国際リハビリテーション協会(RI)インド国際会議 参加報告
日本障害者リハビリテーション協会
情報センター長/日本RI事務局長
村上 博行
デリー・インドの様子
デリー・インド到着後、空港を出ると大気汚染の影響で空が黒く覆われていました。ホテルまでのタクシー移動には約2時間かかりました。途中、首相官邸付近ではマシンガンを携えた警官が警備にあたっており、緊張感のある雰囲気でした。運転手によれば、デリー市内は治安があまり良くないため、外出は控えた方がよいとのことでした。なお、帰国直後にはデリー市内で爆弾事件が発生し、死者が出たとの報道もありました。
RI年次総会
2025年11月3日から5日まで、デリーのインド国際センターにて「国際リハビリテーション協会(RI)※インド国際会議」が開催されました。前日の11月2日にはRI加盟団体による年次総会が行われました。日本障害者リハビリテーション協会は、高齢・障害・求職者雇用支援機構とともにRIの日本の加盟団体です。著者は日本RI事務局長(National Secretary)として出席いたしました。
RIインド国際会議概要
本会議はRIとインドのチャリタブル・トラストの共催で、テーマは「能力の再定義 ― インクルーシブで自立した生活へのビジョン」でした。インド側の共催者代表であるウマ・トゥリ博士は、チャリタブル・トラストの創設者であり、インドにおける障害児のインクルーシブ教育の先駆者です。同団体はデリーおよびグワリエル地域で活動を展開しています。
参加者は約300名で、大半がインド国内からの参加者でした。女性教員が多く、伝統衣装サリーを着用していました。海外からはドイツ・フランス・中国のRI役員のほか、ネパールからの参加もありました。日本からは私のほか、RI技術・アクセス委員会(ICTA)※※委員長の河村宏氏が出席しました。障害当事者は視覚・聴覚・肢体障害者が計10名程度参加し、手話通訳が提供されました。会場入口では福祉機器関連企業3社(義手、IT関連等)が展示を行っていました。
プログラム概要
初日(11月3日)
開会式ではチャリタブル・トラスト創設者ウマ・チュリ氏、RI会長クリストファー・グーテンブルーナー氏らが挨拶を行いました。インド社会正義・エンパワーメント省大臣も祝辞を述べました。
基調講演では「リハビリ・インクルージョン・人権政策」「障害者の全人的エンパワーメント」「周縁化コミュニティの尊重」が取り上げられました。続く全体会議では幼児期ケアと教育、スポーツによるエンパワーメントが議論されました。午後は「アクセシブルなリハビリ」「提唱と政策」「インクルーシブ教育促進」の3分科会が並行開催されました。
2日目(11月4日)
午前はインクルーシブ教育シンボルデザイン、大学教育における包摂、ユニバーサルデザイン学習(UDL)、国連障害者権利条約(UNCRPD)の影響、人権法による公平性促進、聴覚・視覚重複障害者教育などが報告されました。午後は再び分科会が行われ、日本から河村氏が「インクルーシブ教育促進」を担当しました。続いて「スクリプト革命」「地区障害者連携計画」「女性の法的相続権」「障害とジェンダー」「物理とデジタルのギャップ」など多様なテーマが議論されました。また夕食会も開催されました。
3日目(11月5日)
午前は「インクルーシブ教育の新しいパラダイム」「障害女性と若者のエンパワーメント」などの分科会が行われました。続いて「包括的スポーツの役割」「VR・ARによる未来的包摂」「学校協力による学習曲線向上」「インクルージョンの真剣な取り組み」が報告されました。午後には河村氏が「デジタルインクルージョンとユニバーサルデザイン」を発表しました。女性のエンパワーメント、パネルディスカッションを経て閉会式が行われ、ウマ・チュリ氏が閉会宣言を行い、ジョセフ・クワン氏が謝辞を述べました。
所感
今回の会議は、インド国内の教育・福祉関係者が多数参加し、障害者の権利と包摂に関する幅広い議論が展開されました。特に教育分野でのインクルージョン、スポーツやデジタル技術によるエンパワーメント、ジェンダーと障害に関する課題が強調されました。海外面ではRI関係者による国連権利条約等の紹介等の分野での国際的連携を示すことができました。一方でインド人の特徴かと思われますが、話し出すと止まりません。プログラムの時間の超過は当たり前で座長は時間管理に苦慮されていました。
なお、抄録集を掲載しました。本協会 https://www.dinf.ne.jp/japanese/world/ri/ ご関心のある方はぜひご覧ください。
参考
※国際リハビリテーション協会(RI)とは、1922年に設立された国際組織で、リハビリテーション・サービス提供団体、研究機関、障害者権利擁護団体、障害当事者団体、政府機関などで構成されています。事務局はニューヨークに所在し、国際シンボルマーク(車いすマーク)はRIによってデザインされました。
大会公式サイト:https://internationalconferenceajct2025.org/
※※RIのICTAとは、RIの技術・アクセス委員会(International Commission on Technology and Accessibility)の略称です。



