国語科単元テストでの活用を通して (小学5)

国語科単元テストでの活用を通して (小学5)

長野県上田市立神科小学校 池田明朗 教諭

(1)本人の現況

通常学級在籍の児童。視覚優位で聴覚からの情報入力がとても苦手である。教師の言語指示はあまり伝わらない。
漢字の読み書きにも困難があり、算数の文章題も計算より漢字の読みでつまずく。しかし、統計処理の能力は高く、正確にグラフを書いたり読み取ったりすることが得意である。また絵画も得意で独特の表現で描く絵はいつも絵画展で入選する。
漢字の読みでつまずくことから教科書が読めず、授業中は机に突っ伏して教科書を開くこともせず、授業や学習に意欲を持てずにいた。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

iPad「い~リーダー」
 PLEXTALK Producer (DAISY製作ソフト)

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画(本人の希望する支援)

<実 態>
  1. 算数の問題がわからずに困っていた時、「わからない時は、先生わかりませんとか、先生教えてくださいって言えばいいんだよ。」と話すと、その後、わからない時には「先生わかりません」と言って呼ぶようになった。
  2. 計算をする時、1マスにひとつの数字を書くようにして計算したところ、位取りを間違えることなく計算することができた。
  3. 算数の文章題で、模型やブロックを使って説明すると「そういうことか」と理解した。
  4. 朝の挨拶や礼儀正しいしぐさをほめたところ、挨拶やしぐさがますます丁寧になった。
  5. 算数の問題を解いた時、「解き方を覚えたね、すごいね」とほめたところ、ガッツポーズをして「ここまでやる」と、自分から区切りの良いところまで問題に取り組んだ。
  6. タブレットとデイジー教科書を使って、音読することができた。また、面積を求める問題も電卓を使う ことで計算でつまずくことなくスムーズに解くことができた。
<とらえ>
  • 困った時に言葉で表現する方法を教えると、礼儀正しく適切に使うことができる。(1)
  • ノートの使い方をパターン化し、マス目ノートを使って字や数字を見やすく整理することで、間違いを減らすことができる。(2)
  • 具体物で視覚的なヒントを与えることで自分の力で問題に答えることができる。(3)
  • 賞賛したり、自信を持たせることで、自分から積極的に活動する姿勢が見られる。(4、5)
  • 苦手な活動は、タブレットや電卓など代替機器を使うことで活動することができる。(6)
<期待できる姿>
  • 自信を持って自分の考えを言葉で表現したり、自分の力で学習に取り組もうとする姿が見られるようになる。
<手だて>
  • 文字の学習は、大きいマス目のノートを使ったり、タブレットやパソコンソフトなどを使い、視 覚を優先的に用いながら学習する。
  • 国語などの教科書はタブレットとデイジー教科書を使って本文の内容を理解し、読解していく。
  • 苦手な計算は電卓等を使い、計算に時間をかけないようにして単元の内容を理解をしていく。
  • 賞賛する機会や成功体験を多く積み重ね、自信を持つようにする。
<生活単元学習・自立活動のねらい>
  • 静かな学習環境の中で、自分のペースで学習 ができるようになる。
<教科・個別学習の時間のねらい>
  • 6年生の漢字100字を書けるようになる。
  • 算数で、6年生の学習ができるようになる。
<保護者の願い>
  • 読み書きの力をのばしてほしい。
  • 計算の力をのばしてほしい。

(4)指導の内容

タブレット端末で総ルビのマルチメディアデイジー教科書を使用し、ハイライトとともに利用している。通常学級での一斉授業で使用し、教科書を教師が範読したり、友だちが読んだりしているところを、手動でハイライト表示を動かして追いかけていく。

児童が座席順に一文ずつ交代で読んでいく時には、読んでいる所をハイライト表示で追いかけながら、自分の番になると音読する。

学習プリントや単元テストを行う時は、DAISY製作ソフトウェア「PLEXTALK Producer(プレクストーク プロデューサー)」で自作した学習プリント又は単元テストをDAISYデータ化し、利用する。例えば国語の単元テストでは、テストの上段部分は、マルチメディアデイジー教科書をテスト出題範囲部分から頭出しできるように設定したものを用意し、テスト下段の問題文は教師が自作しDAISYデータ化してもう1台のタブレット端末で再生できるように用意し、合計2台のタブレット端末を使用する。

(5)効果

タブレット端末とマルチメディアデイジー教科書を使用することで、学習への意欲が出てきて授業中も発言をするようになった。単元テストでは、今まで0点又は10点だったものが、75点をとることができた。「僕、漢字さえ読めればいいんです」という本児からの訴えどおりの結果となった。

(6)今後の課題

読むことに困難を持つ通常学級在籍の児童が、授業や学習への意欲が持てるようになり、授業態度も変わった。「PLEXTALK Producer」を教育現場で活用するための課題として、あまりICTに精通していない教師にも利用できるような操作の簡易化、そして、単元別の学習プリントや単元テストをテキストファイル化した、ベースになるデジタルコンテンツの整備があげられる。