快適生活・暮らしのヒント-私は二杖流(にじょうりゅう
「新ノーマライゼーション」2026年1月号
鈴木弘美(すずきひろみ)
日本弱視者ネットワーク
私は先天性白内障で生まれつきの弱視で、障害等級は3級です。海外旅行やブラインドテニス、ブラジル音楽好きの還暦女子です。今回紹介するのは椅子になる杖です。弱視の私がなぜ白杖ではなくて椅子になる杖なのか不思議に思われるかもしれません。実は小学生の時に右股関節に変形がみつかり、右足が少し短いです。
経年劣化でしょうかね、50代になってから膝や腰が悪くなり、60歳の誕生日頃から右股関節が痛くなり始めました。通勤電車で立っているのと階段を降りるのが辛かったのでT字の白杖を試してみました。体を支えられるので幾分か楽にはなりましたが、この白杖は認知度が低く、私が視覚障害者だと気づいてもらえません。空席を見つけづらい私にはあまり役に立たず数日で普通の白杖に戻しました。この話を整形外科医にしたら、白杖とT字杖両方持ったらどうかと提案されました。片手がふさがるだけでも不便なのに、人の気も知らないで!と思いました。
状態はさらに悪くなり、座って休憩しないと駅まで歩けなくなり、信号待ちではガードレールに座ったりしていました。そんなある日、小さな事件が起きました。ベンチに座ろうとした瞬間誰かの足を蹴飛ばしました。空いていると思っていた黒っぽいベンチには、黒い服を着た人が座っていたのです!
これはもう椅子を持ち歩くしかない。ネット検索してみると椅子になる杖があるではありませんか!値段は3000円から1万円を超えるものまでありました。果たして私にこれを広げて使う勇気があるのか、自信がなかったので3000円のものを買いました。初めて使うときは少しドキドキしましたが、痛いのよりはずっとマシです。「それいいですね」と話しかけてくれる人もいて、今では「私は右手に白杖、左手に椅子になる杖で二杖流です」と言っています。
もう一つ歩く距離を短くするのに有効なのが、ガイドヘルパーが視覚障害者の安全な歩行や外出先での情報提供をサポートしてくれる同行援護という福祉制度の利用です。迷わず効率的に目的地に行けるので助かっています。でも残念なことに、多くの福祉制度が重度障害者向けなので、障害が軽いから無理だろうと申請を諦めている弱視の方が多いです。また、自分で頑張ればできることを他人に頼ることに後ろめたさを感じる人も多くいます。でも元気なうちに、見えているうちに制度を使ってみることをお勧めします。制度を使い慣れて、使いやすい事業所や相性のよいガイドさんを見つけておくと、困ったときに心のゆとりが持てると思うのです。