ひと~マイライフ-小さな瞳が映す世界

「新ノーマライゼーション」2026年1月号

能松七海(のうまつななみ)

2001年生まれ、東京都出身。先天性脳性麻痺。都立上水高等学校、白梅学園大学卒。社会福祉士、介護福祉士。大学卒業後、自立生活センターにて当事者運動に携わる。幼少期よりピアノを弾き、障害者ピアノコンクール等に出演。中学2年生の時からアルプス子ども会にてリーダーとして活動。高校時代、文芸部東京都大会詩部門にて佳作受賞。学校外では、車いすバスケや陸上を経験。第17回全国障害者スポーツ大会出場。

こんにちは、能松七海です。先天性脳性麻痺のため、普段は車いすで生活しています。私は幼い頃から多くの人と出会ってきましたが、とりわけ子どもたちとのやりとりは、私にさまざまな気づきをくれました。

ファミレスで友人と勉強をした帰り道、お母さんと手をつないだ女の子とすれ違った時のことです。直前までの彼女はお母さんと手をつないで笑っていたのに、私と目が合った瞬間、まるで「未知との遭遇」そのものの表情で固まりました。たぶん車いすユーザーを初めて見たのでしょう。「なんか座ったまま動いてる!」「なんだ、あれ!?」そんな声が聞こえてくるようで、あまりの正直さに友達と笑ってしまいました。

駅やエレベーターなどでも、小さな子がじっと私を見つめてくることがよくあります。そんな時は笑顔で「この車いすかっこいいでしょ?」と声をかけ、軽く回転してみせます。すると子どもたちは興味のままに近づいてきてくれます。大人が「すみません…」と謝ることもありますが、子どもの素直さはむしろ嬉しいものです。「乗りたい!」という子もいて、外では難しいけれど、できる場では積極的に体験してもらっています。幼稚園に職場体験に行った時には、車いすを押したい子が並び始めて、廊下を何周も回り、「次は私!」「僕が!」とけんかになりかけたこともありました。

そして、子どもたちから最も多い質問が「なんで車いすに乗ってるの?」です。小学生の頃、下級生から毎日質問され、「お母さんのお腹から早く出てきたから」と説明していましたが、返ってくるのは必ず「なんで?」。納得してもらえず、質問攻めに疲れてしまいました。そこで私は、「早く生まれて頭を怪我したから」と言い方を変えてみました。すると「頭から血が出たの?」「一回死んじゃったの?」「車いすに乗ると生き返るの?」と想像が膨らみすぎて、もう笑うしかありませんでした。「違うよ、生きてるし、魔法使いでもないよ」と返しつつ、内心ではその発想力がちょっと羨ましかったりもしました。それでも質問は終わらないので、しばらくは「なんでだろうね」と曖昧に返すようになりました。でも年齢を重ね、子どもたちに再び質問される場面が増える中で気づいたのは、説明そのものより笑顔で話すほうが相手の不安を和らげるということでした。「この人は大丈夫そう」と思ってもらえるだけで、子どもたちは安心してくれるようです。

高校生の時、ようやくしっくりくる説明に出会いました。「お母さんのお腹から上手に出てこられなかったんだ」。この言葉は想像以上に子どもたちに伝わりやすく、理解してくれた子が、「お母さんのお腹から上手に出てこられなかったんだって!」と、他の子に得意げに説明してくれる姿が微笑ましかったです。

今でも忘れられない一言があります。「いつから足が悪いの?」と聞かれ、「生まれた時からだよ」と答えた時のこと。「じゃあ、お母さんは車いすと一緒にお姉ちゃんを産んだんだ!すごいね!」。その自由すぎる発想には、笑うしかありませんでした。子どもたちは、大人よりずっとまっすぐで、世界をそのまま見ています。

その瞳に映る私は、少し不思議な存在かもしれない。でも、その「なんで?」が、誰かと出会う最初の扉になると今は思っています。そして、子どもたちの素直さがあれば、大人になると無意識につくってしまう、「触れてはいけない」という壁を、自然に越えてくれるのではないかと感じています。

これからも、子どもたちの視線の先に広がる世界を、楽しみながら受け取っていきたいです。