鼎談 権利条約がもたらしたもの、もたらすもの

田中 伸明 (福)日本視覚障害者団体連合/弁護士/JDF政策委員長
北村 弥生 長野保健医療大学特任教授
藤井 克徳 (特非)日本障害者協議会代表

藤井/これから鼎談を始めます。3人で論じあいますが、私は基調講演でお話ししましたので、田中さん、北村さんに少し多めに話していただいて、フロアからの質問がもしあればこれに加えようと思います。

 基調講演で話しました条約の神髄としては、「固有の尊厳」と並んで「他の者との平等」という、キーセンテンスが挙げられます。

 このことは、言うは易し、行うは難しで簡単ではないと思います。

 「他の者との平等を基礎として」という大事なキーセンテンスを具体化していくための方向性などについて、田中さんからはお話しをいただこうと思っています。

 北村さんからは、その前提にあります、障害を持たない一般市民と障害を持つ市民とのデータの比較について、主にお話しいただきます。そのようなデータをとる調査方式は今までなかったわけですが、去年から今年にかけて、いわゆる「基幹統計」にこれが盛り込まれました。北村さんからは、この基幹統計の意味、特徴、これからの改善課題などを述べていただきながら「他の者との平等を基礎として」というテーマに迫っていきたいと思います。

 田中さんは、去年のジュネーブでの対日審査にも参加されました。今は、JDFの政策委員会という、特に権利条約を扱う委員会の責任者でもあり、ご自身の団体だけではなく、JDFにも貢献してもらっています。弁護士でもありますから、そんなことも含めてこの問題に肉薄してもらいます。

 田中さん、改めて、「他の者との平等を基礎として」というときの方向性や方法論などについて、いかがでしょうか。

田中/本日は皆さま、よろしくお願いします。

 藤井さんからのご質問に回答する前に少しだけ自己紹介します。

 私も視覚障害の当事者です。私の場合は、先天というわけではなく、いわゆる中途障害です。

 小学校からずっと一般校で過ごしまして、大学も一般学生として入学したんですが、大学在学中に中心視力が落ちてきました。

 卒業はなんとかできたんですけど、卒業後に中心視力が全くなくなって、視野が真っ白く濁って、全く画像が映らない状態になりました。

 点字を覚えたのは25歳のときです。

 まさにリハビリテーションを受けて、点字の指導をいただき、パソコンなども教えていただいて、そこから司法試験の受験ということになりました。

 点字受験をずっとして、なかなか合格できなかったのですが、長い時間がかかりましたが、ちょうど40歳のときに合格できて、今に至るというところです。

 弁護士としては、今年15年目を迎えています。

 藤井さんからお題をいただきました、「他の者との平等を基礎として」ということを、どう国内で生かしていくかについて、私なりの見解を述べさせていただきます。

 まず、藤井さんの講演にもありましたが、昨年9月9日に日本に対する総括所見が出されました。

 これを真摯に受け止める必要がありますが、総括所見を見ると、人権モデルという言葉が7回使われています。

 一方で社会モデルという言葉は使われておりません。

 これは障害者権利委員会がこれまでの社会モデルという概念から一歩進めた形で、人権モデルという言葉を使っていると、受け止める必要があると思います。

 社会モデルと人権モデルの考え方については、いくつか議論もありますが、特に、私としては社会モデルと人権モデル、それぞれが役割が違うという考え方が非常にわかりやすいのであろうと思います。

 社会モデルは、障害の発生原因をどこに求めるのかというときに、社会制度の不備、設備の不備に求めていきます。

 一方で人権モデルは、その改善に向けての理論的な基盤を与えます。藤井さんの言葉を借りると、解決に向けての方向性をしっかりと見定めるための概念である。このように私も感じています。

 これは障害者権利委員会からのメッセージだと思いますが、これを私たちはどのように受け止めるのか。

 国内の法体系の中で、これをどう実現していくかを考えなければなりません。

 私は法律家なので、法律的なお話をすると、最初のスタートは日本国憲法だろうと思います。

 障害者権利条約では固有の尊厳という言葉が使われていましたが、日本国憲法第13条では、個人の尊厳が規定されています。

 やはり、国内の最高法規である日本国憲法で個人の尊厳がうたわれ、障害者も「他の者との平等を基礎として」、一人の個人として、尊厳が守られなければならない。

 そして、基本的人権の享有主体として存在することが確認される必要があるだろうと思います。

 つまり、障害者権利委員会が出している人権モデルというメッセージを私たちが受け止めるところのスタートは、憲法13条が定める「個人の尊厳」であることをしっかりと受け止めて、障害者も1人の個人として尊重されなければならないというのがスタートになると思います。

 そういうことになると、憲法上ではそういう位置づけだと受け止めた上で、具体的な法整備としてどうしていくのかが次に問題になってきます。

 2つのことを考える必要があると思います。

 1つは、すでにある法律の解釈を、人権モデルのメッセージに合わせる形で改善していくことができないだろうかということです。

 もう1つは、もし法制度がないのであれば、やはり新しく法律を作らなければならないだろうということです。

 1つ目の方法は、解釈の改善を行うことで、総括所見の実現を図ることができないかということですが、これはいろんな視点があると思いますが、あくまでも1つの例として、私見を述べます。

 合理的配慮という言葉がよく聞かれるようになっていると思います。

 合理的配慮の提供は、事業者の努力義務とされていますが、来年の4月からは法的な義務に引き上げられるという改正の施行が待っています。

 合理的配慮の提供は、過重な負担が伴う場合には行わなくてもよいという形になっています。

 そして、過重な負担の判断要素を見てみると、例えば事業の影響の程度とか、実現可能性とか、負担の程度、あるいは財政状況、財務状況、そういった事業者側の要素しか入っていないのです。

 人権モデルという考え方を前提とすると、やはりここに、障害者に合理的配慮の提供が行われることによって、障害者に実質的に保障される人権の性質も加えていいのではないかというのが、私見です。

 特に憲法では、情報の受領権とか、非常に重要な人権が定められていますが、こうした重要な権利については、過重な負担を考えるにあたって、事業者側の要素だけではなく、提供されることによって守られる障害者の人権という性質も要素に加えていく必要があるのではないかと、そういったことを考えたりしています。

 それから2つめの方向についてですが、法律がないところには新たに規定を設ける必要があると思います。

 やはり、障害者基本法がベースになると私は思っています。藤井さんの講演にもありましたが、批准を少し待ってくれというときに、国内法整備がまだ不十分だ、という状況があったわけですが、そのときに、障害者基本法の改正が行われ、批准の前提を作ったわけです。

 今、総括所見を受けて、これを実質的に国内で実行していくためには、そのための改正ということがポイントになってくるのではないかと思います。

 特に障害者基本法をみると、障害女性に関する規定はないですし、障害児を中心的に取り扱う規定もありません。

 このあたりを、障害者関係者でコンセンサスをとって働きかけていくことが必要だろうと思います。

 そういうことによって、「他の者との平等を基礎として」を具体化することができるのではと考えています。

 私からは以上です。

藤井/とてもわかりやすくお話しいただきました。1つは現行制度の解釈や運用の拡大というところで、解決できるところがあるにもかかわらず、そうなっていない点があるだろうということです。

 もう1つは、法律を、人権モデルに合わせる形で改善していくという視点なども言われました。

 北村さんからコメントなどあるでしょうか。

北村/田中先生から「障害者基本法に、障害女性に関する規定も、障害児を中心的に取り扱う規定もない」というご指摘がありましたが、障害女性と障害児の規定を作る場合に、根拠となるデータを示して、支援の必要性を言えるといいのだろうな、と思いました。ただ、今あるデータはそれほど強靭ではありません。極端に言うと、データは、いかようにも作れてしまいます。重々気をつけて取り組まないといけないなと思いながら伺いました。

藤井/北村さんには、またあとで、自己紹介も含めてお話しいただきます。

 田中さんにお聞きしますが、例として挙げていただいた障害者基本法については、大事な理念法ですけれども、子どもや女性に関する課題に加えて、2つのポイントがあると感じるんです。

 1つは、2011年の改正の折に、障害者制度改革推進会議が法改正に向けてまとめた分厚い文書(第一次意見、第二次意見等)を出しています。この中で実現したのはほんの一部です。政権交代もあって、政治が多少混乱気味だったこともあり、ずいぶん抜けてしまいました。もう一度、あのときの政策文書をみんなで考えたらいいのではないかと思います。

 もう1つは、今私たちは、総括所見を受けたということです。

 制度改革推進会議でまとめた意見の根底には、権利条約本体が横たわっていますが、当時、積み上げた理論的な根拠を、もう一度使えないものでしょうか。

 例えば、特に遅れている精神障害分野を引き上げよう――つまり、精神障害という項目を新設して、各論として引き上げようということも、含まれていたんですね。

 JDFの政策委員会として、子どもや女性の課題に加えて、過去の政策文書の総点検や、総括所見を総ざらいして、どこまで基本法改正に盛り込めるかわかりませんが、そういう作業手続をすることについて、どうでしょうか。

田中/大きなご示唆をいただきました。

 藤井さんご指摘の1点目2点目も私としても賛成です。

 障害者基本法の改正といっても簡単なことではなくて、むしろ非常に壁の高い困難な道と思っています。

 進めていこうとするためには多くの方々のお知恵をかりなきゃいけないし、力を結集しないといけません。

 過去に検討された文書は私たちにとって大きな示唆をいただけるものだと思います。

 ぜひやってみたいと思います。

藤井/田中さんは弁護士でもありますので、もう少しお伺いします。

 「他の者との平等」に関しては、例えば就労について見ると、福祉的就労を含めて4割弱というデータがあります。障害のない人は、多くの人が就労しているのに、障害者は4割弱しか働いていない。

 所得を見ると、障害者の80%が相対的貧困線以下に閉じ込められています。

 さらに障害者の多くが家族依存を前提にしか地域で暮らしていけない。

 民法の扶養義務をみると、877条に、「直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務がある」と、つまり家族観には、生涯扶養義務がつきまとうのです。

 対日審査で通訳をお願いした方が、オランダ在住の日本人だったのですが、オランダでは21歳になると家族扶養から社会扶養に切り替わるとおっしゃっていました。

 家族依存によって、大きな問題がのしかかってくるのですが、民法の改正って難しいんでしょうか。

田中/民法の改正は本当に大変なことになります。

 ただ、条約12条の法的能力のところでは、権利条約や総括所見を受けてということになりますが、なんとか成年後見制度を改正しようということで、検討作業が今、進んでいますし、不可能ではないと思います。

藤井/今日は問題提起に留めて、進めようと思います。

 次に、北村さんから、改めて自己紹介を含めて、基幹統計を中心にお話しいただこうと思います。

北村/スライドを使いながら、15分弱で、統計についてお話しします。

<スライド1>

 2021年3月に長くいた国立障害者リハビリテーションセンター研究所を定年退職し、長野保健医療大学で、引き続き、障害統計の研究をさせていただいています。国リハの総長等を研究代表者にした厚労科研の研究班が、障害認定と障害統計について継続して行っている研究の一環です。

 他に、障害者の災害準備の研究はNPO支援技術開発機構で、実践活動は居住地の池袋の町会で、させていただいています。

 在宅ワークでできてしまうので、長野に行くことは少なく、おおむね都内におります。

<スライド2> 第31条 統計及び資料の収集

 今日のテーマである「権利条約がもたらしたもの、と、もたらすもの」について、障害統計では、どうなのかをご紹介したいと思います。

 最初に、関連する条約の条項 第31条を、確認します。

 「統計及び資料の収集」がタイトルで、重要なところを読み上げます。

  1. 1 締約国は、この条約を実効的なものとするための政策を立案し、及び実施することを可能とするための適当な情報(統計資料及び研究資料を含む。)を収集することを約束する。
    1. a) 障害者の秘密の保持及びプライバシーの尊重を確保する
    2. b) 倫理上の原則を遵守
  2. 2.締約国の義務の履行の評価に役立てるために、並びに障害者がその権利を行使する際に直面する障壁を特定し、及び当該障壁に対処するために利用される。
  3. 3.締約国は、障害者及び他の者にとって利用しやすいことを確保する。

 「利用しやすい」というのは、英文では「アクセシビリティ」となっています。

 これは統計の二次利用ではなくて、例えば、視覚障害者用の読み上げソフトで読み上げる形式での文書や表だったり、手話での解説や、「やさしい日本語」やルビ付きでの結果の公表という意味になります。

 ただ、実際に、どのようにしたらいいかは、変換してみないとわからないので、私たちの研究班でも、具体的な方法の提案は、過去の調査についてはできていなくて、令和4年「生活のしづらさなどに関する調査」(厚労省)の結果概要やデータ公表があってから、対応策を考えてみようと思っています。日常生活基礎調査の講評結果について検討するというのも価値があると思います。

<スライド3> もたらしたもの 1.社会生活基本調査(R3、総務省)にEUによる障害者統計の指標が入った

 もたらしたものとして、3つご紹介したと思います。

 第一に、総務省の令和3年社会生活基本調査に、EUによる指標が入りました。

 これは、もともとは、障害者団体と雇用議連が国会に意見書を出したことに由来します。意見書への対応として、令和元年に内閣府が、国際的に有名な3つの指標(EU統計局、国連ワシントン・グループのWG-SS(+AD)、WHO-DAS)を使った国内調査をして、それぞれの特徴を調べました。その結果、WHO-DASの指標は違うということが示されました。ただ、この結果でも、2つの指標で障害者手帳所持者の半分未満しか「障害あり」と判別していないことに注意が必要です。

<スライド4> 社会生活基礎調査の調査票:障害に関するEUの指標部分

 調査票の該当部分を示します。

 15歳以上にだけ聞いています。

 「慢性的な病気や長期的な健康問題」が、「ある」か「ない」かを聞きます。注として、「慢性的・長期的とは6か月以上続いているまたは続くと予想されることをいいます」と記載されています。

 これで、いわゆる「障害」が判定されるとは思いにくいですが、なぜ、これが採用されたかというと。

<スライド5> 社会生活基礎調査の調査票:学習などに関する生活時間を聞く設問部分

 次のスライドに示すように、この調査の大きな部分は、生活時間を聞くことが理由だったからです。いろいろな種類の生活時間を聞いています。最初は、「学習・自己啓発・訓練について」で、「この1年間に、英語を何日(学習)したか」を答えていただきます。さらに、「その目的」「方法」を選択肢から選びます。

 「英語」のほかの選択肢として、「英語以外の外国語」「パソコンなどの情報処理」「介護関係」「人文・社会・自然科学」など9項目が並んでいて、それぞれについて、実施日数、目的、方法を答えます。

 スライドには、「学習」を示しましたが、スポーツ、趣味、ボランティア、旅行、スマホの利用など、多様な項目があります。

 「こういう生活時間に関する調査では、EUの指標しか使われたことがない」というのが、統計委員会の議事録にあった理由です。

 EUの指標が採用されることは、私も気が付いた時には、決まっていました。

<スライド6> もたらしたもの 2. 国民生活基礎調査(R4、厚労省)に国際障害者統計の指標(WG-SS 6項目)が入った

 2番目に、厚生労働省が実施している国民生活基礎調査の令和4年の調査に、国連ワシントン・グループのショートセット6項目が入りました。

 これも、先ほどの社会生活基本調査と経過は同じで、障害者団体と議連による意見書が発端です。

 こちらの場合は、統計委員会の審議の際に、説明をさせていただいたので、少し、背景をご紹介します。

 国民生活基礎調査にも、すでに似たような設問があるので、「なぜ追加するのか」が審議のポイントでした。ここでの理由は、「国際比較できるデータを持つことを、権利条約が求めている」としました。

 こちらでは、記入ガイドの作成をしたり、集計枠の設計をして性別の年齢階層別にデータを公表すべきことを助言しました。また、集計の際の疑問について、ワシントン・グループ事務局との取り次ぎをしました。

<スライド7> 国民生活基礎調査の調査票: ワシントン・グループの指標部分

 これが、使用されたワシントン・グループのショートセットです。

 「次の(ア)から(カ)の質問について、日常生活で苦労していることについて、あてはまる番号1つに○をつけてください」という質問です。

 質問群としては、(ア)眼鏡を使用しても見えにくい(イ)補聴器を使用しても聴き取りにくい、(ウ)歩いたり階段を上るのが難しい、(エ)思い出したり集中したりするのが難しい、(オ)身体を洗ったり衣服を着るような身の回りのことをするのが難しい、(カ)通常の言語をつかってのコミュニケーションが難しい、というような苦労がありますかという6項目があります。

 これらの質問に対しては、4段階の選択肢(「苦労はありません」「多少苦労します」「とても苦労します」「全くできません」)から1つを選ぶことを依頼します。

 選択肢のうち、「全くできない」「とても苦労する」を選択した場合に、「障害」と分別しています。

 EUの指標に比べれば、障害種別に対応した結果が得られる、というのも、採用した理由としてあげました。

 ところが、この指標では、知的障害と精神障害はうまく判定できないことは、良く知られています。

 知的障害に関しては、(エ)と(カ)で判断できるかと思っていたのですが、実際、うまくいきませんでした。

<スライド8> 不安anxiety と 抑うつdepression

 精神障害については、不安と抑うつの指標として、程度と頻度の4項目を、ワシントン・グループでは当初から作っていて、6項目に加えて使うことが推奨されています。

 また、上肢機能も、「衣服を脱ぐこと、身体を洗うこと」で判定できるかと思っていたら、これもうまくいかなくて、「2リットルの瓶を持挙げる」と「瓶の蓋等を開ける」という上肢機能についての2項目も加えて、合計12項目を WG-SS enhanced 拡張版として、ここ数年は使う場合が増えています。

 日本でも12項目を使っていただきたかった。少なくとも、選択の際の議論に挙げていただきたかった、というのが個人的な考えです。

 令和4年の「生活のしづらさなどに関する調査」に12項目を入れました。

<スライド9> 障害種別とWG-SSおよびWG-ADの比率

 ショートセットにADを加えると、どのくらい手帳所持者を「障害あり」と判定できるかを、「生活のしづらさなどに関する調査」の事前調査として、令和2年に、長野県飯山市の全障害者手帳所持者1,221名を対象にして行った結果を表に示しました。

 この時、上肢を加える意味を、私自身理解していなかったのですが、この調査の結果から、上肢障害の人が、WG-SSではほとんど「障害あり」と判定されないことがわかったので、「生活のしづらさ調査」では上肢2項目も追加しました。身体を洗ったり衣服を着るのに、上肢があれば上肢を使うけれど、なければ他の方法で行ってしまうことは、考えてみれば当たり前のことでした。

 飯山市の調査では回収率は48.2%。コロナ禍でしたので郵送法にしました。

 3障害全体では、WG-SSでは44.8%が「障害あり」と判定されましたが、ADを加えると66.6%になりました。

<スライド10> もたらしたもの:3.令和4年生活のしづらさなどに関する調査(厚労省)にWG-SS Enhanced 12項目が入った

 そういうわけで、三番目に、厚生労働省が実施している「令和4年生活のしづらさなどに関する調査」に、ワシントン・グループのショートセット エンハンスト12項目が入りました。

 先ほどご紹介した令和2年の事前調査を基に、厚労省の研究班で、「生活のしづらさなどに関する調査」の調査票と集計方法への提言を出し、省内で調整した後で、社会保障審議会障害者部会での関係団体からの意見を反映して、調査票は確定しました。研究班の報告書は厚労科研成果データベースから参照いただけます。

 結果は、これまでの経験では、来年6月くらいに出るといいな、と思うのですが、例年よりも、性別や年齢階層別の集計を追加していますので、遅れるかもしれません。

<スライド11> 格差是正の実現のために、障害あり群となし群の間で比較が提案されている項目(WG、2023.4)+年齢補正

 権利条約31条の条文にあるように、格差是正を目的にしたデータなので、何の格差を扱うかということについて、ワシントン・グループ事務局は、2019年から共通様式での公表を各国に働きかけています。

 「必ず示す項目は修学、雇用、世帯収入とし、他は各国に任せる」というのが、2023年10月末に行われたワシントン・グループ年次会合での事務局からの提案でした。これまでに例示された他の項目には、保険、情報コミュニケーション技術があります。

 この5項目のうち4項目は、国民生活基礎調査の設問にあるので、二次解析すれば結果は得られる見込みです。

 情報コミュニケーション技術については、社会生活基本調査の二次解析で、使用時間として比較できる見込みです。総務省の他の調査もありますが、もし、他の調査に追加するのであれば、今回、追加した2つの指標の課題を解決する方法を取るのがよいと考えます。

<スライド12> グラフ、6項目と総合の障害発生率、男女別

 この後の結果は、生データでお示ししますが、国際比較のためには、人口構成に合わせて年齢補正しなければならないことも指摘され、補正方法が、今年の4月に、ワシントン・グループ事務局から提示されました。年齢補正すると、アメリカの障害発生率は、18歳以上で7.2%になりました。日本でも生データでは、12%でしたが、年齢補正するともっと低くなると推測されます。

 このグラフでは、6項目のひとつでも、「全くできない」または「かなり苦労する」を選んだ人を「総合」での障害発生率としました。多い順に、歩行7%、記憶・集中4.1%、視覚4%、身体を洗う・衣服を脱ぐ3.6%、聴覚3.5%、コミュニケーション3.4%という結果でした。

<スライド13> 年齢別障害発生率

 総合の障害発生率を年齢別にみると、15歳以上49歳までは6%程度。50歳代から増え始めて、80歳以上では39%という結果でした。公表された集計表は5歳間隔で最大を85歳以上にしたので、10歳間隔にすると80歳以上になってしまいました。元の集計表の最大を90歳以上あるいは100歳以上にすることで、高齢化の影響をもう少し詳しく示すことができると考えられます。ここで、懸念されるのは、高齢による機能低下が多く含まれることです。障害種別ごとに、年齢変化を見ればわかると思います。

<スライド14> 視覚障害と最終学歴

 条約は「データ収集の目標」を格差是正としていますが、現在の格差を正しく示しているかを見てみます。

 教育については、最終学歴を聞いていますので、30歳代について、「視覚障害あり群」と「なし群」で比べると、それぞれ、小中学校卒は7.1%、4.4%、短大高専は7.1%、9.4%、大卒は42.6%、44.8%、大学院6.1%、6.7%、在学中1%、0.8%、在学したことなし0.5%、0.1%でした。小中学校卒と在学したことなしは、障害あり群で多かったですが、それ以外は、それほど大きな差があったとも言えない値でした。大学卒業率に差がなかったことは実感とは違っていました。

<スライド15> 格差をうまく示せたか? 雇用率

 雇用に関しては、25歳から64歳で比較した場合に、障害あり群が70%、障害なし群が82%で、格差が実感よりも少ない印象があります。

 仕事ありを、どう聞いているかを見ると、福祉就労でも「仕事あり」を選択できるようになっています。「仕事あり」の内訳は、「主に仕事をしている」「主に家事で仕事あり」「主に通学で仕事あり」「その他」になっていますので、「主に仕事をしている」だけを抜き出した方がいいかと思いますが、それでも、福祉就労も含まれていると思われます。

<スライド16> 結果への感想:これからにつなげる課題

 これらの結果から、これからにつなげる課題を出してみました。

 まず、国民生活基礎調査による障害発生率は12.1%でWHOが指摘する15%に近い値は出ました。回答は6歳以上で得ているはずですが、公表された表は15歳以上なので、6歳以上で計算すると、わずかに減ると推測はされます。

 ただし、「障害あり群」が「障害者手帳所持者を、どの程度、捕捉するか」は、「生活のしづらさなどに関する調査」及び国民生活基礎調査の他の設問とのクロス集計で検討が必要と考えます。老化による機能低下が、結構、入っているのではないかと推測するからです。

他に、国民生活基礎調査の質問5(日常生活への影響)を「障害の有無」で比較、
質問12(こころの状態)と合わせた障害発生率、
質問12を「障害の有無」で比較
を、示す必要があると考えます。

 そうしないで、今回の数値を、そのまま受け止めたり、今後の格差是正のために使うには注意が必要と考えます。

 例えば、「メガネをかけても見えないこと」について、視覚障害者の人は「困っている」を選択しない場合があることを先行研究は示しています。点字や音声で読書はできるし、生活もできているから、「困ってない」かもしれない。「見えた状態」と比較しようがないから「困っている」と言わないかもしれない。

 「困っている」と答えないと障害あり群に入らない、そういう理解をしていただくことも必要になってくると思います。

 雇用や教育の問題では、必ずしも障害格差を示せていないので、どうしたら示せるのか、これから考えていかなければいけない課題です。

<スライド17> 終わり

 まだ、始まったばかりの国際比較可能な障害統計です。

 国際的には2001年から国際障害者統計の指標開発が始まっていますが、まだ知的障害に関する設問は完成していませんし、環境に関する設問も完成していません。

 これから考えていかないといけません。

 当事者に、どう答えると、どう使われるか理解いただきたい部分もあります。

 障害者手帳の所持状態と比較できる日本から発信していくことで国際的な貢献が期待できます。

 国際会議に出ていても、サービス提供の基準である手帳と指標を比べてみようという発想や、サービス提供と国際比較のための障害の指標を関連付けようという動きは聞かれないからです。

 諸外国では、国際比較は国際比較、サービスはサービス、国内でも、国勢調査は総務省、サービスするのは厚労省、それぞれ違う基準を持っています。労働統計も教育統計も違う指標で作っています。国際的には、それが当たり前ですが、日本人はまじめなので、日本で各省庁の統計を関連づけて示すと、国際的な貢献につながると思います。

 情報提供として以上で終わらせていただきます。

藤井/参加者の皆さんのために、そもそも基幹統計や、統計法とは何かということを簡単にお伺いさせてください。

 基幹統計は50いくつかあると思いますが、今回初めて障害に関する設問の入った、国民生活基礎調査、社会生活基本調査の2つのほかにも、取り入れられる可能性があるのでしょうか。

 二次利用が重要だとのことですが、これはどうすればいいのでしょうか。

北村/これについてもスライドを用意しました。

<スライド1> 基幹統計・統計法とは?

 総務省のHPとwikipediaに掲載されていた内容を、お伝えします。

 統計法は1947年に制定され、2007年に全面改訂されています。正式名称は、「公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより、公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする法律」です。

 公的統計は、調査統計、業務統計、加工統計に分けられるそうです。

 調査をするか、業務上のデータを使うか、それらを加工するかの違いです。

 基幹統計は、国の行政機関が作成する統計のうち総務大臣が指定する特に重要な統計で、47調査統計と6加工統計があります。

 基幹統計以外を一般統計というそうです。

 統計調査には、意見・意識など、事実に該当しない項目を調査する世論調査などは含まれません。

 生活のしづらさなどに関する調査は、対象者が回答者の自己判断で決まりますので、世論調査の位置づけです。「調査対象として、あなたはこの項目に当てはまるか」というのを本人が選ぶからです。本人が「私は障害者じゃない」といえば障害者のデータにはなりません。二次利用してみると、自由記述に「私は対象者ではないと思うけど調査員が書けというから」という回答がときどきあるんです。ここはデータの脆弱性としても課題があると、考えています。

 基幹統計の二次的な利用方法については、その利用目的等に応じて、調査票情報の提供(第33条、第33条の2)、オーダーメイド集計(第34条)、匿名データの提供(第36条)があります。オーダーメイド集計は有償、研究者は匿名データの提供を受けて二次解析するのが一般だと思います。

<スライド2> 他の基幹統計に「障害関連の設問」が入る可能性は? その場合の留意点は?

 設問が入る可能性はということについては、第一に、「入れる必要があるのか?」というのが私からの質問です。

 全部に入れても、結果が使えない場合が多い気がします。

 「これに入れたらいいよね」という統計を吟味しないといけない。

 今回、教育、世帯収入、健診受診率、スマホ使用時間など、国際比較できる障害指標をつけたデータを出せて、大きく比べたいところはクリアしていると思うので、それ以外にあれば、うまくデータをとれる形を考えて、提案していくのがいいと思います。

 二番目に、すでに障害指標が入っている国の調査があります。

 スポーツ庁が毎年行っている 「スポーツの実施状況等に関する世論調査」には、「障害者手帳を持っている」という選択肢があり、データも公開されているので、スポーツの実施状況の格差は示せることを、私も、厚労科研の報告書で発表したことがあります。

 この調査では、属性の6番目に
・体の状況(障害の有無、運動の可否) あなたの体の状況について(障害の有無、運動の可否) をお答えください。
 という設問があり、
 4つの選択肢があります。

  1. 1.障害がある(障害者手帳を持っている)
  2. 2.(この1年間)寝たきり等で運動できる状態にない
  3. 3.(この1年間)運動することを医者から止められている
  4. 4.上記のいずれにも当てはまらない

 となっており、軽度の障害は入りませんし、手帳の種別はわかりませんが、「障害者手帳所持者」という枠での集計は可能です。

 スポーツ庁はパラリンピックを所管しているので、この調査の選択肢には、「障害者スポーツ」が質問で1か所、選択肢で4か所出てきます。

 このように、すでに、障害者手帳に関する設問が入っている世論調査を解析する方法があります。

 三番目に、今回の2つの調査では、「いわゆる障害者」が、どう答えたのかがよくわからないので、「同じ設問(あるいは改善して)調査を障害者団体・特別支援学校・障害福祉施設の組織で実施し、結果を基幹統計での結果や一般人口での結果と比較する」ことも意義があると思います。

 基幹統計に、指標だけ入れればいいのではなく、どう集計するかの吟味を先にしておくことは有意義と考えます。

<スライド3> 留意点

 基幹統計の設問は、実施の2年前に、統計委員会の下部部会で審議されます。その前に、俎上に上がる必要があるわけです。

 今回は、権利条約の政府レポートに「国際比較可能な障害統計を掲載する」目標が、当事者・政府の双方にあったことが、議連の意見書のほかに、重要な要素だったと思います。

 意見書では、教育格差と雇用格差が書かれていたのですが、所得格差は書かれていなかったのではないかと思います。書かれていたら、「調査主体からの結果に所得の比較も入れて」もらえたはずだと思います。

 ただ、雇用について、国民生活基礎調査の雇用の選択肢では、うまく格差が示せないのであれば、どうしたらいいのかの解が出た段階で、再度、基幹統計に入れる働きかけをしたらいいのではないかと思います。

 少し、話題がそれますが、「統計委員会での審議は、とても厳しい」と聞いていました。厚労省とは違う精密さはありましたが、私が協力した下部会議での議論は厳しくはありませんでした。

 終了後に総務省の担当室長から「こんなにきちんと審議したのは初めて」とコメントをいただきました。

 つまり、当該分野の専門家でない統計の専門家が審議するので、通常は、的を得た議論がしにくいのではないか、と思いました。

 下部会議に参加する前に、関係しそうな過去の議事録を読んでみましたが、ツボがよくわからないで、まじめに緻密に議論せざるを得ない、という印象を受けました。

 ですから、目的と方法がはっきりしていれば、統計委員会が不当に厳しいということではないと思います。

<スライド4> 有効活用(二次利用を中心に)をどう図ればいいか

 二次利用の前に、結果を公表するアクセシブルな方法を開発したいな、と思っています。

 二次利用については、私が所属している研究班でも、すると思いますが、今、入手できるのは平成28年度調査のデータということで、少し、結果を得るまでには時間はかかりそうです。

 その間に、できることは色々、あるとは思います。

 その一つは、同じ設問(改善版)を使った調査を、当事者団体で行い、手帳や障害福祉サービス需給との関係も示すことだと思います。

 二番目には、二次解析で集計したらいいクロス集計の提案を、障害者団体として公表してみることです。

 今回、指標を入れることだけを要望して、どう集計するかの要望を出していなかったのは、残念でした。この時に、研究者の協力を得てもいいかもしれません。

 三番目には、基幹統計も生活のしづらさ調査も、本当に、答えてほしい人が答えているか、という課題があります。いわゆる障害のある人に、調査票が来たら、わがこととして答えていただくように、調査についての理解の底上げをする必要があると思います。

 生活のしづらさ調査では、実施の直前に、何人かの当事者に調査票を見ていただいて、ご意見をうかがったところ、ろう者から、「多少苦労する」は、わかりにくいかもしれない、というご回答をいただきました。他にも、重要なご指摘があり、ワシントン・グループの指標の日本語訳は、私は十分だと思っていません。が、内閣府の調査の文言が、国の調査ということで定着しそうです。

 とりあえずは、「設問の意図」を理解していただいて、意図に沿った回答をしていただけるとありがたいと思います。

 2021-2022年に、IDA国際障害同盟 International Disability Allianceは、「当事者のための当事者による障害者統計の研修」を、ワシントン・グループ事務局と協力して実施し、テキストも公開されています。日本でも、調査の企画を当事者・研究者・行政で協力する関係ができることを期待します。

 権利条約の日本審査の後に、すべての参加者が一緒に、打ち上げをできる関係性を、徐々に構築することを夢見ています。

藤井/田中さんから、質問はありますか。

田中/ありがとうございます。

 北村さんの報告を拝聴していて、質問の仕方とか、分析の仕方がとても工夫がいるし、難しいという印象を持ちました。

 私から質問というより、むしろ障害のある方の日常生活の実態がはっきりわかるような質問項目について、官僚から「こんなにしっかり検討したのは初めて」とコメントがあったのをお聞きしましたが、ぜひこれからも北村さんにはご努力をいただき、より一層、立法事実を提供していただけるとまでは言いませんが、ある程度障害のある方の日常生活の実態がはっきり統計によって裏付けられる――そういうことが可能になる質問項目に向けて、ぜひこれからもお力を貸していただきたいと思いました。

北村/皆さんの生の声がうまく回答者に伝わる設問を作ることで、正しく良いデータがとれると思います。

藤井/50数分野ある基幹統計の中で、今回の社会生活基本調査、国民生活基礎調査以外をどうするかということについてですが、例えば毎月勤労統計調査には、障害者の就労に関することはまず入っていないということがあります。少なくとも福祉的就労が入っていません。

 学校基本調査でも障害者が意識されていません。

 いくつか近接領域というものがあるような気がします。

 前提として、今度の2つの調査の反省や修正が大事なのでしょうけど、メジャーな調査には、障害者にとって大事な項目は入ってもいいと思うのですが、そこは否定しているわけではないですよね。

北村/生活のしづらさなどに関する調査は世論調査なので割合自由に、調査票の変更をできるのですが、その際に、「他の調査で聞いていることは聞かないでくれ」と言われたことがあります。国の調査で同じことを聞いて違う結果が出ると困るので、そこは避けてほしいと言われます。

 ある調査に障害の指標を入れるのなら、他の調査とかぶっていないかとか、入れる理由とか、背景を盤石にしておくのがいいと思いました。

藤井/基幹統計は、最も大事な国家の政策の根拠となる統計法に基づいての統計です。権利条約の制定過程ではないですが、それを検討するディスカッションの場に、例えばJDFの代表などが正式メンバーに入るというのはどうでしょうか。外国ではそういう例があるのでしょうか。

 私は、政策でも統計調査でも、何をするかというよりも、現段階では誰がするかという方が大切な気がします。当事者参加については、どう思いますか。

北村/ぜひ参加してもらいたいと思います。

 私が関係している研究班の多くには当事者が参加しています。

 先ほども申しましたが、去年のワシントン・グループの年次会議では、国際障害同盟IDAが、障害者による障害者のための障害統計研修を実施したという発表がありました。

 自分たちのデータに関して必要性を理解することを、当事者が発信して、ワシントン・グループが協力して実施したのはすごくいいことだと思いました。日本でも、この研修を取り入れていただけるとありがたいです。

藤井/少し時間がありますが、フロアの方々で、質問等ありますか。

会場/私が活動している重症心身障害児者の施設では、自分の意見を言うことがとても難しい方がいます。こういう方が、どのように統計に参加できているのか教えてください。

藤井/北村さん、いかがでしょうか。

北村/ワシントン・グループの指標では、子どもや自分で回答できない場合には、親御さんや施設職員が回答する形式になっています。代筆の場合もあります。親御さんの回答も、上にきょうだいがいる場合には早く障害について気付くとか、回答する教員によって違うという結果が出ています。

 国民生活基礎調査は徐々にパソコン回答にするという方向性だそうです。その際に、システムがアクセシブルになることをあわせて要望していく必要もあると思います。

藤井/田中さんも、意思表明しにくいといわれている方の意思決定や自己決定についてご意見ありますか。

田中/支援されている方とか、その人のことをよくわかっている方で、本当にちょっとしたしぐさとか、まぶたの動きで、イエスと言っているとか、こういう意思を持っているとか、読み取れる方に回答していただくことが大事なんだろうと思います。

 適切なやり方は今後の検証にも委ねていく必要があると思いました。

藤井/本当は、時間があったら、質問された方はどのようにしているのか伺いたかったのですが、今日は時間がないので、またチャンスがあったら伺います。

 この鼎談では、権利条約がもたらしたもの、もたらすものについて、過去を振り返ったり、近未来を見ながら、話し合いました。

 今日のキーワードは「他の者との平等を基礎として」ですが、このことについて、法律上どうするか、統計上どうするか、議論してきました。

 他の者というのは、第一義的には、障害を持たない市民だけれども、同じ障害をもつ同士の国際的な比較がどうかとかという視点もあります。

 国内にすると、障害種別間でどうなのかという視点もあります。

 「他の者」って幅広くあるんですね。

 条約が一番大事にしていることは、本当の平等とは何なのかを追い求めていることです。その手がかりの有力な方法の一つがデータの集約で、権利条約第31条「統計及び資料の収集」だと思います。

 なおかつ、統計を「利用しやすく」ということには、障害をもった人たちにとってアクセシブルになることも含むということも指摘されました。

 さらには、同じ項目で、例えばJDFが調査してみたらどうか、結果に差が出てくるのか、意外と一致しているのか、といった視点も出されました。

 これからも注視していきたいと思います。

 基調講演、そして鼎談の内容を踏まえながら、午後のシンポジウム、そして明日のプログラムにバトンタッチし、さらに議論を深めていきたいと思います。

 お二人の方たち、ありがとうございました。

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