宿題プリントでの活用を通して (小学3)
長野県上田市立神科小学校 池田明朗 教諭
(1)本人の現況
特別支援学級在籍の児童。漢字以外は逐次読みできるが、言葉のまとまりとして読むことは困難である。流暢に会話し、言語による指示もしっかり理解できる。
(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴
iPad 「い~リーダー」
PLEXTALK Producer (製作ソフト)
(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画(本人の希望する支援)
<実 態>
- 日直当番のときは、日めくりをしたり、ホワイトボードに給食のメニューを書き写したりしていた。
- ひまわりの教室にすすんで勉強に来て、予定をひとつひとつ聞いて確かめていた。
- お手本があると、文字をていねいに書くことができる。
- 算数の計算問題はひとつひとつ○をすると、一生懸命やろうとしていた。
- タブレットで国語の教材を何回も読むと、内容を理解して質問に答えることができた。
- 調理活動を喜んでやり、用意やかたづけをすすんでやっている。。
- 朝は、クラスの仲間と校庭に出て、元気に遊んでいる。
<とらえ>
- 自分の仕事を一生懸命やる。(1、6)
- 見通しをもち、安心できると活動することができる。(2、3、4)
- 聴覚優位で、文章を聞いて簡単な質問に答えることはできる。(5)
- 調理や手芸などの活動を通して、学習に積極的に取り組む姿勢が見られる。(7)
- 人にすすんでかかわろうとしている。(7)
<期待できる姿>
- 一人でできる学習がふえ、自信がもてるようになる。
<手だて>
- 気が散らないように集中できる環境を整えて、簡単な問題を一人で進められるようにしていく。
- 自分からすすんでやろうとしている時は必ず褒め、成果が見てわかるようにしていく。
- 手や指を使ったいろんな活動を通して目と手の協調性を高めながら、学習をすすめていく。
- タブレットとデイジー教科書を使って、音声再生をしながら文章を読むようにする。
- ビジョントレーニングを取り入れ、目で物を見ていく力をつけていく。
- 調理活動や販売学習等を通して、人とのかかわりから、社会性が持てるようにしていく。
- スモールステップで成功体験を積み重ね、自信が持てるようにする。
<生活単元学習(作業学習)のねらい>
- 製作活動を通して成功体験を積み重ね、自分からすすんで活動するようになる。
- 調理活動や販売学習を通して食べ物を作る喜びや人とかかわる喜びを知り、お金の計算や、用件を伝えることができるようになる。
<教科・個別学習の時間のねらい>
- 指をしっかり動かして計算問題に取り組める。
- 語彙数を増やし、日常生活に必要な指示や単語がわかるようになる。
- 右と左がわかり、安全に気をつけて生活できる。
<保護者の願い>
- ひらがな・カタカナが読めるようになってほしい。
- 計算力をつけてほしい。
- まわりの人を思いやる気持ちを大切にしてほしい。
(中学校、高校もタブレット端末とデイジー教科書を使いながら学習をさせてもらいたい)
(4)指導の内容
DAISY製作ソフトウェア「PLEXTALK Producer(プレクストーク プロデューサー)」で自作した宿題プリントをハイライトと読み上げ機能で利用する。児童は宿題データを入れたタブレット端末と宿題プリントを持ち帰り、自分でハイライト表示や音声再生をしながら宿題を行う。

(5)効果
タブレット端末で宿題を持ち帰るようになり、自分の力で宿題プリントができるようになった。母親や教師が側で読んであげなくてもできるようになり、学校から家に帰るとすぐに宿題を始め、宿題を終えた状態で夜は家族と過ごすという、良い生活リズムまで作ることができるようになった。
(6)今後の課題
読むことに困難を持つ児童が、母親が側にいなくても自分の力で宿題プリントを行うことができるようになった。課題として、個人で購入していただいた家庭のみで実施しているため、今後、タブレット端末の購入補助など公的な援助があることで利用児童が増えるものと思われる。