シンポジウム2「教育から就労へ~障害種別を超えて問われること」

シンポジスト:
 田中 裕一 神戸女子大学文学部教育学科 教授、
       前文部科学省特別支援教育調査官
 大串  幹 兵庫県立リハビリテーション中央病院 病院長、医師
 田中 順子 (特非)生活支援研究会 理事長(神戸障害者地域生活センター)
 佐元 佑衣 発達障害のある当事者
 酒井 大介 全国就労移行支援事業所連絡協議会 会長、
       (福)加島友愛会 理事長
 黒木  均 大和ハウス工業株式会社 本社経営管理本部 
       Well-being推進室 上席主任
指定発言者:
 土橋 喜人 金沢工業大学基礎教育部修学基礎教育課程 教授

座長:
 栗原  久 (一財)フィールド・サポートem. 代表理事、
       日本福祉大学実務家教員、本大会実行委員長
 星明 聡志 (福)北摂杉の子会 ジョブジョイントおおさか 所長、
       同たかつきブランチ 所長

星明/皆さん、よろしくお願いします。
 この時間、シンポジウム2で、教育から就労へ、障害種別を超えて問われることとしてテーマに進めていきたいと思います。私は社会福祉法人北摂杉の子会の星明で す。普段、就労移行とか自立訓練の事業所を運営しています。
 座長として進行を進めます。
 簡単に企画の趣旨だけご説明できればと思います。
 教育から就労への円滑な移行について、障害種別を超えて問われることを明らかにするために当事者、就労支援機関、教育、医療機関、企業の方によるディスカッショ ンを進めてまいります。
 ここからは栗原さんにお願いします。
 
栗原/最後のプログラムとなりました。
 もう一人の座長の栗原です。
 私も以前は現場で就労支援をしていましたが、教育関係者との連携も多くありました。
 そのようなことも思い起こしながら、今日は進めてまいります。
 私は41ページの企画の流れを最初に説明申しあげます。
 今日の前半はまず身体障害、発達障害のある当事者、支援者の立場から発題を受けて、続いて、医師と企業の視点から教育から就労への課題をお出しいただきます。
 前半の最後は前文部科学省特別支援教育調査官の田中裕一さんから、教育分野の総括的な内容をお話しいただきます。
 そして、ここまでが私の進行で、後半は星明さんから。2つのキーワード、①引継ぎ(アセスメント情報)、②合理的配慮(建設的対話、周囲の協力や理解啓発、教育 面での配慮、雇用面での配慮)についてです。
 本シンポジウムはアセスメントなどを、どのように引継ぐか、ディスカッションを進めていきます。また交通バリアフリーの視点から指定発言を受け、その後、会場と のやりとりも予定しています。これらを通して教育から就労への円滑な移行に関わる課題を整理し、各地での総合リハビリテーションの推進に資することを目指すもので す。
 このような流れで始めます。
 それでは、はじめに特定非営利活動法人生活支援研究会理事長、田中順子さん、よろしくお願いします。
 
田中順/ただいま紹介にあずかりました田中順子です。
 よろしくお願いいたします。
 私はNPO法人生活支援研究会で、障害者の介護派遣の事業所と、障害者の相談とか、当事者の活動、ピアカウンセリング、介護者探しのビラまきといった感じの活動 をしています。
 私は直接介護をするわけではなくて、障害者の方の相談、事務作業などで働いています。
 資料のとおり、2022年から神戸市に重度障害者等就労支援特別事業制度を開始してもらいまして、私は制度を使い、54時間、介護者を利用して勤務中はバスに 乗って事業所まで行きます。
 私は手が不自由で書けないので、代筆してもらう、パソコンを打ってもらう、全ての作業に関して介護者が隣について勤務させていただいています。
 これは働くうえで重要なことです。それまでは私は1人では勤務できないので、なかなか大変な状況でした。働けないという状況で苦しい思いをしていました。
 多くの障害者は、実はこれが理由で働けなかったんですよ。
 移動する、バスに乗るといっても、1人では乗れません。やはり介護者が付き添ってもらわないと行けないのですが、通勤・通学に関しては使える制度がないんです。
 ここがネックで、障害者にとっては移動ができないんです。働く場所にも行けない、勤務すらできない。学校すら受けれないんです。
 これが現状なんです。
 今日の課題である「教育から就労へ」の話へとつながっていくと思いますが、私は小・中・高と普通学校に行っていたんですね。
 普通学校に行きたいと親が言ったときに、お宅のお子さんは障害を持っているでしょう、だから養護学校とか特別支援学校に行けばいいと言われました。その後制度は 変わりましたが、障害者の人は普通学校にはなかなか行けない現状があります。
 もう一つは、お迎えがないんです。養護学校ならスクールバスがあって行けます。障害者の親はそこら辺で苦労するんです。お迎えもなく、制度もないので、親が送り 迎えしないといけない、そこがネックで普通学校に行けません。
 人間関係の形成でいうと、普通学校で多様な人が出会うことで、友達同士ケンカしたり、話し合ったり、人間関係を形成していくと思うんですよ。その形成が奪われ、 大人になってから空気がよめない、人との距離感がつかめないので、たとえ職場で、一般就労できた場合でも、人間関係で苦労していると聞きます。
 それで残念ながら就職できなかった、できても難しいという現状がかなり現実的にあります。
 私は、今はNPO法人生活支援研究会で自営業として働いています。いわゆる介護派遣の事務所で働いているんですが、私は昔、一般就労ということで、就職活動をし たことがありました。
 受付とか、できる仕事に就職するため20社ぐらい回りました。
 そのときに言われたのが、字が書けますか? とか、運転ができますか? 電話対応ができますか? という質問です。全部「できません」となったら、面接以前に落とされます。
 それが障害者の現状なんですよ。かなり苦しい状態に置かれました。
 これが一般企業に障害者が就職できない壁だと思いました。
 そのときに、この介助者の制度があったらよかったんですが、なかったので、どれもできません。
 もう1つの壁としては、介護者がついたとしても、守秘義務のことを言われるんですね。
 介護者がついていたら、ほかの人に影響が出ると働きにくくなるというのです。
 だから介護者付き就労は遠慮してくださいと言われる職場が多いです。
 そこでの壁もあって、なかなか障害者が就労することの厳しさを実感しています。
 私たち障害者の仲間がたくさんいるんですけど、みんな働きたいと言っています。
 働くことというのは生きることだと私は思っていて、すごく活力になると思うんですよ。
 働いて賃金をいただいて、初めて喜びを知る、自分が社会のためになってるんだと感じる。
 それが奪われることで、障害者にとって、僕は私は何しているんだ、社会の役に立っていない気がする、という声を聞きます。
 そうじゃなくて、もっともっと障害者が社会に出ないといけないと思います。学校でもやっぱり、障害者と健常者は分けられているんです。
 社会に出てからも障害者と健常者が分けられるという社会はおかしいと思うんですよ。
 学校から一緒に学び、学校を卒業してから一般の会社で健常者と出会うようにしないと、障害者と健常者が交わる機会が少ないです。
 これが今の日本における、世界における課題だと思います。
 いま、国連はインクルーシブ教育、つまり、ともに学びともに育ちなさいと言ってるんですけど、それはきれい事であって、実際には特別支援学校が中心です。
 昔だったら、ちょっと変わった子がいても、一緒に学んでいたと思うんですよ。
 それも排除している今の時代には、分けられていることによって、もっともっと悪くなっていると思うんです。
 そうじゃなくて、小さいころから障害者と出会っていれば、みんな障害者が怖いとか、わからないということにならないと思うのに、そこから排除されて、就職でも排 除されてしまう。
 障害者と健常者の接点が少なさ過ぎます。これは教育から就労へのつながりの中で大事なことですし、もっともっと障害者が働きたいという声を拾って、少しでもいい から社会との接点を作る必要があります。これが、収入面だけではなく、心理面でも、障害者にとってだけでなく、社会のみんなにとって有効で、ともに育っていくよう な環境下に置かれると思うんです。
 障害者だけが就職できないのはおかしいし、この現状を変えていくために、この制度を、せっかく神戸市がつくってくれた、障害者の特別支援事業をもっと活用して、 介護者をつけて、一般就労できる社会にできるといいと思います。
 最初の出発点は教育で、ともに学べればいいと思っています。
 そういうのを力強く、訴えかけて、みんなで考えていければと思っています。ちょうど時間になったのでこれで終わります。ありがとうございました。
 
栗原/ありがとうございました。
 田中さんと私は、ある法人の虐待防止委員会で一緒に外部委員をしているんですけど、まとまったお話を聞いたのは初めてでした。神戸市でつくった重度障害者の制度 についてもリアルにお話をお聞きできました。教育のあり方については、このあたりは田中裕一さんからも聞きたいと思います。
 このあと、発達障害者の当事者の佐元佑衣さんから10分間、一緒に取り組みをされていた星明さんにも一緒にお願いしたいと思います。
 
佐元/予定外の中での働き方を考えるということで、お話しいたします。
 まず、発達障害の人の生活には、予定外のことがいくつも起こっております。
 そんなとき、行きたい方向にいくにはどうすればいいか、をお題に、実地体験に基づく問題と対処方法を示しながらお話ししたく存じます。
 発達障害の一当事者である私からは、実際の出来事を話すのが、一番お役に立てるのではないかと考えたためです。
 なにしろ学術的な話は、他の登壇者の皆さまがお詳しいので、私の話は事例の1つとしてお役立ていただければ幸いです。
 早速、具体的な話をしてまいります。
 主に働く場面として、私が体験した主な問題がこちらです。
 私が最初に大阪府で勤めたA社では、(業務の)成績以外のことを考えなければならないことと、体調不良が主な問題となりました。発達障害の特徴として、上司や同 僚の皆さま(との関わりや)、生活費のことなど、一人で考えるのが難しいことがありました。
 学生のときと違って、仕事だけしていればいいわけではないと聞いていましたが、そのことを痛感しました。原因はわからないのですが、勤務して2年くらいしてか ら、眠れない、起きられないという睡眠障害にも見舞われました。睡眠薬や引越や通院なども試しましたが、最後には5年の期間満了とともに退職しました。
 気にかけてくださった職場の方、また、紹介してくださったジョブジョイントおおさかの皆さまに良い報告をしたいという気持ちだけでは解決しない問題であったと振 り返っています。
 次に、故郷に戻って就職したB社です。残念なことに、こちらは不適切な職場でした。
 退職の直接的な原因は、雇用保険の届け出の不備でした。私の雇用保険の日数が正しく申請されておらず、あやうく退職後の雇用保険金がもらえなくなる状況が発覚し ました。
 幸い、あとから申請することができたのですが、責任者の上司は、「忙しかったから」「私のせいじゃない」と繰り返し、まっとうな話し合いができませんでした。
 さらに、上司とその上司の間にも、何らかのあつれきがあったようで、話し合いの場に同席してもらうことはできませんでした。
 こういった事情があって、最終的に他の職員に同席してもらい退職の手続きをしました。
 恐ろしいことにこの話には続きがあります。退職から1年後、件の元上司から連絡がありました。要件は、私が就労当時やっていた仕事の資料を送ってほしい、私のあ とに引き継いだ社員に当時の仕事内容を教えてほしいというものでした。
 念のため、そのような法的義務はありません。
 お断りしたところ、私の母に電話をしたり、事情をご存じない他社を通じて依頼をしたりと、間接的に関わろうとし始めました。
 そのあと、兵庫県の労働局や自助グループなど、第三者に事情を相談しつつ、関わりを断つことができました。元上司にどんな事情があったのかは今も存じません。
 B社退職後、雇用保険を受け取っている期間に職業訓練校で学ぶことはできました。一方で、希望していたイラスト制作・デザインの実務経験を一切進むことができな いまま、8年も過ごしてしまったことにも気付きました。
 考えてみると、私の問題は、変化への対応の弱さでした。予定外のことが起きたとき、希望の方向に行けるよう自分の行動を修正すればよかったのですが、その力が弱 く、いたずらに時間を費やしてしまったのです。
 この話をすると、希望職種を変えたら? 元の職場に戻ったら? との意見を頂戴したことがあるのですが、私の場合はどちらも当てはまらないと考えています。
 希望職種よりも社会人経験を積むことを優先した結果、B社を退職し、体調不良を抱えて無職となりました。このうえ希望職種を譲り、次の就職先を探すという個人的 な動機が、私にはなくなっていました。
 元職場であるB社に戻らないのは、先にお伝えした事情のとおりです。
 こうして私は、目標としている希望職種を変えるのではなく、発達障害があっても希望職種に何らかの形で関わる道を選ぶことにしました。
 そうしてようやく退職後のお話です。
 仕事への接し方を変えたところは2点です。働き方と就労支援団体への頼り方です。
 働き方についてですが、改めて自分のできることを確認したところ「体の治療中であることも含め、短時間勤務から始めるのが望ましいこと」「兼業を含めてイラスト 制作・グラフィックデザインに関わる仕事をしたいこと」「B社での経験を踏まえ、会計処理などを自分で学んだりデザイン以外の業務を行ったりするとしても、契約の 上で対等にいたいこと」これらの希望が強くありました。
 これらを踏まえ、今年4月から個人事業主の届け出を出し、業務委託契約の仕事を主に受けることにしました。
 雇用ではございませんので、保険などのメリットは受けられませんが、契約において意見を述べるなど、ある程度、対等な契約を直接結ぶ機会があります。現在、地元 の小規模な看板制作事務所を就労支援団体にご紹介いただき、ともに仕事をしています。アルバイトを雇う余裕はないが、単発でデザイン作成を依頼したい、その会社の ご都合が、私の希望する働き方に当てはまりました。
 次に就労支援団体への頼り方を変えることについてです。
 白状しますと、支援団体にお世話になっている状態から早く卒業したいという気持ちがあり、団体に頼らず暮らしたいと思っていました。
 ただ今回の経験をして、直接の就労支援に限らずとも、日常の様子、現在の様子をゆるやかにお伝えしておくことは、私自身の精神状態の安定にもよいことではないか と自覚いたしました。
 現在、大阪府でのA社就労の際にお世話になったジョブジョイントおおさかの皆さまとは、定期的に連絡をとったり、学びの場について教えていただいたり、就労支援 の期間が過ぎたあとも交流しています。
 現在私は、予定外だらけでも、外的環境の変化があっても問題を解決していくことができると実感しています。
 例えば現在の「雇用でなく業務委託契約」「職場以外の場所で働く方法」も、新型コロナ禍によってリモートワークが一般に広がり実現しやすくなった面は確かにある でしょう。これは私1人の努力ではできませんでした。また、こうした機会を得たときに役立てられる、姿勢や考え方があるとしたら「足元の幸運を育てること」「すね ない、ぐれない、くじけない態度」だと考えています。
 例えば私の故郷で就労支援団体の方を頼ることができたり、社会人経験を積んだりしたおかげで、ある程度の対人能力を身に付けて、今までやってきたことには何らか のメリットがあると考えています。皆さまの中にも、お仕事の豊富な都市部にいることで、ある程度職種を選べるという環境のメリットを受け取りやすい方もいらっしゃ るものと存じます。こうしたささいに思えることも含めて、自分の今の環境のメリットを使って、願いをかなえる方に進んでいけたらと思います。
 もう1つ、3つの合い言葉ですが、こちらについてはやはり、心にもない態度をとることや、正しい道を外れること、かなわないからといって諦めたそぶりをすること は、希望する道を遠ざける振る舞いだと痛感しています。周りの方には「いろいろあるけど、この人に関わってよかった」と私は思っていただきたいので、自分の希望を 伝えるためにも、素直にいるための工夫、願いを叶える工夫をしたいと考えております。
 これらの工夫を行動に移せるよう、もし発達障害の当事者の方がいらしたら、まずは十分な睡眠時間を確保することをお勧めしたい次第です。睡眠不足でよい判断をす ることは難しいものですから。
 それではご清聴ありがとうございました。
 皆さまのご多幸をお祈りいたします。
 
星明/僕からも一言というほどでもないんですが、佐元さんがジョブジョイントおおさかを利用されていたことについて一言だけ。
 佐元さんのお話は、「予定外」をキーワードにご発言されていましたが、私どもでは、発達障害の方の就労支援を主だってやっています。
 社会に出るとき、出てから、その先のことが、なかなか想像がつかない。発達障害の方だと見えないことが想像できないということが、障害の特性で多いと言われてい ます。佐元さんは、働いてから5年ほどお勤めでしたが、その中でいろいろなことがありまして、その都度、うちの職員と一緒に職場近くで面談したり、僕らの事業所で 面談しました。
 その都度職場に少しお願い事をしたり、環境調整などをしました。
 職場でも予定外のことが起きるし、その先のことをなかなか想像しにくいこともあります。それによって佐元さんもいろいろ頑張っておられてたんですが、その中で、 今の道に少しずつ進んでいかれている感じかなと思います。
 今日午前中に自己理解の話も出ていましたが、佐元さん自身が経験される中で、ちょっとずつ自分の道を見つけておられるような形で、その経験を僕らのジョブジョイ ントおおさかのホームページのブログに月に2回執筆していただいて、800字くらいの見やすいものですが、ご自身の経験を当事者の方に読んでもらえるよう発信くだ さっています。熱心にやっていただいているので、僕らもいわゆる福祉制度でいうと定着支援を、一緒に何か取り組みたいなと思ってブログを書いてもらっています。発 表の中で何か届くものがあればいいなと思っています。
 
栗原/佐元さんのお話で印象に残ったのは、複数の支援機関に頼ることに恥じないということです。
 恥じないどころか、もっとそれが普遍化するといいなと思います。つまり1か所でしか関わりがないと、そことの固定した力関係が生まれてしまいます。
 そのうちの1つであるジョブジョイントさんの星明さんからも活動の紹介をしていただきましたが、これもとても示唆に富む内容でした。
 ブログを書いているということですが、当事者でしかできない支援、関わり、このあたり午前中のご質問にも関わってくるかなと思いますが、ぜひブログを拝見したい と思いました。ありがとうございます。
 次は全国就労移行支援事業所連絡協議会会長の酒井大介さんです。
 就労支援について、今、お二人の立場からのご発言をいただきましたが、支援機関からということで、10分で恐縮ですが、よろしくお願いします。
 
酒井/全国就労移行支援事業所連絡協議会の酒井です。
 よろしくお願いします。
 私からは、就労移行支援事業という福祉サービスの立場から教育との連携、あるいは教育機関からの進路について考える、大きな論点ですが、そういう話題提供をさせ ていただきます。
 まず最初に、簡単に、私たちのことを説明させてください。
 今から12年程前に立ち上がった協議会です。当時、民主党政権のもと、障害者自立支援法を見直すタイミングでした。
 その時に、もっと就労移行支援の必要性を世の中に訴えていこうということで、全国の仲間と集まって協議会を作りました。
 そこから10年ほど活動し、2年ほど前に法人格を取得し、現在も活動をしております。
 最初に、就労移行支援の最近のトレンドというか状況について、詳しい方もいらっしゃると思いますが、皆さんと一緒に確認したいと思います。
 2006年10月から就労移行支援事業は誕生したわけです。
 そこから順調に対象者も増え、全国で運営されています。大きなターニングポイントは、2014年にあったなと思います。
 それまで、対象者は知的障害がある方がメインでしたが、この年から精神障害のある方の利用が増えました。
 以降、一番の対象者が精神障害で、このなかに発達障害者もいるのですが、直近でいうと2023年には精神障害のある方が25,000人に対して、知的障害のある 方は8,300人ということで、知的障害のある方の利用がどんどん減っている状況です。
 それに伴って運営母体も大きな変化があります。
 2017年の事業所全体数は3,400、最近では、3,000か所を切っていて、実態は休止中も含めるともっと減っている状況です。
 そのなかで運営母体も、社会福祉法人やNPO法人が減り、株式会社が年々増えていっている、そんなトレンドにあるかと思います。
 対象者の変化とともに運営母体も減っています。
 全国でみると、全体数でいうと、事業所が減っています。
 グラフが見にくいかもしれませんが、都市部は若干、増加傾向にあるけれど、地方は減少傾向にあるというところです。
 さまざまなコンセプトとプログラムということで、最近はこういう状況のなかでも、さまざまなプログラムを提供する事業所がたくさんあります。
 昔は知的障害が対象で、生産活動や施設外就労を中心としていましたが、最近はプログラマーとか、専門職を追求する、そんな移行支援もたくさん出てきて、一見、選 択肢が増えるのはすばらしいことですけど、そこに質をどう担保するかが、現在の課題だと思います。
 このように就労移行支援事業も変わっていくという中で、教育機関で考えると、私たちは、普段は知的障害のある方を中心にやっているんですけど、主な連携先という のは、特別支援学校です。
 その状況も、最近、潮目が変わってきていると感じます。
 これは総務省のホームページに出ていた学校基本調査です。
 そこの数字をまとめてみると、高等部の卒業生はこの3~4年で減っています。
 もう一つが、進路で、就職する方が、この3~4年で約1,000人減っている。率で見ると、就職率が30%切っている状況にあります。潮目が変わってきていま す。
 それは、教育関係者からこのあと聞いてみたいところですが、中学卒業後の多様な進路とか、無理させない風潮であるとか、進路指導の進め方とか、いろんな要因が あってだと思いますが、卒業生が減っているのはそうですが、就職者数がその割合を超えて減っているというのが気になるところです。
 話題提供の結びに、ということで、昨日から就労支援機関側からの課題が挙げられています。
 同じようなことを記載しています。
 働く障害者も、デジタル化の影響を受けていて、メリットもあれば、デメリット…というか、そこで仕事がなくなっていくとか、そういうこともあるんだと思います。
 様々な課題が挙げられると思います。
 就労移行支援の状況も変わり、教育機関も潮目が変わってきているなかで、今後、連携をどのようにとらえるべきでしょうか。
 一つには2000年以降、キャリア教育というのが推進されてきたわけですが、それが我々就労支援を考える立場にとって、どのような影響をもたらしたのか。田中先 生をはじめ教育関係者の皆さんに教えてもらいたいというか、意見交換できればと思います。
 多様な進路というのは先ほど申し上げたところ、来年から新しく就労選択支援事業が創設されます。
 これよりも教育機関との連携が必要な気がしています。
 真の連携を図るには何が必要なのか、改めて自分自身も考える時間にしたいと思います。
 これで私の話は終わります。ありがとうございました。
 
栗原/酒井大介さんからも、このテーマの本題である教育との連携について、特別支援学校からの就職者数が減っているということ、あるいはキャリア教育は就労実績に どんな効果があるのかといったお話をいただきました。
 ありがとうございます。
 では続いて、医療、医師の立場から、兵庫県立リハビリテーション中央病院病院長の大串幹さんに、これも10分でお願いします。
 
大串/ただいまご紹介いただいたように病院長をしておりますが、以前は一般病院のリハビリテーション医師として勤務していました。
 その経験を含めてお話をします。
 今、総合リハビリテーションセンターの中の病院におりますが、8年前に勤務し始めたとき病院だけでなく、社会的リハビリテーションとしての自立生活訓練セン ター、障害者スポーツ交流センター支援や、兵庫県の地域リハビリテーション支援センター長として勤めていますが、その経験は私にとって新鮮で総合リハとしての関わ り方とは何かが実践に繋がってきました。それまではどんな関わり方をしていたかをお話しできればと思います。
 そもそもリハビリテーションはチームアプローチなので、医師だけではなく多職種が関わっています。なぜチームでやるかというと、それぞれの専門性があるからで す。
 チームアプローチの前提は協働作業です。
 さらに共通の目的を持って進むことが重要です。
 リハビリテーション科医は何をしているか、皆さん、リハビリテーションのお医者さんと関わることが多いと思いますが、リハビリテーション科の医師は他の診療科の 医師とはちょっと違います。
 脳性マヒの方で長く障害が続く状態であっても、リハビリテーションを続ける意味は、身体の状態をできるだけ良い状態に維持して、社会で主体性を持った生活を支え ることにあります。今の課題としては、「障害があっても成長にともない変わっていく、だから小学校に上がるまでは機能訓練をしてもいいが、就学したら学校生活の中 でやってね」みたいに、リハビリテーションの現場から離されてしまったり、成人後のシステムにうまくつながらなかったりと、支援が途切れ途切れになってしまうこと があります。
 身体への直接的なリハビリテーションはもちろん、それ以外の様々な問題を患者さんや家族と一緒にどのように解決するかが重要かと考えています。
 特に小児においては、障害の原因となる対象疾患はさまざまで、時に命に関わるものも多いです。疾患による特異的なところで予後は変えられないことも多いのです が、そうではあってもご家族も解決には関わってもらわなければいけません。場所はリハビリテーションだけでなく、NICUとかGCUとかでも関わります。
 リハビリテーション処方は、薬、手術ではなく、人や道具を使うところが特徴なので、物を使うということは、形在る物は必ず壊れることを考えると、ずっと継続的な 支援が必要です。
 フェーズも新生児、医療の時期だけではなく、就学・卒業・社会参加に向けて、さらには介助期、終末期までみる、進行性の疾患ならなおさら、そこまで考える必要が あります。
 救命救急の機能維持も大事ですが、リハビリテーションにおいては家族支援、さまざまな補装具、生活する点で、自律性や主体性を大切にして、いかに涵養するか。就 労・就学の準備は、その方達に融通性を保持できるかも大事ですので、丁寧な説明とサポートが必要になります。座位保持装置などはその代表で、私自身調整を勉強しな がら提供していましたし、立って動くことが大事なら、立って動く移動機器も作りました。
 装具はなるべくかっこいいものをつくると、長く使ってもらえる。小学校なら歩けるからいいじゃないかと、装具をはかなくなる子もいますが、好きな装具をつくり、 ちゃんと歩いてもらうことが大事です。
 リハビリテーション科での私の小児リハの経験からは、本人・家族とじっくり話すことが大事であるということです。
 あとは書類作成です。
 書類作成は、積極的に受けることにしています。それは状態をしっかり見られるからです。
 ここをチャンスと考えて、必要な支援をしっかり考えます。
 特に、痙縮治療とか補装具の更新は私達がアドバイスして、よりよいものにすることは大事な視点だと思っています。
 やりたいことは何か。大人になった自分のことをイメージする。小さな成功体験を積み重ねることで、やりたいことを諦めない、方法を変えることで、やりたいことが できるようにと、次につながる支援を心掛けています。
 就労に関して、スライドがありますので、見ていただきたいと思います。
 先ほど、就労のお世話をしてくれるからといって、インクルーシブの流れになっているにもかかわらず、支援学級を選ぶことがあるということです。実は私、支援学級 のキャンプに参加しています。
 学校で最近は軽度の障害の方のご両親が支援学校を選ぶ傾向になっていると聞きました。あきらめがあるのでしょうか。
 これまでの経験から、実際にはどんな成功体験があるかというと、重度の障害のある方が地方から都市部に出てきて、(障害)サービスを利用して、ひとり暮らしをし て、在宅就労などで独立している方もたくさんいます。
 また支援学校高等部から地元のスーパーにお母さんを助けたいと一般就労で頑張ってる男の子もいます。
 中途障害の方で、アスリート就労された方もいます。
 脳出血後、軽度のめまいが残存して、復職したものの、高次脳機能障害、職種のミスマッチが起きて、再訓練が必要になったが、今は再就職して3年継続されている方 もいます。
 ジストニアで退職しようと考えましたが、長期にかかりながら、お薬を使わずに克服された方もいます。
 スライドをご覧ください。
 このような形で、最初は自助具からいきましたが、最後は自立して復職して、字も書けた方もいます。
 社会に出ること、働くこと、自己表現、成功体験が様々な可能性を持つウェルビーイングにつながっていると思います。
 高次脳機能障害や知的障害にはジョブコーチがありましたが、我々は肢体、発達も含め、就労として何を考えるかとして、学校生活を個別支援するプログラムに当セン ターから、私たちやリハビリテーション専門職がいっています。
 このような職業準備性ピラミッドは5つに分かれますが、上の方が頂点にあるわけではなく、一番大事なことは基本となる身体のマネジメント、コンディショニングと 耐久力を私たちで一緒につくっていくかです。
 装具の装着状態やさまざまな身体状況を医師が判断し、その都度アドバイスできる支援体制が必要だと思います。具体的で分かりやすい指導項目、例えば、定期的に ちゃんと病院に来て、装具をつけて、ストレッチをしてとか、お薬、忘れないでくださいなど、分かりやすい方法を考えて説明していく支援の在り方が大事です。
 特別支援学校の卒業後の進路決定では、何もしないで諦めることをよしとしないことです。
 普通就労においては、特別支援学校卒業の方は、「特別支援学校の高等部卒業」となりますが、今は障害者雇用が一般雇用として認められて、できることがあれば一般 就労できないわけではないので、やりたいことができるかもということを当事者の方にも知ってもらって諦めないでほしいと思っています。
 最後にパラスポーツについてお話します。
 社会参加としてのパラスポーツは車いすマラソンをはじめ、市民イベントなど、子どものときから関わってもらっています。動機づけや成功体験の、その後はアスリー ト就労も推進しています。
 ただ、いつイベントがあるのか、参加できるのかなど、エントリー方法を調べたり、なにより話題を振って、まずはイベントに参加してもらうことで、参加した結果を 周囲の方と本人に感想を聞いて、あとは、自分で進めていくことを応援しているところです。
 筋ジスの方にeスポーツをしていただいています。これは熊本で行っているのですが、eスポーツの大会で結構よい成績を収めたり、ときに優勝したりされるんです ね。
 そうするとパソコンがよく使えるということで、そのあと在宅就労につながった方もいます。就労に必要な精神的な持久力を手に入れているわけです。
 障害者の健康というところで、医師は障害者の方が必要とする保健サービスをきちんと受けることができるよう担保する必要があるかと思いますし、リハビリテーショ ンにおいては、その方のニーズと長所をしっかり把握してICFに基づいて分析し、支援していくことがリハビリテーションに関わる医師に求められています。また、研 修の充実です。本日のような素晴らしい学会、研修会はもっと開いてもらって、総合リハの考え方をわかっていただく必要があると思います。
 国が進めている医療的ケアが必要な子へのサポートはもちろん重要ですが、その周りに教育やリハビリテーション・ケアが一体となって支援していくことが必要かと思 います。
 最後にまとめますと、私たちは、生まれたときからのライフステージに寄り添って、就学に向けて、障害者就労支援、生活困窮者支援もあわせて、高齢者支援まで関わ る必要があります。
 なかなか難しい、小児科の先生にしかできないこともありますし、全て私が引き受けるわけではありませんが、医学的なスキルをもって障害のあるかたがどこにつなげ ば、安心して生活できるのかをこれからも考えたいと思います。
 参加する、活動する、生きがいを持つ、人生を自分らしく生きられるといいと思います。
 これからもどうぞよろしくお願いいたします。
 
栗原/ありがとうございます。
 「長年にわたる」とありますが、ライフスタイルに応じて寄り添うというのが、私は、十分に理解できていなくて、逆に、そうなんだと、医療の関わりが長期にいろん な局面であることを改めて教えていただきました。ありがとうございます。
 次は企業の立場ということで、大和ハウス工業株式会社 本社経営管理本部 Well-being推進室 上席主任の黒木均さんからお願いします。
 
黒木/皆さまこんにちは。
 大和ハウス工業の黒木です。
 今日は、就労が一つのテーマで、我々の企業は働く、活躍するフィールド側ですよね。
 リアルな話もさせていただきつつ。
 ぜひ皆さまも、いろんな家族の方、当事者の方、福祉の方、いろんな方がいらっしゃいますが、ご自身の同僚としていろんな障害のある方をお迎えする、一緒に働くと まず想定していただいて、我々大和ハウスの考え方をひとつ聞いていただければと思っています。
 私が所属する部署の名前が長くて、DE&I推進グループ。
 障害だけではなく、あくまでいろんな違いのある人の働きやすさを向上・推進させていきましょうという取り組みの一環として、障害のあるかた、人材の働きやすさの 向上・推進があるという考え方です。
 ですので、たとえば合理的配慮の理解とか、自己理解とか、福祉や障害領域に寄った言葉にはなってはおりますけれども、自己理解にしても自分が活躍するために必要 なファクトを洗い出す合理的配慮も、発想としては全ての人に必要なことです。
 ですので、大事な概念ですし、この場が福祉や障害領域だけの話や意義ではない、すべての人にとっての過ごしやすさ、生きやすさ、働きやすさ、活躍のしやすさが向 上するといいな、と思いながら、大和ハウスは思いを込めて取り組んでいます。
 合理的配慮も雇用の観点からまずお話しします。
 合理的配慮ってすごくセンスのある言葉だなと思う一方で、我々企業は、目の前にあるさまざまな障害特性のある人材とともに、限られた時間、お金、体力、人員、そ ういったもののなかで多様性の尊重と給料分、きっちり働くことを保障していかないといけない。
 じゃないと利益が出ません。
 利益が出ないと従業員に分配して生活を守ることができません。
 これがまず1つの現実ですよね。
 職場における合理的配慮とは何なのか。
 合理的配慮の概念は、昔から実はアメリカにはあって、それでもってきている概念なのです。
 なので、アメリカがすごいとか英語がいいという話ではなくて、あくまで語源は英語なので、
 英語で表現すると私はシンプルに意味がわかると思うんです。
 Reasonable=合理的ですから、安く無駄なく負担なく、という意味ですよね。ハートフルな意味
 はないのです。
 Accommodation=調整とか適用とか、工夫みたいなものなんです。
 働く場所、例えば大和ハウス、弊社のなかの目的は、働くことですよね。働く上で障害に起因する困りがある場合は建設的な対話を本人とすることで、できる限り活躍 できる方法を工夫、調整していきましょうという考え方です。
 障害であることを理由に、頼まれていないことまで手厚くやるのがいいかというと、そうとは限りません。
 本当の同僚としての尊重はどういうことでしょう。
 失敗したら自分でリカバリーできるように、成功したら評価と給料が上がるように、まっとうな関わりをすることであり、それだけだとどうしても障害特性が困りに なってしまう場合に、建設的対話の元に、合理的な調整をするということです。
 保護をするためではなく。
 その共通認識を入口の段階から、管理者、同僚、本人、私のような立場も含めて、この場所の目的は何、職場でやる合理的配慮は、誰の何のためにするんですかと、シ ンプルな問いとして、持っておかなくてはいけません。
 これまでの経験のなかでも、誤解を恐れずに申し上げますと、支援をされるために、ここに来るわけではありませんよね? という確認は、障害のある当事者社員と一 緒にさせていただいています。
 この言葉だけを聞くと、大和ハウスや黒木はとてもきついやり方をしているのではと思うかもしれませんが、そういうことではなくて、あなたのことを教えて、あなた にお任せするお仕事をするうえで、何か困りごとがあるなら、大和ハウスと一緒に調整しましょうよ、という考え方と姿勢です。障害のある人材だけに必要ですか? そ んなはずないんです。
 もっと申し上げれば、いろんな会社様のお話を聞くと、障害者雇用をやっていかなければと意欲が高い人はいるんです。
 ですけど、障害のある人に業務を切り出さなあかんという感覚なんですよ。それはそれで間違ってはないのですが、私達大和ハウスはそこにとどまりません。障害のあ る人ができる仕事を社内で探すのでなく、社内にあるお仕事を障害のある人もない人も許されるクオリティでできるような環境を会社として作っていくというのが、田中 さんもおっしゃっていましたけど、当たり前に好きな場所で生活したり、学んだり働いたりすることがかなうんだと思うんです。
 繰り返しですが、大和ハウスがしたいのは、その場所で障害のある人専用に切り出したお仕事をやることではなくて、今ある大和ハウスの中にある大小関わらず全部大 事な仕事です。それを障害のある人もない人も同じ仕事をする。それが使命と思っています。通勤負担の軽減を、勤務形態とかテレワークを使ったものでやるとか、施設 のアクセシビリティの向上をするとか、視聴覚の情報保障をフルにするとか。感覚過敏の方には刺激量の調整が苦手な方もいらっしゃいますので、視聴覚の刺激量を自分 で自由にできるようにしたり。
 服装であるとか、感覚過敏の方もいますよね。
 服装や座席などの調整や工夫をする。
 自分でできるような自由度を持つとか、業務の優先順位を可視化する、そのアシストをするとか、業務手順書の可視化、マニュアルをふんだんに保障して、口だけで 「やっといてね」ということを可能な限り減らしていく。
 時間の可視化。定時で休憩をとる工夫をするとか。
 担当者を決めるという話も働きやすくなる方法の1つですが、レポートライン。困ったらこの人に伝えてとか、この案件は、Aさん、Bさん、Cさんの順にと、伝えて おくとか、評価の可視化もすごく大事です。できなかったことはできなかった、できたことはできたこと、両方を伝えるべきです。
 人には本当のことを知りたい、そして本当のことを知ると安心するという根源的な特徴があります。
 ですから障害があるから仕方ないではなく、十分な合理的配慮の話し合いを提供した上で、業務上できたこと、課題となること、それを評価で可視化したうえでフィー ドバックすることで、内容としては耳が痛い内容もありながら、本人は本当のことを知って、翌年度以降も意欲を持って働いてもらっている例が非常に多いです。
 組織外との折衝や電話応対の調整をしたり、そもそも多様な人材の評価を一本のものさしですることが困難な場合があると私は思うんですね。
 また、評価のものさしはいくつかあっていいと思うんです。
 場合によって、特性によって業務範囲・量の調整をするとか、合理的配慮の検討をするような場をきちんと定期的に持つ。
 人が人に対して行うことですから、当然変化しうるものです。
 ですので、まとめとしては、個人の特性は障害に限らず尊重されるものです。
 企業はその違いをデフォルトとして多様な人の多様な特性を才能として尊重し、それを事業活動とWell-beingにつなげることが責任だと思っています。ぜひ これからも大和ハウスにお力添えをいただきたいところでございます。以上です。
 
栗原/ありがとうございます。
 黒木さんからは合理的配慮の語源をおさえていただいたのは、大事で、合理的配慮というと、思いやりでしょとか、誤解がすごくあります。
 そうではないというあたりをしっかりおさえていただいた点は、大変ありがたく、基礎的な知識の共有になったと思います。
 それでは最初の流れの最後で恐縮でございますが、今までの話も踏まえて、総括的に15分間、神戸女子大学教授の田中裕一さんから、どうぞよろしくお願いします。
 
田中裕/6人目だとすごくいっぱい宿題があって、悩むところもありますが。
 今日の私からの話題提供は、基本的には教育との連携をどうするかについて考えるために、教育の連携の考え方の現状の部分を話ができればと思っています。
 内容はこんな感じですが、昨日から参加していまして、自分でこのことを話すと決めて持って来たのはいいんですが、1つ思うのは、ここに特別支援教育と書いてあり ますが、こう書いてある時点で今回の研究大会の考えている対象の範囲とは違うという認識をしています。
 何かというと、特別支援教育というのは日本でいうと障害のある方、もしくはその可能性のある方を対象にしています。
 そうじゃなくて、学校にいる学びや生活も含めて困難のある子どもがいたとき、障害の有無にかかわらず、しっかり関係機関と連携してやりましょうよと、日本で言う 特別支援教育の対象よりも広くするという考え方をとらないといけないんだろうなというのが結論というか、1つの考え方なんだろうなと思っています。今日は今から、 特別支援教育の対象の子どもの連携の現状についてお話ししたいと思っています。
 今、私の仕事は神戸女子大学とご紹介いただきましたが、7回退職願を書いて8個目の仕事をしています。
 その仕事の一つの文科省で勤務していたときに、発達障害の子どもの教育を専門にしていましたが、通常の学級にいる子どもの連携、関係機関との調整をどうするかと いう法令作りにかかわっていました。
 ですので、今、動いている発達障害がらみの連携については、私が何かしらかんでいると思います。
 今回は、大きく3つのテーマでお話しします。
 1つ目は、特別支援教育に制度が変わってから対象が拡大されたという話です。
 拡大ということで、平成19年、2007年に特別支援教育がスタートしたときに、特別な支援が必要な子がいる学校は全部でやりましょうということで、今まで特殊 教育は特別支援学校だけだったのが、小中学校、高校、幼稚園もそうですが、障害のある子どもがいたらちゃんとやりましょうという話です。いたらという話ですが、対 象者が増えているということはどの学校にもいますよね、つまり、いるところではやりましょうと言っていますが、基本、幼保小・中・高、どこでもやりましょうという のが基本的な今の考え方です。
 ということは関係機関と連携しなければいけない子どもたちはずっとずっと増えていると。
 その中で平成19年度から特別支援教育が制度としてスタートして発達障害まで含まれ幅が広くなって対象人数が増えました。
 その際に文科省から出された「特別支援教育の推進について」という通知に「厚生労働省関係機関等との連携」という項目があります。厚生労働省関係機関等ですか ら、厚生労働省だけでいっているわけではないんですね。医療関係とかも含めて、しっかりと連携しましょうと、平成19年に対象が拡大しても関係ないですよ、やりま すよというのがおおもとのスタートになります。
 改めていいますが、特別支援学校では連携している可能性はありますが、幼・保・小・中・高、必要な人がいたら、平成19年度からスタートしているということなん です。
 これをしゃべると、いやいやうちの近くの学校はやってませんよという場合はあるかもしれませんが、ルール上、やらなきゃいけないよ、という話になっているという のは、ご理解いただけたらと思います。
 連携というのが、タテとヨコ、両方あります。
 学校教育における合理的配慮のことは話しませんが、ただ、教育における合理的配慮。
 労働における合理的配慮は、対象としている法律が違いますが、教育においては「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推 進」という報告書が考え方になります。
 教育で気になることがあれば、ここを見てください。
 ここに定義があるわけです。
 こういう考え方で教育はやりましょうということです。
 法律の話だと、2024年4月1日からは、私立も合理的配慮を提供しなきゃいけないとなりました。私立も国公立も関係なく合理的配慮をしないといけないという時 代が今はきていますよ、という話です。
 ぜひ、こうなっていることを踏まえてもらって、やらなきゃいけない、というのが前提です。
 ヨコの連携をちゃんとやろうというとき、個別の教育支援計画を作ってやりましょうよと。
 つまりタスキやバトンを整えてくださいという話があります。
 法律的には平成30年8月に、これも私は関わりましたが、個別の教育支援計画を作るときには、児童生徒の意向を踏まえてください、保護者の意向を踏まえてくださ い。
 関係機関と連携していたら、連携してくださいと。
 がんばってください、ではなく、「ねばならない」とあるんです。やらないといけないんです。
 このルールを、なかなか学校関係者は「え、ほんと?」という方もいるし、皆さんの中でも初めて聞いた、という人もいるかもしれませんが、個別の教育支援計画を作 るとき、特別支援学校や特別支援学級、通級の子達がいたときに、必ず本人、保護者の意向を踏まえてください。
 これは今日、昨日の議論にバッチリ当てはまると思います。
 さらにいえば関係機関との連携は「ねばならない」です。
 さらに未来を見たとき、今度の学習指導要領、学校のルールブックのことですが、特別支援教育の方向性は、「関係機関と連携強化」とある。
 連携しましょう、ではなく、連携強化です。
 今、連携の基礎があって、令和9~10年ごろの改訂になるかと思います。
 そのころには、今までのやりかたではなく、もっと効率的に、もっとより強く、もっと学校と連携機関先や就労機関先と、もっとうまくやるようにと方向性として示さ れています。
 今は基礎作り、次のステージは連携強化、という状況です。
 タテの連携といったときに、また平成19年の「特別支援教育の推進について」という通知に戻ります。ちゃんと就労も含め、学校間も連携しましょうと言われていま す。
 そのなかで、共有・引継ぎの推進ということで、この「発達障害者支援に関する行政評価・監視の結果(勧告)に基づく対応について」という勧告は国連の勧告ではな く、発達障害のことについて見直しを国が行ったときに、その当時、厚生労働省と文科省に総務省から勧告があったんです。
 国の中でどうするかというときに、ちゃんと引き継ぎをしなさいと。
 合理的配慮でも、プロセス図を文部科学省が作っていますが、一番下に、引継ぎなさいよ、と、絶対とは書いていませんが、プロセスとして合理的配慮は引き継がない と話にならないと書かれているんです。
 就労の方でいうと、「障害者の雇用を支える連携体制の構築・強化について」という通知があり、雇用先とは連携しなさいと言われています。厚生労働省も文科省も 言っている、という状況です。
 最後に、連携の現状と課題です。
 本当はもっとあるんですが、特別支援教育がスタートして、障害者雇用が増えているのは間違いなく、確かに成果はある、ただ課題としては、一つは高校です。
 中学校で就職する子はほとんどいませんので、多くの場合は、高校、大学、特別支援学校が就労機関との連携の中心となりますが、高校が、企業や移行関連機関とのつ ながりがまだできていないです。
 特別支援学校においても、発達障害の子の就職とか、重度、重複の方の就労をどのようにしていくのか。さらにそのフォローアップも課題です。
 特別支援学校の高等部を卒業してから、3年間の就労継続は高校生より圧倒的に高いし、精神障害の方の1年で半分という話もありましたが、それよりは高いんです が、2割、3割は辞めているわけです。
 そのなかでどうフォローアップしていくのか、という状況があります。こういうのが連携の課題です。
 最後、国ではなく私の考えです。
 「Nothing About Us Without Us」というこの言葉抜きで教育は考えられません。
 「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という訳は私が勝手につけていますが、これを意識して学校教育でやっていくことが一番大事になっていきます。
 例えば、自己選択、自己決定。学校で自立活動といって、障害のあるかたに対して実施する教育の領域があります。詳しくは説明する時間がありませんが、自己選択、 自己決定について書かれています。
 さらにいえば、助けを求めるということも、ちゃんとできるようにしてくださいと書いてあります。
 私は、教育がその辺りを踏まえてやれば、「私はこうしてほしい」「困っています、助けてください」ということを教育の段階でしっかり身につけられるのではない か、と考えている人間です。
 話題提供者なので問題提起する必要はないんですが、しっかり学校がこういうことを意識して実践できているかを問わないと、障害のある人の将来にしんどいことが起 きるのではないか、今回のテーマに合わない状況が起きるのではないかと思います。
 学校現場は今でも頑張っています、全国あちこち行くんですが、頑張っている学校は山ほどあります。
 だけれども、まだまだ上手くいっていないということも承知しています。
 学校がやっていることを周りが支えたり、次のステージにつないでいくということに力添えしていただけたら、もっとうまくいくと思います。
 今日いろいろ私に聞きたいことがもしあれば、答えられる範囲で答えたいと思います。
 ありがとうございました。
 
栗原/総括的かつ時間の範囲内で話していただき、ありがとうございます。
 実はシンポジウム2は今日に至るまでメールでの意見交換をかなり盛り上がって行ってきました。
 その中で私が学校と企業や就労支援機関と連携ができてないんじゃないかなとつぶやきましたところ、田中裕一さんから、栗原さん、ちゃんと仕組みがあるんですよと 教えていただきました。
 でも、仕組みがあっても、それがなぜうまくいってないんだろうと、議論が深まってきたんです。そこが、これからの後半の議論にもつながるかと思います。
 後半は、星明さんの進行でディスカッション、指定発言者、会場とのやりとりに移ります。
 
星明/後半の、ディスカッションを進めていきたいと思います。
 6人の皆さんのご発表で10分ずつで、皆さん、時間をきっちり守っていただいたこともあって、予定のタイムスケジュールよりも早めに進められているので、シンポ ジウムというか、ディスカッションの時間を充実したものにしたいと思います。
 本当は6人の皆さんの話を深掘りしたいと思いますが、一旦テーマに沿って話をしまして、その後に話の中で膨らんでくるところを深掘りする感じです。
 ひとまず、41ページにありますテーマを、キーワード、「引き継ぎ」と「合理的配慮」としているので、最初に「引き継ぎ」について深めていきます。田中先生の話 に「連携」とありまして、教育から福祉ということなので、障害のある方が移られるとき、いろいろな情報を引き継ぎされていることは十分にあると思います。
 ここでは「アセスメント」という言葉で書いてありますが、引き継ぎについてどんな課題があるか、少し考えていく時間にできたらと思います。
 まず、田中順子さん、佐元佑衣さん、当事者の方から感じておられることからお聞きしたいと思います。
 田中順子さん、教育から就労への引き継ぎについて、どのような課題があるかについてお願いします。
 
田中順/教育から就労の引き継ぎに関して言うと、まず、教育のところの引き継ぎに関して、前の登壇者の方が言われていたかと思うんですが、普通学校に入るか、特別 支援学校に入るかというときに、いろいろな提示があります。このような感じで入ると合理的配慮がありますよという提示はあるんですが、現実問題は、それに沿ってい ないことが多いんです。
 「支援もあります」といいながら、現実的には親が送迎しないと行けないとか、合理的配慮があります、といいながら、学校の中に入ると、とたんにトイレ介助を誰が するの? というのが実情です。
 全く引き継ぎがなされていない。ゆえに障害者が特別支援学校に行かざるをえないのです。
 数値を見ると、障害者とか、昔に比べたら、ちょっと変わったような方が、やっぱり普通学校に行けていません。引き継ぎできていないと思います。
 もう一つが就労に関していうと、私は普通学校に行っていましたが、学校が終わったときに、全然紹介がなかったんですね。ここが障害者が行ける就労の場所ですよ、 という情報を、先生が持っていなかったんです。自分が探さなければならないのです。
 特別支援学校に関しても、就職先に関して情報を持っていたとしても、行ってみたらダメと言われるのです。
 ゆえに障害者がどこに行っているのかというと、やっぱり生活介護か作業所、それか行けても就労Bです。
 そのような感じで、特に介護の必要な重度の身体障害者をはじめ、就職は難しい状況があると、私は感じています。
 そういうふうに引き継ぎがなされていないのが課題だと思っています。
 
星明/佐元さん、続けてお願いします。
 
佐元/恐れいります。
 教育から就労への引き継ぎというお題をいただきました。
 私が一番困難や問題を感じたのは、仕事をするに当たって、学校にいたときと比べるとやることが一気に増えたことでした。
 発表の中でも話しましたが、私は、お仕事を始めるときに大阪で1人暮らしを始めました。
 もちろん学生のときも1人で過ごしておりましたし、自分のやることは自分なりにできるものだと考えていたのですが、人間関係が変わったこと、環境が変わったこと が大きかったですね。
 学校のときは自分の成績を上げるために課題に向きあっていればよかったのですが、お仕事となると、さも当たり前のように、他の方のお仕事の様子を見ながら自分の 仕事を調節して、一緒に1つの成果を上げることが求められていることを、途中から理解いたしました。これは自分が想像していた以上に、人の様子を見て、自分の調節 をして、なおかつ、自分のパフォーマンスを発揮できるように、プライベートも含めて調節していくことを求められていると思って、そのことに気づいてとても恐ろしい 思いをしました。
 発達障害の人に特有の困りごとですが、ストレスにさらされたとき、あまり意味のないこだわりにものすごく固執してしまうことがあります。家の鍵をしめたか不安に なって何度も確かめたり、手を何度も洗ってしまうことはよく知られている状態の1つですが、そのような謎のこだわりがストレスにより増えてしまい、自分でも何をし ているのかわからなくなってしまったことがありました。
 これらのことを振り返りますと、学生のときにできていたと思わずに、もっと周りの人に意見を聞いて、衣食住のいろいろなことをやっておけばよかったです。
 それが難しいのなら、グループホームや実家など、身近な人に頼ることも含めて、生活基盤が難しいことをお伝えしてサポートを得る方がいいのかもしれないです。
 きっと多くの方がお考え以上に、発達障害の人が、働くことと生活基盤を整えることを一緒に進めることは、結構手間のことのように感じています。
 
星明/田中順子さんの話だと、引き継ぐ先がないというのが大きなキーワードだったかなと思いますし、結局、就労も自分で探さないといけないのです。
 佐元さんの話ですと、環境が変わって、そこからいろいろ調整ごとが増えて、学校の頃とは違うことを、就職してからとなると、やってから分かったこともあるという のは、当事者の方の感じられることなのかなと、今、聞いていて思いました。
 今度は支援者側として、酒井大介さん、いいでしょうか。
 就労移行支援事業所側での引き継ぎというところで、教育と就労の課題について感じていることはあるでしょうか。
 
酒井/具体的に引き継ぎというのは、私は現場にも入っていないし、昔と今では違うので、分からないですけど、ふだん対象としている層によっても、この見え方という のは、全然違うと思います。
 最近の、移行支援の対象となる層の人たちを見ていると、学校には学校のカリキュラムがあると思うので、限界もあるんだと思いますが、進路に向けていろんなことの 経験と、それに対する評価があって、その上で、進路に対して、しっかり選択肢が本当に与えられているのかと、いろんな場面で感じることがあります。親御さんにも同 様で、もちろん質の問題はあるんだけれども、いろんな選択肢が出てきます。
 福祉事業所もたくさんあるのですが、選択するときにしっかりいろんな経験や客観的な評価、アドバイスがあっての話なのかと思うことが結構あります。
 その辺りもう少し、教育機関と連携しながら、何か構築できないかと思います。
 
星明/ありがとうございます。
 大串先生、いかがですか?
 
大串/小児期から思春期、成人、就労という流れの中では、身体の状態、精神の発達の状態とかが不安定になるときでもありますが、正常発達という言い方は違うかもし れませんが、通常の場合は、なんとか友達づきあいや社会的関りを形成して、追いついていきます。
 障害のある方が、制限された状況のなかに置かれていると、経験値がうまく積めなかったり、うまくサポートが受けられなかったり、人間関係を構築する経験が持てな いと発達が追いついていきません。
 卒業してしまえば、佐元さんがおっしゃったように、すぐに自分で生活できるというのが普通かもしれないけれども、それでもやはりかなりストレスがかかる方もいる と思いますし、ましてや経験値が少ない方が、その方に応じた適切な日常生活のサポートを受けられないと、一層困難さはあるかと思います。
 もう一つは支援の制度の違いが起きます。
 児童福祉法から総合支援法には含まれていますが、成人移行する中で、今まで受けていられたサービスが受けられなくなってしまうということもあるし、医学的にも小 児科医は18歳とか20歳とか16歳までしか見ないといったときに、小児を総合療育センターでみていた方々がそれが出来なくなってしまってどうするか、行き先がな くなって、医学的フォローをどこですればいいかわからないということがあるのかなと思っているわけです。我々リハビリテーション科医が、そういう考えを持って、そ の後の生活のイメージを持って、あらかじめ若いとき、小さいときから活動のなかで育成することが、学校教育と一緒にやれればいいと思います。
 私はリハセンターに来てから、できるかぎり、個別支援の場には参加して医学的な観点から学校教育の先生方と連携するようなことを推進しています。
 まだまだ不十分ではありますが、兵庫県でもそういうことが行われればいいなと思います。私もそういう役割を持っているのかなと思っているので、私の経験を少しで も生かして仕事に繋げていければいいと思っています。
 
星明/先ほどの酒井大介さんの話にもありましたし、大串先生の話にもありましたが、教育の先の就労、その先のことを見据えて、いろんな経験をしながらご本人の変化 を見たり、イメージをしたり、それが先の引き継ぎにつながっていくということがあるかなと思いました。
 黒木さん、いいでしょうか。
 引き継がれる、ということもあるかと思いますが。
 
黒木/いろんな企業の声を私は同じ企業人として聞けるのでチャンスが多いんですね。
 こういった場をせっかくいただいていますので、本音でお話ししたいと思います。
 受け取る情報が、相当、多いなというのが正直あって、多いのが必ずしもダメというわけではないです。
 例えば、私が見たことのある指導計画・支援計画はしっかりした内容のものがあって、割と引き継がれていることも多いといえば多いです。全部ではないですが。
 それを受けて私たちのところに来る情報は、大学や就労移行支援さんからですが、ものすごく多いです。
 多いのは悪くないんですけど、これ会社が受け取っていい情報なのかな、と思うくらいめちゃくちゃ詳細なことが書いてあります。
 そこは心配だなと思うし、本人がこんなにたくさんの機微情報が会社に渡されているよということが分かっているのかなと思うくらいです。Nothing about us without us!だと思うんです。教育の分野であれば、学ぶための合理的配慮がメイントピックになっているべきだと思うし、働く場に渡す情報は働くことに関することがメイントピック であるべきかなと思っています。
 内容のすばらしさもさることながら、本人に、会社にこういう情報を渡すよと言っているのかと、人権的にも心配なことがあります。実際受け取ったもののなかでも、 働くために必要な情報は全体のちょこっとだけだったりして、いやいや、働くための情報が欲しいんですよとか、バランス的にはもうちょっと改善していただければとい うのが正直なところ企業としてはあります。
 企業側も、ちょっとだけけんか腰というか、どれだけ譲るか、そういうトーンから話し合いをする気がしてなんだかもったいないんですね。
 企業側も、どんなことを要求されるんだろうと、必要以上に身構えている気がします。
 ちゃんと個別で話をすると、何でもかんでもくれ、なんて人はいないのです。
 まずは一緒に働いてもらおう。仲間を受け入れるわけだから、働くために何が必要か話してみようよ、と、温かく、心配りに満ちた対話のノンバーバルな関係が作れる といいなと思っています。
 
星明/ありがとうございます。
 確かに、情報が多いと言われたら、うちもめっちゃ情報を出している気がします。
 支援機関にもよるのでしょうが、本人が知っているかどうかというのは非常に重要だと思います。
 最後に田中裕一先生、引き継ぎについてご発言をお願いします。
 
田中裕/「さん」で大丈夫です。
 幼保小連携とか、中高連携とかの会議によく呼ばれますが、必ず同じ事を言っています。
 僕は、3つのことを言うんです。1つは、引き継ぎ先にとってほしい情報になっていますかと。
 つまり渡す側が渡したい情報は書いてありますが、相手方が欲しい情報かどうかというのが大事です。
 引継ぎのための書類のフォーマットを作るときも、相手方がほしい情報が含まれているかということを言っています。それが1つめです。
 2つめが、引き継いだことは、ちゃんと次のステージで生かしてくださいということです。
 企業さんが使える情報は使ったらいいし、ここはちゃうと思ったら使わないこともありなんだけど、そこは引き継ぐ先が工夫してもらったらいいと思います。
 最後が重要で、私は本人・保護者とちゃんと一緒に引継ぎ内容を協議してますかというのが一番です。フォーマットの話ではなくて、そもそもそこが課題かなと思って います。
 特に高校生だとかだと、個別の教育支援計画とかの引き継ぎをどうするか、本人と一緒にやっている学校もありますが、やはりまだまだ圧倒的に少数派です。
 本人・保護者を含めての引き継ぎをどうするかを一緒に考えていくこと抜きにはないのかなと考えています。
 ただ、今、いろいろご発言があったんだけど、それに対して全部コメントできる中身もありますが、それは時間がかかりそうなので、今はやめておきます。
 
星明/引き継ぎの課題みたいなところも話をしてきまして、もう少し深めると課題もありますが、実際に成功事例もいろいろあるんだろうと思います。
 どのように引き継ぐのか、引き継ぎ方もあれば、うまく引き継がれ方もあると思いますが、ここはフリーでいいと思いますが、何か6人の皆さんのところで引き継ぎの ところでうまくいっている成功事例とか、実際の体験で、もしあれば、そこも深められたらどうかと思っています。
 いかがですか?
 テーマは教育と就労ではあるので、そこが一番いいかなと思います。
 田中さん、さっきまだ話したそうな顔をしていたので、もしよかったら、先に話していただいても。
 
田中裕/泥縄のような気がしてきました。
 特別支援学校は、当然現場実習もありますし、引き継ぐ先の人が授業見学に来てくれたり、細かい情報交換ができているところも多いと思います。ただ、高校は悩まし いんです。
 カリキュラムの中に現場実習なんてないんですね。
 その中で今、高校の通級というのがあります。小中学校では通常の学級に在籍しながら、週の何時間か取り出して、障害が原因で生活とか学習で困っていることがあれ ばそれを改善しようという、自立活動という授業があります。それができる場所が通級ですが、高校では平成30年からスタートしています。
 この制度、私が文科省にいたときに作った制度ですが、そこができてからつなぐ事例が増えたんです。
 通級で自分の得意・不得意を話して整理して、それを次につなぐ。
 大学につなぐときもあって、そうやってつなぐ事例があるので、教科の授業の中でつなげる中身って、企業さんに渡せることは少ないと思うんだけど、高校の通級はス タートして、やっと障害に特化したことを高校さんが考えて、つなげる事例が出てきているということを伝えたいと思います。
 兵庫県は通級を実施している高校はむちゃくちゃありますが、大阪はほぼ数えられるほどしかないと思います。
 兵庫県は40何校かあって、県立高校の約3分の1は通級ができるようになっています。高校通級の実施状況は都道府県によってバラバラです。
 
星明/他の方からいかがですか。
 
黒木/ネガティブな発言をさっきしちゃったかもと心配なので。
 いい事例もたくさんあるんですが、本人のご了承をもとに詳細データを企業としてもらうのは何だかんだでありがたいんですよ。ただ、働くうえでどう? というの は、企業の責任ですよ。
 入ってからじゃないとわからないというのがあると思うんです。無責任な意味じゃなくて。
 なので、入って、その会社の中でいくつかの業務をやってもらって、働くために必要なものに限定した様式を企業が持っておいて、大学のキャリアセンターから持って きている詳細なものの中から、うちの会社でもそのままやった方がいいもの、うちの会社では要らないもの、逆に、ここに書いてないけど、うちの会社なら新たにこれが 要る、大きく分けると3つくらいに分けて、本人に第一案を作ってもらうという成功事例は相当多くありました。
 どうしてもこういうものは、まことしやかに周囲が作って運用するのがありがちです。
 支援計画もそうですし、もらうものについても、そもそも本人が自分のためだから自己理解レベル、現在地を知るためという意味でも自分が第一案を作って、そのあと 企業で一緒に働く管理者に対して、どれだけ少なくても内容に間違いがあってもいいんです、第一案を本人が作る。自分のことですから。本人に公開したうえで、一緒に 働く人の間で、本人が思っているほど周り的には大丈夫という内容も含めて、出してもらい、それに対して本人と対話をすることが割と建設的でよかったなということが 多かったです。
 
星明/それは引き継ぎされた情報をちょっとずつ整理していくということであれば、引き継ぐ前の、大学のキャリアセンターでも就労移行支援事業所でも、引き継がれた 後の情報を整理するのも、本人も含めて一緒に連携をしながら整理をするということですか?
 
黒木/そうですね。ありがたいことに、新卒で入社する方も、就労移行支援から来られる方も、入社後にまったく関りが途絶えてしまう支援者、担当の方はあまりいない んですね。
 そもそも採用面接の段階から結構介入してもらって、情報をもらっているんですが。
 その中からいろんな情報をもらった上で、うちの会社に実際入ってみて必要なことは何? とまた改めて本人であるとか、ご家族、支援者の方と考えるのが合理的で す。大がかりにみえて、割と効率の良いプロセスかと思っています。
 
星明/具体的な話、ありがとうございます。
 
田中裕/今、移行支援の話も出てきたんですが、実は高校の中に、若者サポートステーションとか、就労移行支援事業所がカフェとかを開いて、いつでも相談できるよう にしていて、高校からその先につなぐんですが、そこがうまく接着剤になって引き継いでる事例も、そんなに数はないですけど、大阪府でもあったと思います。
 そういうところがうまく間に入ることも、学校と企業の引継ぎの中にはあるかなと思っています。
 
星明/引き継ぎに、連携という言葉は必ず一緒にありそうな感じがするのかなと、聞いていて思いました。
 引き継ぎについて、佐元さんや田中順子さんのところで何か、うまくいった成功事例みたいなことがあればお話し下さい。
 
田中順/成功事例があまりないのが実情です。私達の周りでは、重度障害者の方が多くて、今日も来られていますが、言語障害のある方もかなり就職先を探してるけど、 引き継ぎとか、間には入ってもらっていますが、なかなか就職できないというのが多いので、ごめんなさい、成功事例を語れるだけの材料がないです。
 
佐元/教育から就労への引き継ぎ、主に成功事例ということですが、私はどちらかというと、お世話になっていることが多い側なのですが、一番ありがたいと思ったの は、自分の障害に由来することや、無自覚でいることをとらえて、「こういう傾向があると思うけどどうかしら?」と気づきを促してくれることです。
 私は20歳を過ぎてから発達障害が発覚して、生育履歴をつくって、こういうことが特徴的ではないかというのをお医者様に提供しました。
 幼少期から資料を段階的に集めて、小学校や中学校、高校へと段階的に細かい資料を残すということは出来なかったのですが、自分のこういうところが、世の中の人か ら見たら、「あれ?」と思ったりということが、なかなか気づけなかったんです。
 そういう意味では就労支援や、ジョブジョイントおおさかの方や、兵庫県の就ポツの方だったり、「こういうことがあると思うんだけどどう?」と教えていただけるの は、今現在進行形で、起こりやすい問題などに気づくのにとても役に立っています。
 
星明/成功事例という言い方とは違うかもしれませんが、佐元さんのお話で、いろいろな経験をされたり面談を経て、支援者と話をする中で、ご本人としての気づきが、 新たに次につながる情報になるということがあるんですね。
 もうちょっとディスカッションの時間があるので、2つ目のテーマも深めたいと思います。
 黒木さんが、語源をかなり丁寧にご説明くださいました。
 合理的配慮を2つめのテーマにしています。
 教育から就労へということなので、環境が変わったり場面が変わるということでは、配慮事項も環境との相互作用によって、合理的配慮の内容も変わってくると思いま す。
 ここでの課題や現場で感じていることについても、それぞれからご発言いただけたらいいかなと思います。
 順番を逆にして、田中裕一さんからご発言をお願いします。
 
田中裕/油断してました。失礼しました。
 合理的配慮については、教育現場の話をします。
 教育段階からやることが非常に重要だと思っています。
 そのなかにきっちり本人・保護者の意思の表明がありますので、しっかり本人が参画したうえで合理的配慮を話し合って決めていく。
 例えば「私は困っているから助けてください」でもいいです。
 教育の場で合理的配慮をすることが基礎になって、卒業したときに自分の意思の表明、助けてください、とか、私はこうやると楽になるんです、というのができるよう になると思います。学校にいるうちは、やってみてうまくいかなくても、教育の段階だったらサポートができるのでいいじゃないですか。でも、社会に出てからだと困る こともあるので、教育の段階で自分の意見を言って、やっぱり上手くいかへん、うまくいった、よし続けてくださいということを、試すことが、そのあとの合理的配慮で 大事かと思います。
 プロセスのところに、「本人・保護者」とあって、「本人」が先にあるのは非常に大切なことだと思います。以上です。
 
星明/黒木さん、いかがでしょうか。
 
黒木/私は雇用というか、現場の立場からですが、本人の意向を踏まえるというのは、教育分野でも雇用分野でも同じです。
 ただ、深く咀嚼しないといけないのは、本人の意向を踏まえるというのと、100%通るというのは違いますよ、ということです。
 合理的である必要があるんです。
 その場所の目的、リソース、設備、予算、さまざまなものとバランスしたうえで判断しないといけない。
 そこに本人の意向だって踏まえるべきでしょう、当然踏まえるべきです。本人のことなんだから。
 企業は働くことが目的ですから、より生産性が上がります、といううえで、合理的配慮の内容を本人と作っていく必要があります。さらに人と人の間に起きるものなの で、入社してすぐ必要な内容と、業務、人、環境との関係に慣れた会社での2~3年後に必要な内容は、変わるものもあります。
 ですので、本当に定期的に。頻度はまた決めることですが、合理的配慮は生もので変わり得るものだということを前提に見直すことが対話として必要だと思っていま す。
 もう一つは、働くためにやる合理的配慮ですから、やった結果、その人が本当に働きやすくなったのか、生産性が高まったのか、同じ生産性でも少ない負担でできるよ うになったのか、働く場所で活躍できるようになったのか、効果測定の視点は必ず必要だと思っています。
 
星明/ありがとうございます。田中裕一さんと黒木さんに、本人を中心にして配慮事項を話し合ったり環境の調整をするということについて質問させて下さい。
 ご本人も中心に添えるというのは大前提だと思いますが、難しさとか工夫の仕方など、もうちょっと具体的に何かあればと思ったのですが。
 言うのは簡単なんですけど、たぶんやるのが難しいと思いました。
 
田中裕/私は3時間くらいの時間を使って合理的配慮の研修をするんですけど、それを子ども小児のころから5年間聞き続けた障害のある子がいるんです。その子は高校 に行って自分で交渉しているんです。
 何が大事かというといきなり本人ではなくて、最初は保護者が矢面にたってやっているのですが、少しずつ本人がやる。「助けてください」だけ言うとか、こんなこと してほしいんです、こうしてもらうと楽なんです、といって、少しずつ本人の割合が増えていきます。それが高校生くらいのときに、その子は行き着いたのですが、ある 子は大学からだったり、ある子は大学でも難しいことがあったりです。
 中学校くらいで先生の前で、スライドショーで「私の特徴は」と説明した子もいます。
 全員に共通するのは、いきなり一人ではなくて、保護者と本人の段階的な移行というか、少しずつのやり方の変化、そこが共通だと思っています。
 
黒木/言うはやすし、行うはかたしですが、働く場所で必要な合理的配慮は、働いてから決めてみません? という柔らかさがすごく大事かなと思っています。
 一発で決まらないですよ、数値化できないですから。
 エクセルで表計算する仕事であれば、分かりましたと決めていたことが、例えば職場の環境で、あまり離席が許されない場所でもう少し追加で必要な内容が出てきた り、想定した納期より短い時間でやらなければならないとなると、またそれにもというのがあるので、お互い、やわらかい捉えでスタートして、いくつかの業務を実際の 環境でやってみて、それから作っていくというようなことでやる方が本人も周囲も納得できます。
 めんどうくさいと見せかけて、時間が・手間がかかるとみせかけて全然逆です。それに的を射た内容がすごく最短距離でたどりつけるなというのはあります。
 
星明/ありがとうございます。大串先生もよろしいでしょうか。
 
大串/支援学級、一般学級にしろ、就職する先を考えるときに、どんな「なりたい」をイメージしているか。保護者の意見が大きいことがあります。この子はこういうこ とをさせたいから、こういう仕事に就かせたいとその準備を綿密にされている方がいらっしゃいます。
 英語、韓国語、中国語を勉強させて通訳の仕事をさせたいとなったとき、その仕事をどこでするかというと、それは観光地だったり、インバウンドの人だったりする と、バリアフリーの状況でなかったりしますし、すごく忙しかったりするので、イメージと実際が合わないこともしばしばあります。しかしながら、今までの経験や持っ ていたスキルが無駄にならないようにこちらは配慮するということで、いろいろな提案をしながらいくことがあります。
 いわゆる普通の福祉的就労とか合理的配慮を、一般的な合理的配慮といったらこういうのを整えたらいいんじゃないかというステレオタイプの企業がほとんどなので、 そこに当てはまらなかったりしてます。
 結局、自分で起業するとかいう親御さんがいるのも事実で、それを私も応援したいから、今後はどういうスキルを、働きながら、就労しながら、何か新しいスキルが求 められる場合は、アドバイスをしたり、メンタルケアをしたり、身体的なコンディショニングをしたりは継続しますけれど、その辺、我々が思っている以上に当事者の方 は悩み、自分の目指すものは何かを、ドリームを考えたりしていることもあって、それを否定はしないんですが、現状とどこかでマッチングするコーディネーターのよう な方がいて、本人の希望もある程度認めながら、満足させながら、そしてPDCAのスキルを磨く中で、新しい働き方ができるようなシステムがあってもいいのかなと思 います。
 普通の方でも就労してすぐのときはある程度配慮しないとタスク量が増えたら、メンタルがやられたりがあるので、それと同じようなことが障害者就労でもやっぱりあ るんだろうと思うので、その辺の分類というか、少し科学的に私たちもある程度、妥当性のあることを提案していくことが必要です。医療、企業、専門の方たちとも話し 合う場所があったらいいなと思っています。
 
星明/ありがとうございます。
 続いて酒井さんもお願いします。
 
酒井/合理的配慮という言葉は、自分が就労支援を始めた頃にはなかった言葉です。
 10年ぐらいでここまで周知されてきたわけです。
 私自身、もともとはジョブコーチだったんですけど、その仕事で一番魅力に感じていたことは、働く環境側に働きかけて、仕事がしやすいようにとかやっていく、そこ に魅力を感じてやってきたと記憶してます。
 これも合理的配慮の1つなんだと思います。
 ただ、そのときに働きやすい環境を整えるのは支援者の仕事なんですが、その際に、それが実現可能なことと、現実的にその状況や、状況的に難しいこともあるんだと 思うんです。
 その中で最善策を見つけて、その必要性を企業にも訴え、最善にできることを調整して折り合いをつけていくことも支援者として合理的配慮に関してはやっていく立場 なんだろうなと思っています。
 もう1つが、この合理的配慮という言葉は雇用の場でも結構、誰もが知っている言葉で、障害のある方ご本人も知っているのは当然なんですけど、最近はちょっとう ん? というところもあるような気がしています。
 それは、何でもかんでも合理的配慮を求めるということです。
 もっと手前の本人の心掛けとか、あるいは準備とかで、あるいは手前の訓練とかで整理をしておく問題もあれば、本当に配慮事項として整理しなければならない、企業 の方にいろいろと検討してもらわないといけないこともあると思います。
 そこの一番大事なのは対話だと思います。
 そこに支援者としてしっかり、ご本人の立場にも立ちながら、企業の立場にも立って、そこも間に入って調整するのも合理的配慮における支援者の役割なんじゃないか なと思っています。
 
星明/続いて、佐元さんです。
 
佐元/佐元佑衣です。
 このたび合理的配慮について黒木様の発表の中でもお話があったのですが、この言葉を現在暮らしている地方の街に、言葉の原義を持ち帰りたいと考えています。
 本来の意味では合理的な工夫、調整、順応の意味で、配慮という日本語にあるような、思いやりというニュアンスとはちょっと違うんだよということを今回、教えてい ただきました。
 そのことについて、私は実際に発達障害の当事者の方、支援者の方と交流させていただいていて、思い当たることがいくつもあります。
 私が暮らしている地方の街では、まだ障害者支援ができかけているところなんですけど。
 昔ながらの、地域の人がお互いに身近なところのお掃除をしたり、おかずを近所に持っていったりの感覚で、障害のある方に接したり、支援を届けようという態度でい らっしゃる方を時々お見かけします。
 それ自体は思いやりの気持ちからで、悪いことではないんですが、そのときに相手から、感謝だったり、自分の期待する反応をしてほしいと、求められる場合がありま す。
 そういうとき、残念ですけど、もぞもぞしたお返事だったり、ぼそぼそとしゃべってどこかに行ったりすると、あら何かしら、せっかく良いことをしてあげたのに、失 礼な子ねという感想を言われる方が、支援者の中にも時々いらっしゃるので、そのことについては、合理的配慮の話、原義に立ち返る、正しい知識を今回のお話で痛感い たしました。
 念のため、付け加えますと、支援を受ける側にもいえることです。
 こうやって合理的配慮の知識が広まって、自分の話を聞いてもらえる、意見は通るかもしれないというときに、支援してくれる方にべったりになったりすることがあり ます。
 詳細は伏せますけど、支援員さんの家の実家の情報を調べて、そこまで訪ねていってしまうことがございました。
 それを身近で見ていたり、一緒に問題解決に参加していますと、どちらかがどうこうの話ではなくて、支援をしてくださる方、支援を受ける当事者の側も、私達は支援 を受けに会社に行くんじゃないよね、1人でできない、人が集まってお仕事の完成度を上げる、クオリティーのために、参加しに行くのだよね、その過程でクオリティー アップのために必要なことは当然言うよね、ということなのではないかと、合理的配慮の意味は痛感いたしました。
 それこそ合理的であることが必要だと。ぜひとも故郷に持って帰ります。ありがとうございました。
 
星明/ありがとうございます。田中順子さんお願いします。
 
田中順/合理的配慮について実体験で言うと、学校時代に、私は普通学校に通っていました。
 介護者がいなくて、自分でトイレに行かないといけなかったり、字も書けなくて、時間がかかったりとすごく大変でした。
 隣に介護者がいればと思います。就職してからもそう思うのですが、必要な人には必要な介護をつけることが欠かせません。
 もう一つが、音楽とか教室移動のとき、場所が4階だったりするんです。先生が1階に降りて来てくれればよかったと思うのですが、私に先生が気づかなかったんで す。
 その辺の対話がなかったんですね。
 先ほどから、当事者のことを当事者抜きに決めるなという話が出ています。
 母親の話ばっかり聞いて、私の話を聞いてくれませんでした。
 お母さんがよくしゃべり、私がしゃべる時間がなかったです。
 親の話だけではなくて、本人の話を聞いてほしい。
 就労するときには一番の問題になっていますが、特別支援学校に行っていたら、本当に最初に言ったとおり、勉強もさることながら、精神的に鍛えられないんです。
 人と人の接し方や摩擦がないからです。
 何を行われていても先生は、「よしよし頑張ったね」「明日から頑張ろうか」とか言います。特別支援学校の先生は、社会に出てからのことを考えてほしいと声を大き くして言いたい。
 だからこそ、私は普通学校に行く方がいいと思うし、そこで鍛えられて社会に出る方がいいんです。
 それがなくて社会に出て、就職しても、人間関係で困ったとき精神的に対応できないのではないでしょうか。
 離職してしまう人も、私の周囲では少なくありません。
 出会ったことがない障害者がそこに来て、知的に障害があるんだけどどうしたらいいかわからないわと。学校では接していないのでもちろんですよ。
 だからこそインクルーシブ教育は大事なんです。
 尾上さんのような、合理的配慮のスペシャリストに、教えてほしいです。
 
星明/ありがとうございます。
 合理的配慮というのは、どこまで配慮するのか、どれくらいやるのか、その環境、場所によって、4階の音楽室の話は、おっしゃるとおり、1階に降りて来てくれれば いいとか、対話をしながら、お互いの事情もわかる中で、今現時点でやれることの内容が合理的配慮です。
 少しずつ続いて行くことでもありますし、先をイメージしていろいろやる。
 うまく当てはまらない場合もあるから、それも調整になります。
 なかなか答えのない話でもありますが、合理的配慮の話、僕も非常に勉強になりました。
 抄録では交通バリアフリーのところでも話題提供をしたいと思っていまして、金沢工業大学の土橋先生に話題提供をお願いします。
 会場にいらっしゃいますので、そのままお願いできればと思います。
 土橋先生、よろしくお願いします。
 
土橋/金沢工業大学の土橋と申します。見てのとおり、杖使いです。金沢からやってきました。
 さっき、先にお話をされた先生が「かっこいい」ことが大切だとおっしゃっていました。大切なことだと思います。私が使っている「かっこいい」赤い杖は、妻が選び ました。見た目、大事だと思います(笑)。
 私は、今は教育現場にいて、今の大学に入って2年目ですが、すでに私の研究室に車いすの学生、精神に障害を持った学生がいます。個人的な印象として、それなりに 大学レベルの学校は障害者(障害学生)の受け入れはやっているように感じています。
 今後はどうやって受け入れた障害を持った学生をきちんと育てていくことができるのかが大切だと思っています。そのような学生が自分たちの困り事を適切かつ的確に 相手に伝えられるようになって社会に出ていくこと、そして社会がそのような働き手を受け入れていくこと、が私が教員として果たすべき役割かと思っています。
 少しだけ、私の専門分野の交通バリアフリーを中心にお話しします。先ほど、スクールバスの話や、親の支援で送迎があるという話がありました。就職すると状況は変 わります。でも一般の皆さん、どうですか? 皆さん、普段、通勤してますか、してませんか? では、コロナのときは通勤していましたか、してませんでしたか? と いうことを考えたいと思います。通勤せずに世の中が回っていた時もあったわけです。そう考えると、そもそも障害者の通勤は必須なのでしょうか?通勤しなくたってい い、という考えも、あるんじゃないかというのが最初の問いかけです。
 実際、ニュースとかで見かけたこと、ありませんか? 重度障害の20歳くらいの若者が、寝たきりだけど、会社を立ち上げてビジネスとしています。「寝たきり社 長」として有名です。今、そういう世の中になっています。
 コロナで皆さんは在宅勤務が可能だということがわかった。ということは、障害者は必ずしも通勤しなくてもいいんじゃないか、というような問いかけを、このお題を もらったときに考えました。とはいえ、現在、ほとんどの会社では自力通勤を勤務に関して条件化しています。私自身、今の大学の先生になる前は団体の職員をしていた のですが、人材採用を担当していました。その際の条件として、必ず記載する事項があります。「自力で通勤できること」。そういう項目が入ってしまうんですね。で も、必ずしも通勤しなくてもいい世の中になっているので、そのあたりは、どんどん変わってきている、変わっていくべきだと思っています。
 また、田中順子さんが、重度障害者等支援制度を利用して、今、仕事をされているという話がありました。3年くらい前ですかね、そういう制度が今、出来ています。 ただ、まだそんなに使われていないんじゃないかということで、各地の事業所とかで、チラシなど広報をやっています。問題は何かというと、皆さんが、それを知ってい るか知らないか、情報ということになります。通勤が条件だとすれば、どうすればいいのか、この辺りの情報をどんどん集める必要があると思います。
 そこで障害者差別解消法が出てきます。ただ、労働に関しては障害者雇用促進法が適用されるということになっています。その中で見ていくと、通勤に関しては必ずし もサポートが準備されていません。これは労働基準法を見る必要があります。皆さん、通勤手当を、ほとんどの方がもらっていると思います。会場の皆様、どうでしょう か? 通勤手当をもらっていますよね? でもそれは労働基準法という法律で決められたわけではなくて、それぞれの会社が福利厚生の一環として通勤手当を出している のです。だから、雇用の条件を出すときに、「通勤手当あり」という文言が出てくるわけです。ということを考えると、障害者が何かの手当を使って通勤するのはいろい ろ難しい問題が出てきます。それを解消したのが先ほど、田中さんが使っている制度ですが、その辺りももっと知っていく必要があるでしょう。
 あと、大きな問題として自治体の格差があると思います。こういった通勤とか交通に関しての手当を出す、その場合、大元の国の方で方針を作ります。でも、実施は各 自治体です。お金のある自治体は、わりといいことができます。私が知っているのは、横浜市で通学に対しての手当が出るという話を聞いたことがあります。でも横浜は すごいお金があるんですね。地方の市町村であればそういうものはないという差が出てしまう。となると、そのすき間を埋めるためには、皆さんのようなリハ職の方たち がいろいろな知恵を出す必要があると思います。
 一般的な交通バリアフリーの条件について申し上げますと、どんどんよくなっているというのが、国交省が出している数字では出ています。ですが、1つ言えるのは、 三大都市圏とその他ではかなり差があります。この会場近辺は三大都市圏の関西に入りますので、いい方です。ちょっと地方に入ると、私が住んでいる金沢もそんなにい いとはいえないです。
 その他の話題として、省庁間の連携やUD2020といったものについても触れておきたいです。この取り組みはご存じですか? 聞いたことある方、どれくらいいま すか?(数名のみが挙手) あまりいないようですね、残念です。UD2020は東京オリンピック・パラリンピックを契機にユニバーサルデザインのまちづくりと心の バリアフリーを推進していこうといった政府の内閣府主導の取り組みだったのですが、結果は今、この場にいる専門家の方でも殆ど知られていない状態です。
 制度はあるけど、実態が伴わないという話もあります。それはいろんなところでも見受けられることかなと思います。あとは、障害福祉サービスを知る動向として資料 の最後に少し入れてますが、ここで一番言いたいのは、先ほどの交通バリアフリー同様に地域によって差があることです。義務的経費、裁量的経費に分かれてきますし、 そういったものが市町村、自治体によって出せたり、出せなかったりしています。
 最近私がしている研究の中で、日本で欠けていると思われる取り組みで、権利に関しての意識が弱いかなという点が見えてきました。佐元さん、田中順子さんの話から もわかると思います。また実施する能力も十分とは言えないと思います。色んな制度がありますが、使いこなせていないことが多いです。そして、えげつない言い方にな りますが、お金の問題は切実にあるかなと思います。そういったところも考えていくことで、いろいろな取り組みを進めていくことができるようになると思います。そう することで障害者の就労と交通バリアフリーがつながって、よりよい社会になってくるかなと思います。
 私からは以上になります。どうもありがとうございました。
 
星明/もうちょっと時間がありまして、せっかくなので会場の皆さんからのご質問も少しちょうだいできたらと思います。
 いかがでしょうか。
 
会場/神戸で就労移行支援事業をしています。今日のテーマからは外れて恐縮なんですが、教育から就労へと考えたとき、酒井さんが前半で触れられていた就労選択支援 の役割は非常に大きくなるかなと思うんですね。
 来年10月に始まるということもあり、全容が明らかになっていないのですが、受け手側の対応が非常に遅れていて、学校の先生方なんか影響があるはずなのに、学校 にいる間ではなく、学校を卒業してから適用させればいいみたいな感じがあります。
 何がよくなるのかをもっと明らかにしていかないといけないんだろうなと考えます。現在の取組は形骸化しているのでしょうけど、就労選択支援を行うと、あるいは、 アセスメントに対する不信感に対してどうするのか、酒井さんには、こういう準備をして、もっとよくなるというアピールをすべきだというのがあれば教えていただきた いです。
 就労選択を担う就労移行支援事業所は地方の方でどんどんなくなってきています。
 就労選択ができる事業者が地方でなくなっていくとすれば、ますます地域格差が開きますが、そのときに、各都道府県にある総合リハビリテーションセンターの役割は 大きいのではないでしょうか。
 昨日の議論でも、回復期病院の専門職が地域に出て行くという話がありました。
 それをさらに一歩進めて、総合リハビリテーションセンターがそういう就労選択が担えない地域に巡回訪問していき、そこで地域づくりをして、就職したい人の可能性 をいろんな地域資源を使って実現していくというモデルをぜひ作っていただきたいです。
 全国どこでも同じ悩みを抱えていると思います。
 昨日の議論から思いついたことで恐縮ですが、以上です。
 
星明/質問ありがとうございます。
 
酒井/ご質問ありがとうございます。
 ご承知のように就労選択支援は令和7年10月からスタートする、まさに来年度の後半からスタートする事業で、イメージがない方はわからないかもしれませんが、現 行の就労アセスメントを、もう少し充実させたものだと私は認識しています。
 学校側がノーサンキューという話について、その要因は僕は2つあると思っています。兵庫県では、就労アセスメントが特支校としっかり連携して話し合いが十分でき ているのに、今ごろやってくれるなという、そのノーサンキューと、これだけやらないといけないことがあると、カリキュラムの中にどう収めるんだ、やめてくれという ノーサンキューがあります。
 あとは現時点で情報があまりない、というのが要因かと思います。
 現行の就労アセスメントはどうもやっぱり形骸化しているという課題は結構あります。
 ここの事業所に行きたいと決めている、そのために形式的に移行支援でアセスメントする、そういったことが全国であって、それが何のためなんだという話なのです。
 同じ轍を踏まない踏ませないことが大事だと思います。就労支援の目的をしっかり、福祉も教育も双方が理解することが大事だし、親御さんもしっかり理解してもらわ ないと、うまく機能しないんじゃないかと思っています。
 もう1つ、形骸化させないためには、ビジネス化させないことです。福祉サービスの問題ですけど、これを逆手に取ったといったらあれですが、ビジネス化させない仕 組みがもう一工夫要ると思います。
 このアセスメントに対する不信感は、詳細を聞かないとわからないですが、形骸化していることとか、単にサービスの振り分けにするだけではいけないのです。
 なのでしっかりご本人の強み弱みが、家族も学校も理解でき、整理できる仕組みが必要です。
 課題は、地域にどれだけの専門家がいるのか。就労選択支援を行うには2日間の養成研修を受けると決まっていますが、2日くらいで専門家は育ちません。
 最初からは機能しにくいかもしれませんが、地域でどうやって、事業をそだてていくか、そんな視点が必要なのではないかと思います。
 ふわっとした回答ですみませんが。
 
大串/地域包括支援のパラダイムシフトが平成29年にあって、高齢者から就労も含めて国の方針が変わりました。重層的な支援を行うのに、人の確保ができることが重 要です。
 期待を含めて言っていただいたのは本当にありがたいと思っていて、地域包括ケアでは、私がここに就職してからずっとかかわっていて、兵庫県のリハビリテーション ケアの研究をやっていますが、就労については2回ほどやらせていただいています。
 また、各圏域の支援センターでは、高齢者だけでなく障害のあるかたのサポートも含めて、どういうことが行われているかのヒアリング、モニタリングを活動のなかで はやっているので、政策として提案されたとき、兵庫県がどういう考え方をするかを含めて、密に連携していきたいと思います。
 一方、総合リハビリテーションとしてはお二人来られていますが、担当の方が能力開発センターですが、中途障害のかたについては、様々な就ポツで動いていただいて いますが、支援学校の子どもを県の独自事業について受け持っていて、私は、食堂に通うんですが、その途中に毎回5-6人の子どもがいて、訓練や評価をしっかり受け てもらっています。
 おそらく支援学級の子達は、当センターに関わる機会を持っているかもしれませんが、もしかしたら地域によってはまだ不十分なのかもしれません。私たちのセンター を活用していただき、しっかりアセスメントをして、その人にあった能力評価ができたらいいなと思っています。
 質の評価も高めていきたいです。
 一方で能力評価がパターナリズムに陥っていて、いろんな能力を評価することを拡充していく必要があります。
 形骸化しているということが、本当にあるのかもしれません。
 見直しも含めて事業の数だけでなく中身も充実されるようなことも、考えるべきだと思っています。
 兵庫県が全然動いていないわけではないのですが、もっと活用できるよう、広報して、使っていただいて成果を皆さんにお伝えできればと思っています。
 これからも応援をよろしくお願いします。
 
星明/もうおひと方、お願いします。
 
会場/ありがとうございます。
 東京からまいりました。
 いま、精神保健福祉士と社会福祉士をとっています。
 私の質問は、黒木さんと田中裕一さんにお願いします。
 現役時代は福祉にはいなくて、異業種でした。黒木さんの話を聞いてよくわかります。
 株式会社ですから、これからは物を言う株主も多いかと思います。
 四半期ごとの決算発表もありますよね。総売上から今の新しい全社員の尊重と公平性確保のための合理的調整を導入した結果、コストを引いて、収益が上がっていると 株主に言えるならばすばらしいです。
 これが適用できるという科学的なエビデンスになるので、収益性についてお答えください。
 もう1つ、黒木さんのお話は、企業ですから良い話ばかりでトラブルはないのかを聞きたいんです。
 私の息子も精神障害があるので家族会のメンバーとして就職は大事な話です。
 やっぱり私の息子も予測不能性があるわけです。
 それを抱えながら、決まった期間に経営計画を全うしないといけない。
 そこでそれがトラブルにならないのか。
 あるいは重度障害者を本当に採用しているのかです。
 トラブルのところを伺えればと思います。
 次に田中裕一先生には、僕はインクルーシブエデュケーションはものすごく大事だと思いますが、現場の教員の負担は激しく深刻だと聞いています。
 自殺する教員、うつになっている教員が非常に増えている。その中で不登校などの問題も出てきています。
 その中で引継ぎ、合理的配慮をしろというのは教員に過重が降りかかっているのではないでしょうか。
 教員たちは本当に耐えられるのか。これをやっていくためには、教育行政の改革として、現場の教員の行政文書、つまらん作成をやめさせて、個々の学生に向きあう時 間を増やす改革も必要ではないかと、私は問いたいと思います。以上でございます。
 
星明/黒木さんからお願いします。
 
黒木/ご質問ありがとうございます。
 合理的配慮を数値化する、金額化するのは、できるものも一部ツールとしてはあると思いますが、多くの場合、相当な要素を含んでくるんですよ。
 例えば合理的配慮の提供によって金額的にこれぐらいかかりました、でも企業のブランドイメージが上がって良質な人材がたくさん応募してくれるようになりました、 そうなるとより精選して人材採用できるので、逆にコストを下げている側面もあります。一概に金額でいうことではありませんが、当社は今のところお金事情はいい感じ です。
 ご興味がある方は調べていただきたいのですが、有価証券報告書を一般公開しておりまして、その中にも掲載しています。
 全国に支店がありますので、事業所のダイバーシティレベルをスコア化しまして、これを事業所評価として取り入れています。
 ですので障害者雇用率の事業所ごとの達成率とか男性育休取得率、女性管理職、女性主任職の登用率とか、いくつかの分野の指標で、管理職もそうですが、各事業所、 支店を評価する取り組みも取り入れておりまして、これは半分、自分たちの首を…といいますか、自分たちの取り組みがもう後戻りできないというような、いい意味で、 プレッシャーをかける側面もありますし、数値化すれば株主の皆さんもご満足していただけます。
 ちゃんと価値ある事業に投資をしたいという投資家の方がたくさんいて、ありがたい傾向だと思います。
 2つ目に、私はトラブル事例の方をしゃべりたいんですよ。
 よくない、失敗事例の方がたぶん世の中の方々のお役には立てるんだと思うんです。
 つい一昨日もジョブコーチ研修の一コマを持っているので、そこなんて、相当うちの悪口じゃないですけど、失敗例をたくさん出しました。
 今日はきれいな場なので1つだけ。
 当社は障害の有無にかかわらず、単一の処遇の中で仕事をしてその評価査定を受けているんですね。
 いいじゃないですか。
 でも、それは同質性の高い評価なんです。
 多様な人材がいて、いわゆる典型的な働き方が合わないというタイプの方々があまり評価を得られないという現象も同時に起きるわけですよね。
 ですので、今、計画しているのは、障害の有無だけじゃないんですけど、単一の処遇の人の確保とか評価というものは従来どおり残しつつも、また別のものさし、新た な雇用度、形を作って、障害の有無、障害があるから必ずしも一般処遇が難しいことは絶対ないです。
 例えば障害特性による調整、介護・育児があるとか、遠方に住んでいる、副業をしているとか、いろいろな個人特性が、その人も学び直しをしたいから、今大和ハウス は100%ではないという使い方をしたい人もいるんですね。
 ですのでそういう多様な人材が無理なら合わないなら大和ハウスやめようという一択になるのではなくて、いろんな働き方が同一労働同一賃金を守った評価が実現でき るようにという取り組みを理想なら来期中に走り出すといいなと思ってやっています。
 
田中裕/質問ありがとうございます。
 今、教育関係者といいましょうか、私のような教員養成をしている人間、教育行政を担って教員採用をしている人間が、一番何が困っているか。採用試験の枠が埋まる かどうか、それだけです。
 今も再試験をやっている都道府県もあります。
 回答する前にお願いしたいのは、教員はしんどくないなんていいません。
 しんどいとか楽しいとかやりがいがあるというのはまた別の問題なので。やりがいのある職場だと広めていただければと思います。
 回答します。先ほどの話の中で1つだけ誤解があるのは、行政文書が何かという共通理解ができていないのですが、管理職以外に行政文書を書いている先生の割合、そ れにさく時間の割合は、ほぼないです。
 管理職はむちゃくちゃ多いですよ。山ほど書きます。
 ただ、その中で、文書といったときに個別の教育指導計画と個別の指導計画を書かないという選択肢はないと思っています。
 これは何かほかのものを削ってでもやってもらわないといけない。
 ですので「ねばならないルール」に平成29年と30年に改訂された学習指導要領では特別支援学校はそれまでも義務化ですが、特別支援学級や通級まで義務化にする と踏み込んだんです。
 これをやらないと引き継ぎもできへんし、今日の話が成り立ちません。
 先生が書いたものが1つもなくて、口頭で全部引き継ぐなんてうまくいくわけないんです。
 これは他の業務を削ってちゃんとやってほしいという考え方を取ってもらえたらと思います。
 業務が多いことの話題であがる部活についてですが、神戸市の中学校では今、先生は部活をやめますといっていますから、思い切った方法をやるのも1つかなと。
 これを言うと先生方から反対もあるんですが。
 次に、合理的配慮をすることが、子どもと対面する時間を減らすのかということです。
 僕は逆だと思っているんです。合理的配慮をするには子どもときっちり話さないとできない。その時間を増やさないとやれないので、合理的配慮を進めるとき、本人と ちゃんと話をしてと。
 特別支援学校でもそうですが、通常の幼保小・中で、子どもと面と向かって、「今、困っていない?」としっかり話をする時間をとるという意味で、僕は合理的配慮は いい方に進むかなと思っています。
 質問ありがとうございました。
 
星明/質疑応答が盛り上がり、ありがとうございます。
 ご質問もありがとうございました。残り数分でして、6人のシンポジストの方に各2分ぐらいと思っていたのですが、できたら30秒くらいで最後にコメントをいただ いて終わりたいと思います。
 
田中順/大和ハウスに就職したいと思いました。
 大きな会社が障害者雇用を広めていき、重度も軽度もいろいろな障害者を雇っていければいいと思います。よろしくお願いします。
 
佐元/佐元佑衣です。
 本日は多くの人の前で話す機会をいただき、ありがとうございました。
 私が暮らしているのは地方の町なので、新しい情報、言葉の原義をお土産として持ち帰ろうと思います。
 本日は本当にありがとうございました。
 
酒井/私の話題提供の中でお話ししましたが、就労移行支援事業としては知的障害のある人の利用がどんどん減っている、特別支援学校からの就職者数も減っているとい うことです。
 いったいじゃあ、われわれは福祉に繋がった就労を目指しているのかといえば、どうやらそうではないようで、どうなっているのかという話です。
 まだまだ一般就労に向かう人、向かえる人、希望する人は絶対たくさんいると思いますので、もう一度教育機関と連携しながら、どういう仕組みが大事なのか、現場レ ベルでも進めていくことが大事だと思いました。
 
大串/2日間、就労について考える機会になって、まだまだ勉強不足ですが、また人との繋がりもできて、たいへんいい時間だったと思います。アセスメントはだめだめ を見つけるのではなく、できることを見つける、それが社会に役立つということが当事者と共有できればと思います。
 これからも頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
黒木/働くことを改めて深く考えるきっかけになりました。働くというのは自己実現だったりお金が得られたり、社会とつながったり、自分が役に立っていると実感でき るすばらしいアクティビティーです。
  障害の有無とかその他の違いとかにかかわらず、働くということをみんなが手に入れられるよう、大和ハウスでもしていきたいと思いました。本日はありがとうござ いました。
 
田中裕/学校、教育は今、ものすごく頑張っています。
 そのことはまずご理解いただきたいということと、でもまだやれることがあると思います。
 そのためには、本人というものを大事にしながら、皆さまと連携しながら、リソースは学校のなかでは限られていますので、皆さんと一緒にやっていきたいと思いま す。
 私は来年度の研究大会の実行委員なんですが、教育をテーマに取り上げます。
 そのときに厳しい意見をいただきたいと思います。ありがとうございました。
 
星明/皆さん、どうもありがとうございました。
 座長の栗原さんに、一言お願いします。
 
栗原/2日間、ありがとうございました。
 実行委員長をさせていただいて、こんなに多数お集まりいただき、感謝申し上げます。また講師の皆さん、実行委員会の皆さん、係の方も大変ご尽力いただいたこと、 主催者のリハ協会さんも含めてありがとうございます。
 今日のシンポジウムについて、改めて思ったのは、労働も教育も合理的配慮の正しい意味と意義を理解していく、そういう啓発の必要性を感じました。
 合理的配慮、特に労働における意義は、本人のもっている力を、有効に発揮できるための方策なんです。
 面倒くさいとか、本人のわがままではないのです。
 そのあたり、原点をしっかり、教育の分野も就労の分野も学びあっていくことが必要です。
 もう1つは文書での引き継ぎも大切ですが、やはり対話です。当事者と支援サイド、そこに支援者が教育機関がどう関わるか、そこを再確認できたかなと思います。
 
星明/最後に6人の皆さんに拍手をお願いします。
 
編注:「普通学校」、「一般学級」、「インクルーシブ教育」などの用語は、原則として発言者の言い方をそのまま使用しています。

menu