デイジー(DAISY)とは

DAISYとは、Digital Accessible Information SYstemの略で、日本では「アクセシブルな情報システム」と訳されています。視覚障害者や普通の印刷物を読むことが困難な人々のためのアクシブルな電子書籍の国際標準規格として、50カ国以上の会員団体で構成するデイジーコンソーシアム(本部スイス)により開発と維持が行なわれている情報システムを表しています。日本からは、日本デイジーコンソーシアムが参加していて、日本障害者リハビリテーション協会はその会員としてデイジーの開発と普及に係わる活動をしています。
日本障害者リハビリテーション協会は、平成20年度からボランティア団体等と協力して小中学校の発達障害など読みの困難がある児童生徒にマルチメディアデイジー教科書を製作・提供を行っています。平成26年度からは、文部科学省の音声教材の効率的な製作方法等に関する調査研究事業として、デイジー教科書製作の効率化に取り組み、製作基準を整備するとともに教科書数を拡充しています。また、一般の図書についても児童書を中心にマルチメディアデイジーで製作・提供を行っています。
読みの困難さとは
知的にも視覚や聴覚にも問題はないのに、印刷物の読みに困難を持つ場合があります。「記号」である文字を「音」として認識することが困難だったり、名称を想起する速度が遅いことによって起こると言われています。また、見え方にも困難さがある場合があります。※
※小澤彩果.”学びと読書の楽しさを教えてくれたDAISY” .新ノーマライゼーション.(公財)日本障害者リハビリテーション協会.2025年2月号. P.10-11
「きょう」と「きのう」の区別が難しい

文字を長い間見ているとピントが合わなくなる

DAISY図書で広がる読書体験
小澤彩果さん(ディスレクシア当事者)インタビュー
マルチメディアDAISYの紹介ビデオ:楽しく読むために
(C)2019 大阪教育大学 特別支援教育講座 特任教授 金森裕治
このビデオは、2019年度文部科学省「学習上の支援機器等教材活用評価研究事業」の研究助成を受けて制作したものです。
デイジーで期待される効果=読みの負担低減

マルチメディアデイジーでは、テキストがハイライトして、その部分を音声で喋ってくれるので、どこを読んでいるかがわかります。
見て情報をとることが難しい場合は、音で情報をとれます。印刷物だと読みにくいので、読むこと自体に一生懸命でなかなか中身が入ってこない。
これに対してマルチメディアデイジーでは、読みに関する負担が減って本来自分が持っている能力を、中身のことを考えたり内容を理解したりということに使うことができます。
紙の出版物との比較
| 項目 | 紙の出版物 | マルチメディアデイジー |
|---|---|---|
| レイアウト | 固定 | 可変 |
| フォント | 固定 | 可変 |
| 文字大きさ、縦、横書き | 固定 | 可変 |
| 背景色、文字色 | 固定 | 可変 |
| ルビ | 固定 | 全部にルビ |
| 読み上げ | (代読) | 録音音声 |
| 注視 | 読書用スリット | ハイライト |
マルチメディアデイジーの特徴
- ハイライトされた文字と、音声、画像が同時に表示され、どこを読んでいるかが確認できる
- 学習の進め方を考慮した順番に並べなおしてあるので、図や表が多い教科も連続して再生すれば学習できる
- 読みたいページや見出しに移動ができる
- 原本と同じルビに加えて、総ルビ版を提供
- 個々の読みの困難さに合わせた適応ができる(文字の大きさや色、背景色、再生速度等)
- デイジーの最新規格であるアクセシブルなEPUB3で提供(一部DAISY2.02規格)
デイジー規格とEPUB3
デイジー規格の適応は、90年代に音声(視覚障害)中心でスタートし、2000年代に入って利用対象を印刷物の読み障害へと拡大しました。2001年にマルチメディアデイジーの規格であるDAISY2.02が登場し、当協会で製作したデイジー図書も当時はこの規格を適応していました。
そして、2011年には、デイジーは、電子書籍の規格であるEPUB3と統合し、このEPUB3は、2020年に国際的な標準であるISOの規格となりました(ISO 23736:2020)。
ただし、EPUB3自体は広く電子書籍全般を対象とした規格のため、少し遅れて2021年にEPUB3のアクセシビリティに関してもISOの規格になりました(ISO/23761:2021)。
また、2022年には、このISO規格(ISO/23761:2021)に対応した日本標準規格(JIS X 23761)が制定されました。
これによりEPUB3の電子書籍がどこまでアクセシブルかを明示・規定できるため、利用者は、自分に読めるものを電子書店で選べるようになります。
このアクセシビリティに関するISO規格はデイジーコンソーシアムが中心となって原案を作成し、日本が国際規格提案を行ったものです。
そして、このISO規格に基づいて出版されたアクセシブルなEPUB3の電子書籍は、DAISY2.02で製作したデイジー図書と同様に、読みたいページへの移動や、文字の大きさ・色・フォント・背景の色を変えることができます。
現在当協会で、製作しているデイジー図書もこのアクセシビリティが担保されたEPUB3になっています。