みんな違ってみんな生きている~さまざまな“みんな”に寄り添いアート活動を見守る~

「新ノーマライゼーション」2026年1月号

岐阜市社会福祉事業団 生活介護事業所アートフィールド 主任スタッフ
森真紀(もりまき)

アートフィールドは、令和5年4月に岐阜市社会福祉事業団の生活介護事業所として開所しました。岐阜市を流れる清流長良川とその傍で岐阜城を冠する金華山より北上した位置に、当時の岐阜県内ではまだ数少ないアートを活動の軸に据えた“みんなの居場所”になる事業所を目指して始まりました。施設内にはギャラリーを設置し、職員にはアーティストや美術教育に携わった者、学芸員の免許取得者を配置しました。もちろん生活介護事業所ですので、介護と看護のプロフェッショナルである職員が支援の中核を支え、日々をともに生活する中で互いの専門スキルの理解、習得に繋がっています。

開所当時、文化芸術において国内外問わず、障害者の生み出すアート、すなわち“アールブリュット”が注目されていました。しかし誰もかれもがその波に乗れる、つまり美術や音楽を日々の生活や活動に取り入れ、それがすぐに社会参加や自己実現につながるかどうかは当初は難しいこと、無理なことと思われていました。特に美術活動に馴染みのない支援者や保護者様の立場からすると、「芸術は決まった答えがないので支援できない」「できた作品をどう観ていいのか分からない。そもそも目の前にあるものが作品なのか訓練活動から生まれたものないのか分からない」などの声を聴くことも少なくはありませんでした。

そんな中、特別支援学校高等部の卒業を控え進路先候補の一つとして、重症心身障害や医療的ケアのある方(以下、Rさん)が当事業所を選択されました。Rさんは高等部でEyeMoT(アイモット:※岩手県立大学ソフトウェア情報学部・伊藤史人教授とその研究室で開発された視線入力訓練アプリ。2025年8月の段階で約60万ダウンロードを記録、ほぼすべての特別支援学校等で導入済み)を活用し、視線入力で文字を選択することでコミュニケーションが図れることを目指されていました。Rさんの保護者様は当時を振り返り、「病気の影響でどこまで見えているのか分からなかったが、EyeMoTを活用することで視野、目の動き、注視することなどが鍛えられた。同じ頃、全国でEyeMoTの「センサリー」を使用して自由な線やさまざまな色を組み合わせて絵を描き、それを「作品」や「アクセサリーのデザイン」に仕上げ、発表する人の存在を知り、私たちでもできるかも、と思い制作を始めた矢先にアートフィールドに出会った」と話されました。

Rさんが当事業所を選んでくださったことで、支援者はRさんとの生活を通じて本人を知り、意思を感じ取り、支援をどうすべきか、すべきでないのかを学ぶことができました。日々生まれてきた作品をどう社会と繋げていくのかを考えた時、真っ先に浮かんだのが人々の生活の中にある「もの」の中に生かすことでした。同じ岐阜市でコーヒーのドリップパックを製造・販売されている就労継続支援B型事業所に相談しましたら、「ちょうどパッケージのデザインを考えていました」とのことで作品の二次使用がなされた瞬間でした。その後も名古屋市の印刷会社の企画で、大手企業とのタイアップによる作品の二次使用も実現し、そのご縁が繋がり、展覧会への出品やトークイベントへの参加など、活躍の場を広げることができました。もちろんすべてご本人の意思を確認してからのことです。Rさんとの出会いがあったから我々もこれまでどおりでは繋がることのできなかった世界へと一歩踏み出すことができました。これからも同じ目線で寄り添いながら良きパートナーとして歩み続けたいと思います。“違う”みんなが毎日を安心して生きていける社会に向けて一歩一歩。


【参考文献】

伊藤史人:本気バトル!重度障害児でも100%自力で遊べるEyeMoTのオンラインゲーム.新ノーマライゼーション45巻9号:12-13,2025