学習障害(ディスレクシア・算数に弱さ)小学4年児童への指導
(1)本児の現状
本児は、学習障害(ディスレクシア・算数に弱さ)の小学4年生である。
通常学級に在籍し週2時間通級指導教室での指導(読み書き・算数)を受けている。1年生でひらがな学習が始まり、ひらがなの定着が悪いことから読み書きに困難さを持つことがわかった。
小学2年生から週に1時間読み書きの指導を受け、ひらがなやカタカナは、定着してきたが3年生から学習単語が増え、教科書を読んで内容を理解することが難しく学習に対して意欲が低下しやすい。意欲の低下を防ぐため学習内容の獲得のための支援が必要である。支援の一つとしてデイジー教科書を使って予習と復習を行っている。
(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴
iPad「い~リーダー」
(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画(本人の希望する支援)
- 個別の指導計画は、通常学級と通級指導教室での学習上の支援ツールとしてマルチ導計画にマルチメディアデイジー教科書の使用方法や家庭学習での使用について通級での学習指導と共に学習することを記載する。
- 個別の教育支計画には、長期目標を視野にデイジー教科書の使用教科等必要な支援内容について記載する。
(4)指導の内容
- マルチメディアデイジー教科書の再生の仕方(パソコン・iPad)と自分に合わせた設定のしかたと使用場面を児童と共に考える。
- マルチメディアデイジー教科書を使って、あらかじめ学習内容をつかむ。
- マルチメディアデイジー教科書を使って漢字の読みを確認し、紙の教科書にルビをふる。
- テスト前に学習内容を復習する。
(5)支援機器の使用効果あるいは、指導の効果と支援機器の評価
- マルチメディアデイジー教科書を使うと学習内容をほぼ理解することができ、読めないことで学習内容が理解できないということが少なくなった。また、読める単語や熟語が増えた。
- 学級での学習時の参加態度が積極的になった。(挙手・音読)
- 単元末テスト(読み上げ支援)で高い点数(100~80点)をとれる時もあり、学習への達成感を感じることができ自信がついて学習意欲の向上に繋がった。
- 学習単語や熟語の習得がしやすくなった。
- マルチメディアデイジー教科書を使用することで、読みへの抵抗感が少なくなった。
- 絵本を読もうとする姿が見られるようになった。
(6)まとめと今後の課題
読みに困難さを持つ児童が、通常の教科書を読むことは難しく、文字による情報を読み取ることは困難である。読むことができればその中にある内容を理解することができる児童である。しかし、文字を読むことに難しさを感じるため文字や文章から遠ざかる。マルチメディアデイジー教科書を使用することで、難しさを感じている児童自身に文字へのアクセスの方法を知らせることになる。それまで読めない教科書、頑張って読んでも理解できにくいため学習に抵抗感を持ち、授業での態度が悪かったが、マルチメディアデイジー教科書やデイジー化されたテストを使用し支援をすることで学習への抵抗感を減らし、達成感を持つことができた。
通級指導教室担当と学級担任の日常的な連携によって通級指導教室での指導と在籍学級でのデイジー教科書やデイジー化されたテストを有効に活用することができた。
今後は、本児への合理的配慮を明記している個別の指導計画や教育支援計画で支援方法を引き継ぐことが求められる。中学校での支援にも繋がるように連携していくことが不可欠である。また、本児自身が必要なときに活用できるように本児の活用技能や学習方法の選択ができるように支援していくことも必要である。