[厚労省]改正旅館業法の円滑な施行に向けた検討会とりまとめ

令和5(2023)年10月10日、厚生労働省は、「改正旅館業法の円滑な施行に向けた検討会とりまとめ」を公表しました。

「生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律(令和5年法律第52号)」が令和5年6月7日に成立したことにより「旅館業法(昭和23年法律第138号)」が改正されましたが、同法第5条には、宿泊客が特定感染症の患者等の場合には、宿泊を拒むことができるとされ、この規定により障害者が宿泊を断られることに対する危惧が障害者団体等から提起されていました。また、障害を理由とする宿泊拒否はできないことを明確にするという国会の付帯決議も行われています。

そこで、令和5年7月に「改正旅館業法の円滑な施行に向けた検討会」が設置され、政省令及び指針の策定に向けた検討を行ってきました。

同とりまとめの概要は次の通りです。

1.政省令案・指針案について
○ 政省令や指針は、パブリックコメント等を経た上で、基本的には、本とりまとめの内容に沿って改正・策定されることが求められる。
○ 政省令や指針の内容を踏まえて、営業者において改正法による改正後の法が適切に運用され、不当な差別はあってはならないという前提の上に、宿泊者や従業者が守られ、旅館業の施設が誰もが気持ちよく過ごせる場となり、旅館業の事業活動の継続に資する環境の整備につながることを期待。
2.宿泊拒否制限
○ 厚生労働省においては、省内外の関係部局の連携の下で、都道府県等に対して、以下の内容について通知等で働きかけるべき。
• 特定感染症が発生した際に地域の医療提供体制等が逼迫しないよう、引き続き、感染症法等の一部改正法の施行に向けた準備を進めていくべきであること
• 都道府県等において、営業者その他の関係者に対し、特定感染症国内発生期間における営業者が相談できる都道府県等の相談窓口等を平時から周知・確認等し、関係者間での連携を図るべきこと
• 条例の検討にあたっての留意事項は以下の通りであること
 - 条例において、特定感染症以外の感染症の患者に該当する場合も宿泊拒否を行うことができることとすることや、感染防止対策への協力の求めに正当な理由なく応じない場合を宿泊拒否事由として規定することは、法の趣旨に沿わないと考えられること 
 - 法第5条第2項(客観的な事実に基づいて判断等)を踏まえ、条例で宿泊拒否事由を規定している都道府県等においては、当該宿泊拒否事由に関し、営業者が適切に対処するために必要な事項を整理して公表することや、必要に応じて条例の改正の要否を検討することが望ましいこと
3.差別防止の徹底等
○ 本検討会で聴取した障害者差別解消法に係る内容は、同法に基づくガイドラインに盛り込むことが適当。
○ 各旅館・ホテル団体においては、好事例やトラブルとなった事例等を営業者間で共有する仕組みの構築を検討することが望ましい。
○ 改正法施行までの期間が限られていることから、厚生労働省は、まずは改正法や政省令、指針の趣旨や内容を中心にまとめた研修ツールを作成し、施行までの期間、その内容の浸透に努めることが適当。
 令和6年4月までの間に障害者差別解消法に基づく衛生事業者向けガイドラインの改訂版における旅館業関係の内容を研修ツールとしてまとめて公表することが適当。
 更に、一定の時間を要するものであるとの前提の下、意見聴取先の意見等を踏まえ、追加の研修ツールの作成等を検討すべき。
4.その他
○ 厚生労働省から都道府県等に対して、以下の内容について通知等で働きかけるべき。
• 都道府県等において、相談窓口を明確にした上で広報し、利用者側から不当な協力の求めや宿泊拒否がなされたとの申し出があった場合や営業者側から相談があった場合に、適切に相談に応じること
• 当該窓口において障害者差別解消法担当部署と適切に連携すること
• 不適切な事案を把握した場合は報告徴収等を行うこと
○ 周知に際しては、意見聴取先の意見を踏まえたものとすること。
○ 旅館業の施設は、宿泊を必要とする者が、不当な差別を受けることなく、安心して利用できる安全な宿泊の場であることを、そして旅館業の施設で働く者が安心して働ける場であることを、社会全体として今後とも実現できるよう、政府は、改正法の施行後3年を経過した場合において、今後の社会情勢も見ながら、他の制度や施策、関係者の取組、法的な課題も含め、検討を深めていくべき。

詳しくは次のサイトをご覧ください。(寺島)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35694.html

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