化庁における障害者の文化芸術活動の推進に向けた取組
「新ノーマライゼーション」2026年1月号
文化庁参事官(生活文化創造担当)付共生社会推進担当チーフ
佐橋明典(さばしあきのり)
1. 文化庁の取組
文化庁では、「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」及び「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画(第2期)」に基づき、障害の有無等にかかわらず、すべての方が文化芸術を享受できる社会を目指し、取組を進めています。
具体的には、1.文化芸術団体等と2.地方自治体に対して以下の支援を行っています。
1については、障害者等による文化芸術の鑑賞や創造機会の拡大、発表機会の確保等に係る先導的・試行的な取組を行う団体を支援することで、それをモデルとして全国各地に取組が広がることを目指しています。同時に、それらの取組を普及展開するための人材育成や、文化芸術へのアクセスを改善する取組など、課題を横断する取組に対しても支援を行っています。
2については、「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」に基づく地方計画を策定した地方自治体の取組に対し補助金を交付し、地域の実情に応じた取組を支援しています。
2. 取組事例
文化庁が支援した取組について、いくつか事例をご紹介します。
一つ目は、「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」(令和7年度、一般社団法人日本ろう芸術協会)です。11月に開催された東京2025デフリンピックを契機として、国内外の舞台や映画を中心に、ろう・難聴や手話に関連する作品を上演し、聴者とろう者・難聴者の相互交流の場を提供しました。会期中は秋篠宮皇嗣妃殿下(紀子様)及び内親王殿下(佳子様)をはじめ多くの方が来場し、相互理解を深めていました。
二つ目は、「劇場・音楽堂等による共生社会実現のための人材養成講座」(令和6年度、公益社団法人全国公立文化施設協会)です。専門性をもった人材の育成を目的として、劇場・音楽堂等の職員を対象に、経験値に応じた研修を行いました。将来的にはこれらの職員が地域の中核的なリーダーとなることが期待されます。
最後に、「CONNECT(コネクト)」(令和2年度~、株式会社京都新聞ホールディングス)の取組をご紹介します。文化芸術を通じて多様性と共生社会について関心を深めることを目的とし、障害のあるなしにかかわらず、どのような方でも楽しめるプログラムを、京都市岡崎エリアの6つの文化施設(京都国立近代美術館、京都市京セラ美術館、京都府立図書館、ロームシアター京都、京都市動物園、京都市勧業館みやこめっせ)が連携し実施しています。美術館における視覚によらない美術鑑賞や、視覚障害のあるアーティストと健常者アーティストとの対談、動物の鳴き声を光や振動に変換し聴覚障害のある方にも動物園を楽しめるプログラムなど、各施設の特色を生かしています。これほど多彩な文化施設が障害者の文化芸術活動の推進に向けて連携する取組は、大変珍しいと思います。
3. おわりに
障害者等による文化芸術活動の推進は、現在第2期基本計画の折り返しをむかえています。モデルとなる事例が蓄積され、他の地域への広がりも見られる一方、事例を普及展開する人材の育成については課題であると認識しています。人材の育成には、美術館・博物館、劇場・音楽等の文化施設のみならず、当事者を支援する団体や地方自治体、民間企業なども含めた、さまざまな主体における理解が欠かせません。
文化庁としても、引き続き課題への対応に取り組むとともに、すべての方が文化芸術を享受できる社会の実現に向けて取組を進めてまいります。