医療的ケア児等コーディネーター支援協会の活動

「新ノーマライゼーション」2024年3月号

一般社団法人医療的ケア児等コーディネーター支援協会 代表理事
遠山裕湖(とおやまひろみ)

一般社団法人医療的ケア児等コーディネーター支援協会(以下、本会)は、2022年8月に全国の有志が集まり、医療的ケア児等とその家族に対し期待される役割を果たすことができる医療的ケア児等コーディネーターおよび支援者の育成、医療的ケア児等と家族の暮らしを支える人材の全国規模でのネットワークづくりへの貢献、各地域の状況に応じた体制整備への貢献を理念として設立された団体です。2022年9月東京にて、設立キックオフミーティング(kickoff meeting)、2023年10月に全国大会を開催してきました。また2023年5月より医療的ケア児者を応援する市区町村長ネットワーク事務局を担い、同年11月ネットワーク総会を開催することができました。2023年2月の時点で、会員数は231(個人会員145、法人会員51、支援センター会員30、行政会員5)となっています。

1. 2022~2023年度の支援協会の活動

(1)部会の活動

支援センター部会は、現在28都道府県31センターが加入しています。各センターの取り組みや現状と課題について共有する場を年に数回、オンラインおよび対面(対面は全国大会時)で開催しています。コーディネーター部会は、まず医療的ケア児等コーディネーターの皆さんに元気になってもらいたいと、コーディネーターとしてのやりがいについてオンラインミーティングで共有し、その後全国大会時に実践や困りごとを共有しました。

支援者部会は入会されている職種が多岐にわたり、保育園、児童発達支援、放課後等デイサービス、生活介護事業所や訪問看護ステーション、医療機関などで勤務している保健、医療、福祉、保育職となっています。2023年度は、オンラインにてつながりをつくるミーティングを行い、全国大会では実践報告会を開催しオブザーバーより講評をいただきました。

どの部会も、本会理念に則り会員の顔の見える関係づくりと全国的なネットワークの構築に向けた活動を展開しています。次年度はさらに部会の活動を強化する予定です。

(2)毎月の定例研修

2023年度毎月第三水曜日20時より、全国の会員および関心のある方が研修に参加できるようオンライン研修を開催しています。研修のテーマについては、普遍的なテーマから時流に応じたテーマまで扱ってまいりました。参加者は毎回40名~90名と幅はありますが、福祉、医療、保育領域で多くの方が参加されています。次年度は、今年度の研修を評価し、より会員の皆様のニーズに応じたものへブラッシュアップしていく予定でいます。

(3)医療的ケア児者を応援する市区町村長ネットワーク事務局

2023年5月にネットワーク事務局を拝命し、入会の手続き、市区町村担当者との連絡調整、各種イベントの準備などを担っています。

2023年5月31日にはオンラインにて、医療的ケア児者を応援する市区町村長ネットワークキックオフミーティングを開催し、発起人である13市区町村長が参加され顔合わせができました。その後、11月15日東京都霞が関ナレッジスクエア交流カフェエキスパート倶楽部にて、ハイブリット型総会を開催し、計24名が会場およびオンライン上で参加され、令和5・6年度の事業計画などについて承認されました。2024年2月でのネットワーク加入市区町村長は45名となっています。

(4)自治体や支援センターへのコンサルテーション事業

2023年度は、医療的ケア児等支援センターからフォローアップ研修の内容や、都道府県や政令指定都市から医療的ケア児等コーディネーター育成研修、地域体制づくりについての相談が計7件あり、個別対応しています。具体的には、「全県展開で医療的ケア児支援センターを効率よく機能するための仕組みをつくりたい」「数年かけてコーディネーター育成研修を実施してきたが、うまく育っていない。原因を一緒に考えてほしい」「コーディネーターフォローアップ研修の内容を検討したい。相談に乗ってほしい」「支援センターとしての活動について外部評価をお願いしたい」「次年度のコーディネーター研修を委託したい」「保育園での看護師研修プログラムを作成してほしい」など、地域体制整備、人材づくりなど内容は多岐にわたります。また当初の相談内容を掘り下げると、地域の課題が見つかり、人材育成前に支援体制整備が必要な場合もあり、時間をかけて相談対応できるよう心がけています。

(5)全国大会『10年後の医療的ケア児の暮らしを展望する』の開催

本会と社会福祉法人むそうの共催にて、2023年9月24日、東京秋葉原コンベンションセンターにて全国大会を開催しました。前日の23日の夜は、霞が関ビレッジにて会員の懇親会を開催し計50名近い方が参加し夜遅くまで語り合い楽しい時間を過ごすことができました。

翌日24日は、メインシンポジウム「医療的ケア児等への政策の未来」と題し、座長を医療法人財団はるたか会理事長前田浩利氏、本会理事でもある社会福祉法人むそう理事長、日本福祉大学客員教授戸枝陽基氏にお願いし、シンポジストとして、前内閣府特命担当大臣野田聖子氏、日本小児在宅医療支援研究会名誉会員田村正徳氏、上智大学総合人間科学部社会福祉学科教授大塚晃氏、全国医療的ケアライン(アイライン)代表宮副和歩氏にご登壇いただきました。参加いただいた方からも大変好評をいただき、次年度の全国イベントのモチベーションにもなりました。

2. 2024年度の活動予定

2024年度小林製薬青い鳥財団に助成していただき、全国9か所でオムツプロジェクトを開催します。

障がい児者が使用する紙おむつ等は、経済的な要因が最優先され、本人の尊厳や快適さはあまり考慮されず選定されていることが多々あります。また使用済みおむつのリサイクルや紙おむつ等の特徴、当て方の工夫についてもっと知っていただき、おむつ処理にまつわるSDGsへの取り組みについてお伝えする場を持ちたいと常々考えており、このたび支援協会として助成金を獲得することができました。

プロジェクトを進めるにあたり人の営みを再考し、排泄についてはもとより、「食べる」ことについても情報を発信して、各地で出会う人と食べること排泄することを一緒に考える場も同時につくりたいと考え、株式会社宮源の高橋さん、パティシエ清水さんという強力なパートナーとプロジェクトを進めていく予定です。

各地でのイベントでは、個々の生活や排泄状況に合った用品を選択し、SDGsを念頭に当事者の尊厳のある快適な暮らしを支援できる人材の育成を目的に、おむつや尿取りパッドの構造、リサイクルへの取り組み、尿漏れしない当て方の工夫、インクルーシブフードとスイーツについて解説されたパンフレットを配布し、全国9か所にてオムツの吸水実験やインクルーシブスイーツの試食会を開催します。

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