セミナー1「福祉的就労の課題と展望~その役割と意義について」

講師:
西岡 美紀 (福)ふたかみ福祉会 ハピバール 管理者
志田 勇馬  同 利用者

座長:
栗原  久 (一財)フィールド・サポートem. 代表理事、
       日本福祉大学実務家教員、本大会実行委員長

栗原/皆さん、おはようございます。最初に少しご報告させていただきます。本当はこのセミナー1の座長は雨田信幸さんでしたが、インフルエンザでどうしても来るこ とができないということで、これまで準備してきていただいたので、私も大変残念だなと思うのですが、代わりにたびたびで失礼しますが、私の方で座長を代理でさせて いただきます。どうぞよろしくお願いします。
 改めまして、志田さん、西岡さんにお話をいただく前にこの緑色の抄録集の31ページをお開きいただけますでしょうか。
 緑色の抄録集ですね。
 ここに雨田さんが完結にまとめたセミナー1の趣旨と流れがありますので、私の方で読み上げさせていただきます。
 セミナー1、福祉的就労の課題と展望~その役割と意義について。きょうされん大阪支部事務局長雨田信幸。
 1 企画の趣旨
 セミナー1では、大会テーマである「障害者就労の現状と課題~近未来のために」を、「福祉的就労の課題と展望」という視点から深めていくものとします。
 2 企画の流れ
 事例報告をいただくハピバール(生活介護・就労継続支援B型の多機能施設)を利用する志田勇馬さんに登壇いただきながら、支援現場の実際の姿から福祉的就労の意 義や役割を深めていきます。
 また国際的にもそのあり様が問われている中、発表者である西岡美紀さんが実際に見てきたドイツの事例を紹介していきながら、日本におけるあり様を考えていきたい と思います。
 ということでご準備いただいておりますので、志田さん、西岡さん、どうぞよろしくお願いします。
 
西岡/ハピバールの管理者、西岡です。よろしくお願いします。私も風邪をひいて、声がかれていて、ようやくちょっと声が出るかなというところなので、話している間 で、どんどん聞き苦しくなることがあると思いますが、申し訳ありません。
 まず私の自己紹介をさせていただきます。
 法人に入職したすぐあとから就ポツの配属となり、13年間は一般就労の方の支援をずっと行っていました。
 今回、会場に来られている方にもその当時から知っている方もいらっしゃってということで、その中の報告ということで、かなり緊張しています。
 今回のテーマが、すごく大きいなというか、私から「こうだ」と提示するのは、なかなか難しいかなと思っていて、普段の業務や、ドイツにも行かせてもらった経験か ら感じたことをお話できればと思っています。
 今日、一緒に報告してもらうのはハピバールに通所されている志田勇馬さんです。
 
志田/志田勇馬です。よろしくお願いします。
 
西岡/このスライドは志田さんが描いた絵を使っています。
 その次のスライドは、今回、全国から来られているということで、簡単にハピバールのある羽曳野市の紹介を入れています。
 市のホームページからとったものですが、古市古墳群があって、ブドウ・イチジクが特産で、ブドウが特産なのでワインがあって、有名なのはチョーヤの梅酒さんの本 社があってと。
 次に法人の紹介ですが、ざっと見ていただければと思います。
 次にハピバールは生活介護・就労継続B型の多機能の事業所で定員が10名ずつの20名で、現在21名が登録しています。
 来られている方は、いろいろ障害がありますが、主には知的障害の方が通われています。
 ハピバールに通所するには生活介護の場合ですと、市役所に申請をして、認定調査を経て、介護給付で区分3以上の方が一般的に利用できます。多少例外はあります が、基本的にはです。
 B型の場合には訓練等給付ということで、区分がなくても利用はできます。ただ、過去に一般就労で働いた経験があるとか、支援学校から卒業してすぐに利用したいと いう方には、アセスメントをして、B型利用が妥当であると決定がなされた方の利用が可能になっています。
 次からハピバールの紹介をします。
 大きくは4つの作業に分かれています。
 1週間の予定が、ある程度決まっている方もいますが、作業があるとかないとかは日によって変動するものがあるので、毎朝、通所したときにその日の仕事を午前と午 後で、自分で選んで決めてもらっています。
 予定が決まっている人も事前に職員と相談して、自分で1週間の予定を決めてもらっています。
 今、映っているのがカフェです。
 カフェではどんな仕事をしているか、志田さん教えてもらっていいですか。
 
志田/カフェでは、掃除したり、コーヒーをいれたり、テーブルを拭いたり、絵を描いたり、いろんなことをします。
 
西岡/今言っていただいたように、開店準備をしたり、清掃もあるんですが、看板を出すとか、そういったことをやっていただいたり、あと、今、動画が流れているんで すが、これは、配膳、下膳とか、注文を取ったりとか、一人一人できることが違うので、できることをやっていただいています。
 なので身体的に難しくて、配膳できない人は、持っていくのはできるけど説明は難しいという人とペアで一緒に動いてもらったり、そのような形でやっています。
 今、絵を描いたりと言っていたのが、紙袋の製作の作業なんですが、買い物していただいたあとに入れる袋も、カフェの中で絵を描いて作ったりしています。
 これがコーヒーを入れている方です。
 コーヒードリップはハンドドリップでしているので、それをしている様子です。
 何度も練習をして、職員が、それで大丈夫かと、試飲したりとか確認しながらやっていけるようになって、今は、結構コーヒーの注文が入ったというと、さっと1人で 準備してやってくれるまでになっています。
 それ以外にも、カフェは校区福祉委員会の会場で利用いただいたり近隣の支援学校とか、作業所が来てくれたりこの写真は近所の幼稚園の子どもたちが来てくれた時の ものです。PTAの取り組みということで、中学校に呼ばれて、出張カフェに行ったこともあります。
 
志田/峰塚中学校。僕の出身校です。
 
西岡/出身校で行ったということで、知っている先生に会えたり、そんなこともやっています。
 次は、陶芸作業です。
 
志田/お皿などをいろいろ作ったりしています。楽しいです。力を入れて頑張っています。
 
西岡/陶芸で、ちょうど動画があるのですが、これは志田さんがやっているのですが、粘土をこねて、その木の太さに合うように、均一にのばしていくという作業です。
 結構、粘土が固くて、ひじまで使って伸ばしてくれています。
 こういった作業や絵付け、撥水剤を塗ったり、一連の作業を全部やっています。
 ここに、みんなが描いた絵をつけたり、あとは今流し始めた動画の作業は、地域の幼稚園がずっと卒園制作で陶芸をされているんですけど、そのお手伝いとして、幼稚 園で粘土をこねて絵を描いて、そこから先の、掘ったり弁柄入れをしたりがうちの事業所でやっているという動画です。
 あとは出来た陶器をカフェで販売したり、地域のマルシェなど外部販売で地域のお店で委託販売をしていて、この写真の陶器ですが、古墳と埴輪が描いてあるんですけ ど、これは古墳商品を、依頼されて作りました。
 古市古墳群があるので、そういったお店ができたので、何か商品をと頼まれて作り出したものです。
 次は、果物の下処理です。
 これは何をしていますか。
 
志田/イチジクの皮をむいたりしています。筋を取ったりしています。きれいにしています。
 
西岡/あとは、デラウェアという、これも、羽曳野が産地になっているんですけど、一粒は小さいんですけど、それを1個ずつプチプチと皮むきをしたりということも やっています。
 デラウェアやイチジクあと、イチゴもヘタとりをしているんですけど、ジャムに加工をされます。
 皮むきの様子があります。
 結構、皮はすぐむけるのですが、筋が残っているとダメで、ピンクの手袋をしている彼女は、筋を取っている様子です。結構、細かい作業です。
 それ以外にも、この写真にあるように、いつもはブドウを収穫したあと引き取りに行ったり、持ってきてもらったりするのですが、収穫の体験させていただいたりして います。
 次は、アートです。
 これは何をしていますか。
 
志田/きれいに描いたりしています。
 
西岡/それぞれが好きなものを描いていて、好きなものを、紙も自分で選んで、色鉛筆にするのか、ペンにするのかとか、何で描くかというのも自分で選んで、何を描く かも、もちろん任せています。
 職員が相談して、一緒に考えることがあるんですけど、これを描きなさい、とかいうのは基本的にはしていません。
 お客様から、こんなものを描いてほしい、と依頼があったときは、依頼のものを描いてもらうこともあります。
 この絵画ですが、絵画リースをしています。
 地域のクリニックに飾っているんですけど、ここは2か月に1回掛け替え作業をしていて、描いた人が掛けに行くということを行っています。
 あとは、名刺、雑貨と、いろんな商品に描いた絵を利用しています。
 絵画展やコンクールへも応募していて、これはちょうどこの間、はばたきアート展で、志田さんが大賞をとったときですけど、こちら側が昨年度のアバウトミーに出展 した作品で、ルクアの中で展示したので、みんなで見にいったときの写真です。
 これがアートを利用したハピバールの商品で、志田さんの絵を使って封筒を作ったり、祝い箸などのお箸とか、描いた絵を和紙に印刷して箸袋として折って使っていま す。陶器の商品も。カフェで絵も描くと話しましたが、ギフトボックスにしたりもしています。
 こういったもので就労支援事業収入を頑張って稼いでいるといった感じです。
 次は、それ以外の活動として、地域の幼稚園や小学校とも交流を定期的にしています。
 こちらの写真は、昨年度小学校に行って子どもたちと交流したときの様子です。
 これ以外にも、隣りが小学校なので、実際に災害が起きたときには、小学校が避難場所になるということで、避難訓練するときに一緒に参加させていただいて、サイレ ンの音だと聞こえるのですが、マイクの声までは聞こえないので、時間だけ合わせて、「地震やー」と、みんなで隣の小学校まで避難したり、そういった活動もしていま す。
 これは、だんじりです。
 地域のお祭りのときにハピバールにも来ていただいて、市内循環バスの運転手さんが地域の方で来られていて、仲間に声をかけてくれたり、○○君、おらんのか、と か、気にしていただけて、地域の方にも、理解していただけているのかなと思っています。
 こういった活動も、地域で生活していくために必要だということと、子どもたちも障害のある人が身近にいてるんやと分かってもらうということも、取り組みとしても 大切かなと感じています。
 次に、志田さんに質問したいと思います。
 ハピバールの仕事はどうですか?
 
志田/楽しいです。
 
西岡/何してるときが楽しいですか?
 
志田/アトリエです。
 
西岡/アトリエでは何が楽しい?
 
志田/絵を描いていることです。
 
西岡/志田さん、後ろに映っている、この絵は?
 
志田/僕が描いた絵です。
 
西岡/これは、何の絵ですか?
 
志田/東京ベルディです。
 
西岡/これがさっき言っていたはばたきアート展で大賞を受賞した作品で、授賞式の様子も大きく見せているんですが、こんなふうな絵を描くのが楽しいんですね。
 
志田/はい。
 
西岡/前はどんな仕事をしていましたか?
 
志田/いろいろ掃除とかやっていました。
 
西岡/清掃訓練かなと思うんですが。
 清掃訓練とかしたあとに、お仕事は、どこに行っていたか教えてもらっていいですか。
 
志田/福岡です。福岡でポップコーン作りです。
 
西岡/ポップコーン作りというのはA型の事業所だったと伺っています。
 A型でポップコーンを作る仕事をしていたんですね。
 
志田/はい。
 
西岡/その仕事はどうでした?
 
志田/いっぱい いっぱい怒られていました。怖かったです。
 
西岡/なかなかうまくいかないこともあって、怒られることも多かったかなというお話を聞いています。
 ポップコーン作りを辞めたあとはどうされましたか?
 
志田/ハピバールに来ました。
 
西岡/ハピバールに来る前にもB型に通っていたよね?
 
志田/はい。
 
西岡/A型の仕事でなかなかうまくいかないなということもそうなんですけど、それまでも訓練ですとか、いろんなことをやったりしていたんですけど、なかなかA型の 就職には結びついていかなかったという中で、そこの事業所は楽しかったよね?
 
志田/はい。
 
西岡/その後福岡から羽曳野に来られて、ハピバールに来てくれたんですよね。
 ハピバールを何で選んだのか?
 
志田/やっぱり仕事がいいからです。
 
西岡/何がよかった?
 
志田/カフェとかがあるからです。
 
西岡/カフェのある事業所が少ないというのもあるかなと思うんですけど。カフェがやりたかった?
 
志田/はい。
 
西岡/今はカフェより絵を描くのがいいって言っていたけど、最初はカフェが良かった?
 
志田/はい。
 
西岡/分かりました。
 今頑張っていることを教えてもらっていいですか?
 
志田/アトリエできれいに描くことです。
 
西岡/描いた先にどうしたいとかある?
 
志田/もっと賞をもらいたいです。
 
西岡/受賞したときに、どこに呼んでもらったんでしたっけ?
 
志田/東京ヴェルディさんです。
 
西岡/ヴェルディさんにスタジアムに呼んでもらって、何かいただいたりもしたよね。
 
志田/はい、ユニフォームをもらいました。
 
西岡/すごく喜んでいて、今の話にはなかったんですが、志田さんから、お父さんもお母さんもすごい喜んだのがうれしかったというお話を聞きました。そういうことも あって、もっとたくさん賞を取りたいなと思っているんですよね。
 
志田/はい。
 
西岡/これからのこととか希望とか教えてもらっていいですか?
 
志田/もっと賞を取りたいです。
 お金がもっと欲しいです。頑張りたいです。
 
西岡/もっと賞を取りたいなとか、もっとお金もね、お給料をもっとたくさん欲しいという話も聞いています。
 お給料もっと欲しいというところでは、うちのハピバールなんですが、お給料はB型の方で一万数千円ぐらいです。
 全国平均よりも低いです。生活介護とかになってくると、もうちょっと低くて6,000~7,000円ぐらいが平均になってくると思います。
 ただ、もちろんお給料を払えたらいいなというところもあるんですが、雰囲気がいいなとか、絵を描いたりする中で認めてもらえるとか、そのようなところでハピバー ルを選んでいただく方はすごく多いかなと思っています。
 志田さんもA型で怒られたというところもあって、B型で今、すごく楽しそうに仕事されているなと私も感じています。
 就ポツで働いていたときなんですが、そのときにもバリバリ働いていた人が転職したいといって、転職をして、その転職を機に、どんどん働けなくなっていった事例が あったんです。
 転職先は、もともとは食堂での食器洗いだったのですが、転職後は事務がしたいといって、都会のおしゃれなビルの中に行ったんですね。
 障害者雇用で入ったんですけど、雇用率を達成するためという考えの会社の方で、任されていた仕事もごく簡単なもので、なかなか本人もやりがいも持てなかったです し、さらには、一緒に働く人ともほとんど交流がなかったんです。
 一人で簡単な作業をずっとするという日常の中で、その中では生活の糧としてという仕事は十分だったと思うんです。
 でも、やりがいがなくて、他の人とも交流のないような転職先の仕事というのは、その人にとっては辛い経験になったと思っています。
 そのあと、離職につながったこともあるんですけど、やはり会社全体の意識というのを、一就労支援担当者が変えるのは難しくて、関わり方、仕事内容を変更してもう まくいかないこともよくあったかなと思います。
 反対に、ちょっとこの仕事、この人には難しいかなとか、周りの人と、頼りにされたり、他の職員と同じようにとか、それ以上にかかわっていただけるような職場は継 続して働いている人が多いんだなというのが、私の中では体感しているところです。
 作業所でも、日々の支援の中で、仲間同士とかお客様からとか、職員からとか、ありがとう、とか、肯定されるなかで、自分に自信がついて、いろんなことに挑戦しよ うと思えるのかなと思います。
 働く自信をなくしてしまった人とか、次に向けて動いていくために、私自身も地域のB型作業所にお願いしたという経過があるんですけど、やはり、そういうふうに自 分を肯定できるというのはすごく必要だなと思っています。
 志田さんも、先ほど、お金がほしいという話をしていましたが、うちの事業所はB型でも平均以下で、いろいろと取り組みをしていて、カフェの運営もしていますし、 陶器の販売や絵画リースとか、アート商品を販売したり、いろんなことをしていて、もしかしたらやり過ぎでは、と思われるのですが、自分たちで作ったものを手にとっ てもらえるとか、直接お客様と関われるとか、認められている実感があって、一人一人が出来る仕事を仕事にしていくということとか、ハピバールに通所されている方、 全員の商品ができたらいい。
 その人の作品を使った商品というのが、それぞれにできたらいいなと思っています。
 得意なことを伸ばそうと思ったら、どんどん種類が増えていって、職員は1個1個、それに対応しないといけないので、結構大変なところではあるんですけど、でもそ れぞれが楽しんでやっていけてると思います。
 ただその商品ですが、たくさんやっていて、一個一個は「いいね」と言ってもらえることがあるんですけど、どう商品としての価値を高めていくか、ブラッシュアップ していくか、販売をどうしていくのか、なかなか課題はつきなくて、就労支援事業所には厳しくて、夏と冬はボーナスも一応支給しているのですが、ホンマにもうちょっ と出せないかなと思うくらいの状態なんです。
 それもあって、また商品を一個増やそうと思うんですけど、それも上手くいくかどうかはわからないのですが、私たちは福祉について学んできて、福祉の専門家だとは 思うのですが、それ以外の事業とか商売に関しては素人で、専門家ではないので、そういった部分について、作業所の収入を上げていくことには、多くの分野の方の協力 をいただく必要があるかと思います。昨日もA型の話をされていましたけど、A型でやるのは、すごいなとよく同僚と話をしていたのですが、福祉もしながら、最賃も 払っていく、そこもきちんと両立出来るのは、すごいことだなと言っていたんです。
 そこの部分の支援というのは必要なのかなと思います。
 今のところハピバールではないんですけど、今後、一般就労に向かっていく人がいたとき運営を考えると、素直に喜べないという危惧もあります。
 うちはないのですが、他の事業所の話を聞いていると、就職する人は、複数のことができるとか、その人しかできないとか、そういった人というのが多いということ で、その人がいなくて新しい人が入ってくると、新しい人がまた一からになってしまうので、仕事を覚えてそれなりにやっていくまでは時間がかかって、その間に生産力 が落ちると収入が減ってしまうとか、精度も落ちてしまうということがあったりします。
 あとは就職者が一気に出てしまうと、事業所収入をどうしようとか、そんな問題点もあるのかなと思っています。
 次はドイツの作業所を見学したことについてです。
 私は、2018年11月にきょうされんの海外研修に参加させてもらいました。
 そのとき、ドイツの作業所も見学させてもらいました。
 1つ動画があるのですが、これも、作業している様子です。
 ここに載っている写真はドイツのものですが、敷地はすごく広くて、規模はものすごく大きかったのですが、作業内容は日本とあまり変わらないかな、というのが印象 でした。部品の組み立てとか、これは数を数えている様子です。
 解体の作業とか、あとはクリーニングをしたり、カフェの運営をしたりというところもありました。
 やりやすいように、部品ごとに仕分けをしていたり、箱を折っている作業ですが、治具だったり、あまり変わらないという印象でした。
 ただ、ドイツの作業所というのは、作業所で働いていても、準労働者という位置付けがされていて、有給休暇があったり、社会保障に加入していたり、あとは作業所委 員会と呼ばれる、自治会組織みたいな、そういったものも法的に位置づけされていました。
 作業所を利用する人の意見を委員が取りまとめて、運営者に、こんな要望があるよ、こういうことを改善してほしいということを伝えて、変えていく。
 そういうふうな、組合みたいな形なのかなと思うのですが、そういったものが法的に位置付けされていて、作業所委員会に対して、法人が作業所の会計報告とか、そう いったこともしっかり行っていかないとだめだと、話をされていました。
 週末にはサポートが必要な人には、国からアシスタントがついて、その人が一緒に行動してくれる。
 しかも、ディスコとかクラブとか、あとは旅行会社とかが、障害者の配慮がされていることがあると聞きました。
 そういう話を聞いている中で、なかなか私たちは、会計報告を仲間にしてないなと思います。見せるのは見れるようにはなっていますけど、きっちりと本人たちがわか るように説明しているのかなというと、そこまでしてないなとか。
 作業所運営に関しても、運営は職員の仕事みたいな形で最初から決めつけてやっていることもたくさんあるのかなと感じました。
 うちの事業所でも、自治組織ができたらいいなと思っていて、ちょっとずつ進めてはいるんですが、意見を求めても今まで経験もない中ではなかなか難しいので、 ちょっとずつ決められるところからという形で進めていっているのが現状です。
 まだまだドイツみたいな形になるのには、かなりの年月がかかると思っています。
 ドイツも国連の権利委員会から作業所を段階的に廃止すべきという指摘を受けていました。その点についても話を聞きました。
 ちょうど2018年に伺ったので、パラレルレポートを出す前ぐらいの段階で話を聞いたんですが、ドイツでも86万人が作業所で働かれていて、それも1つの産業に なっているという話と、あとやはりドイツでも一般労働市場のインクルージョンが進まない限りは廃止はできないという話はされていて。
 イギリスとかでは廃止されて在宅の人が多くなったという話も出ていた中でヨーロッパ各国の状況も注視しながら、作業所が必要ということは国、政府に訴えていかな いとダメという話を伺いました。
 今回、見学した事業所とか話を聞いた人からは働くという概念とか働き方にはいろいろな考え方があって、その人の希望とか状態に応じて、作業所や一般就労をチョイ スできるようにする必要があると感じているという話でした。
 そこに関しては、作業所をなくさずに、作業所という機能も充実させていくこととか、一般労働市場のサポートを充実させていくところは、日本も同じような課題があ るのではないかと感じました。
 また、作業所委員会の方が、どこら辺の話だったか、その後かもしれませんが、話を聞いたときに、障害があるなしに関わらずに、働く中で傷ついてしまった人がいる という話をしていました。
 ちょっと働くことに疲弊して、しんどくなっている、そういう人は障害があるなしに関わらないんじゃないかということで、そういう人が少しずつ回復する場所が必要 なんじゃないかという話をされていました。
 私もそういう考え方も素敵だなと思いました。
 作業所をなくしていくという考えではなくて、作業所の機能をもう少しひろげていく、そういった中で一般就労に疲弊した人は、ゆったりとした働き方の中で鋭気を蓄 えられるような、中間的な場所になっていってもいいのかなと感じました。
 しっかりお給料がもらえるところもそうですし、ちゃんと労働者として見られる、その働きが認められて、その人の役割を持って、また地域の人ともつながったりしな がら、誰でも使えるような場所にするのが理想的なのかなと思いました。
 これで発表を終わらせていただきます。
 
栗原/志田さん、西岡さん、ありがとうございました。
 この後、会場とのやりとりをして、最後にお二人からコメントをいただきます。
 それではそちらで手を挙げていただいた方、どうぞ。
 
会場/東京から来ました。私は、息子が精神障害を持っているので、家族会にも参加しています。
 まず冒頭の志田さんの作品は、非常に感銘を受けました、ありがとうございます。
 それから西岡さんのハピバールの施設の運営は、非常にすばらしいものだなと感銘を受けました、ありがとうございます。
 それからドイツの貴重な報告の話、非常に勉強になりました。
 私の質問は、去年5月に厚労省と子ども家庭センターが告示を発表しています。
 それは第7期子ども福祉、第3期障害児福祉計画に係る、国の基本指針があります。それを都道府県を通じて各市町村に一種の通達のような形で今後の運営について方 向性を出しています。その中身が障害者権利条約、総括所見の勧告の趣旨を踏まえて、例えば福祉的就労については、一般就労に向けて数値目標を出しているんですね。
 それは1点申しますと、例えば、一般就労する者を令和3年度の就労者数の1.28倍以上にする目標。就労移行支援事業については1.31倍以上。A型事業所につ いては、概ね1.29倍、B型は1.28倍以上という目標が設定されています。
 数値目標について疑問があります。今の説明のとおり、障害の特性に鑑みると、同じ場所、同じスタッフ、同じピア、そういう同じ施設で活躍できるということがあっ て、それを無理矢理、就労移行だという形で移しても矛盾が生ずるのではないかと感じています。
 またもう一つ、矛盾としては、できるだけその目標を達成するために、軽い障害程度の人ばかりを受け入れるという施設も出てきつつあるように聞いています。
 では本当に支援の必要な人は在宅に置かれたまま、というような形になります。
 私は単なる数値目標の達成ではなくて、今おっしゃったように一種の作業所が進化していくと。そこの中で、法律的な枠組みの中のレベルがA型、B型、一般就労とい う形でなくて、そこで安住できる施設の中で新たな高いレベルに、支援者の人がやりがいを持てるような受容できる場に進化していく、そのあり方もあっていいんじゃな いかと感じています。
 単なるB型からA型、あるいはA型から一般就労ではなくて、その中での進化を考えているのですが、西岡さん、いかがお考えでしょうか?
 
西岡/私も数値目標だけが出るのはどうかなと思います。
 さっきも話したように、やはり一般労働市場での支援ももちろん必要なので、そこが充実していくこともそうですし、行った先で、気持ちよく働いていくためには、や はり社会全体が変わっていく必要があるかなと思います。
 ですので、幼稚園、小学校、そういった段階のときから知ってもらう取り組みが、私は必要かなと思っていて、職場にも障害がある人はいるんだと思っていただいて、 その人がどういうサポートが必要なのかと、そのようなことが自然とできるようになっていけば、どんどん一般就労は進むのかなと思うんですが。
 そういった土壌がないなかで、頑張って事業所の人たちは、就職させなさいとか、それは違うと思います。
 地域作りといったところを、役割として担っていくというのは、1つあるのかもしれないなと思っています。
 
栗原/私から、勝手にご指名して申し訳ないのですが、きょうされんの赤松さんが来られていますので、今の話にコメントをいただけるとありがたいのですが。
 
赤松/志田さんと西岡さん、いい報告をありがとうございました。
 先ほどのご質問の趣旨は、私も、そうだと思います。
 いま特に報酬が、一般就労をたくさんしたところに加算をつけるとか、工賃をたくさん出したところに加算を付けるとか、インセンティブということになっているんだ けれども、B型のように障害の重い人がたくさん働いているところでは、その要件を満たすことができないことが多いです。結果的にそういった加算が取れないために、 障害が重い人たちが働く場から排除されるのではと非常に危惧をしております。
 成果と報酬がつながった事業所の運営も、障害のある人たちの働く場や安心を奪っているのが現状だと思います。
 したがって先ほどおっしゃっていた一般就労の数値目標というのは、これが絶対になってしまうと、一般就労を出さないのは良くない事業所というレッテルにつながっ てしまいます。
 こういった目標が独り歩きをするのは、私も非常に危惧しています。
 お二人に一つずつ質問をしたいんですが、志田さんにお伺いしたいのは、志田さんはハピバールで働くのが大好きな様子で、充実した毎日を送っておられると思いまし た。
 一方で、ハピバールの今の給料は満足しておられるのでしょうか。
 もう1つは、もっと給料がもらえる会社で働きたいと思ったことはないのかな、この2つの質問を志田さんにさせてください。
 西岡さんには、報酬について意見を申し上げましたが、今回の4月からの報酬改定でハピバールにはどんな影響があったのかなということ、今の報酬の形に対する西岡 さんのご意見をお聞かせいただければと思います。
 
栗原/ありがとうございました。
 志田さんからお願いします。
 
志田/はい、満足しています。
 
西岡/さっきもっとお給料がほしいと言っていたよね。
 
志田/もっとお給料がほしいです。もらえるところに変えます。やっぱり、もらえるところに行きたいです。
 
西岡/ハピバールもがんばります。
 
志田/ハピバールもがんばります。
 
西岡/私への質問ですが、4月からの改定では、うちの事業所は、増えたんです。
 それはなぜかというと、生活介護の方です。
 B型に関しては、今年から1名、利用者が増えたんですけれども、増えたので微増であるという感じ、ほぼ変わらないくらいです。
 増えて変わらないということなので、もし人数が変わってなければ、減っていたというところです。
 生活介護に関しては、重度障害の方の加算が多かったのと、あとは換算方式が、時間が短くなると0.75でいけるということで、そこら辺の加減で人員配置を変えら れたということで増えています。
 ただ、これが加算なので、いつまで続くのかなという不安と、時間の考え方についても、どうなっていくのかというところですとか、正直、安心は出来ないなと思って いるところです。
 なので、もうちょっと加算とかに振り回されない安定した形になってほしいなと思っています。
 
栗原/会場からあとお一人、いかがでしょう。
 
会場/埼玉県で市直営の障害者就労支援センターに在籍しています。市の名前は伏せます。
 お話しいただきありがとうございました。
 就労支援員や介護職で働いていたので、すごく頷けて、なるほどというところが、多かったです。
 質問というより、私の考えていることになりますが、ドイツの作業所では、会計報告を受けたり、運営に参加するということでしたが、それが本当にできるのかなと感 じています。
 過去に私が勤めた生活介護の施設では、利用者さんを巻き込んで会計報告をしたり、どんなことをしたいか、という会みたいな、学校で言うと生徒会みたいなのがあっ て、そのなかでは、職員が利用者さんの意見を決めてしまっていないかが大切だったんです。
 職員の意向に合わせてしまっていないか、職員の質が問われるということがありました。
 そこの事業所では、ちゃんと利用者さんの意向をくみ取っているという印象は受けていたんですが、私が学生のころ、学校にものを申し立てるときは、生徒会長だった んですが、生徒が先生に申し立てるな、と言われたことがありまして、勝手に行動するなと言われました。
 他の所でも、できそうだなとは思うのですが、そのためには、職員の質が問題になってくるのかなと思います。私の市でも、直営の事業所はあるんですが、正直、質が 疑問です。
 職員の質を上げていく、というのが必要かなと思うので、質を上げるために、事業所でやりたいことや、これをするために実行することを教えていただければと思いま す。
 
栗原/西岡さん、今の質問、簡単にはお答えしにくいかもしれませんが。
 
西岡/法人では、意思決定支援についても、日頃から職員に話はしています。
 職員としてはこの方が便利だなというところは確かにあるので、そこを抜きにしながら、きちんと意見を聞いていこうとは常々伝えていく必要があると思います。
 
栗原/ありがとうございます。もうお一人手を挙げていただいたんですが、時間の関係で申し訳ございません。
 11時になってしまいましたので、最後に志田さん、西岡さんに一言ずつ、何かお話をいただいて終わりたいと思います。
 会場の皆さんに何か言いたいこととか。
 
志田/楽しかったです。
 
西岡/私の話がどれだけ皆さんのためになるかわからないのですが、こういった貴重な機会をいただいて、私自身もいろいろとまとめたり、考えたりする、いいきっかけ になったかなと思っています。
 今回質問や、意見をいただいたところを心にとめながら、また志田さんの給料がもっとほしいとか、そういう気持ちもちゃんと継続して考えていきながら、事業所運営 を行っていきたいなと思いました。
 
栗原/お二人に拍手をお願いします。
 これでセミナー1を終わりたいと思います。

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