美作大学生活科学部社会福祉学科
薬師寺明子(やくしじあきこ)
「いらっしゃいませ!クッキーいかがですかー」「今日はパンも販売しています!」月に一度、お昼休みが始まる少し前から約1時間、大学内で学生と利用者さんの声が響きます。この活動は、学生が主体となり、就労継続支援B型事業所や生活介護事業所の利用者と一緒に販売活動をする「Smile Company(すまいる かんぱにー)」です。「すまかん」の愛称で学生や教職員に親しまれています。
美作大学は岡山県北部の津山市にあります。社会福祉学科では社会福祉士を養成しており、25年目になります。この活動は11年前、社会福祉学科薬師寺ゼミの学生が、「大学内で事業所の利用者さんと一緒に販売活動をしたい」という想いから始まりました。薬師寺ゼミでは活動や実践を通して障害者福祉を学ぶことをテーマに学習や研究を行っています。この活動も学生の「やってみたい」から始まり、後輩に引き継がれています。
すまかんの開催は長期休暇期間を除く月に1回。前期、後期の時間割が決まると、3年生と4年生のゼミ生の時間割の都合を考えて予定を決めます。学生は担当の事業所が割り振られており、各事業所に連絡して、販売可能な日程をたずねます。そして、販売回数や販売物の内容を考慮して、販売日を決めます。他県や県南の遠方の事業所の場合は委託販売もしています。遠くは神奈川県や高知県、兵庫県の事業所も参加しています。販売1週間前から学内にはポスターが貼られ、お昼休みにはすまかん開催のお知らせの放送を行います。当日は、委託販売のおつりを用意したり、販売場所の設営や事業所の搬入をお手伝いして準備をします。
販売時間はお昼休み20分前から。準備をしている時から、多くの学生が販売時間になるのを待ってくれています。販売が始まるととても賑やかです。ゼミ生たちは、利用者さんが圧倒されるくらい元気に呼び込みをしています。利用者さんと一緒に1時間程度販売します。販売が終わると利用者さんと学食で一緒に昼食を食べる時もあります。コロナの時期も委託販売だけに切り替えて継続してきました。
この活動を始めた時から続く目的があります。一つは障害のある人が自分たちで作ったものを販売することで、就労意欲につながってほしいということ。もう一つは、学生や教職員の障害のある人への理解につながってほしいということです。利用者さんが笑顔で販売を楽しんでもらえている様子はゼミ生にも伝わっているようです。また、学生や教職員からも「明日はすまかんの日だね」という声も聞こえており、この活動を楽しみにしてくれ、定着しているところも長い期間やってきた賜物だと思います。
ゼミのすまかんリーダーをしてくれている4年生の甲元李和さんと3年生の渡辺陽斗さんのコメントです。「Smile Companyはとても楽しい活動です。この活動を通して利用者の方と関わることや事業所との交渉等多くのことを学ぶことができます。すまかんに来てくれた学生と利用者の方が交流を図る機会になっています。学生や教職員の皆さんがすまかんに来てくれたり、楽しみにしてくれているのがとても嬉しいです。これからもこの活動を通して、障害のある人がさまざまな製品を作ったり、販売したりしていることを知っていただける機会が増えることを願っています」
この活動の原動力は、障害の有無にかかわらず、ともに地域で活き活きと暮らせる「ノーマライゼーション」をもっと浸透させたいという学生の想いです。今後もこの想いを次につなげていけるようSmile Companyを続けていきたいと思います。