快適生活・暮らしのヒント-パーキンソン病患者の私が家を建てる時に工夫したこと

「新ノーマライゼーション」2025年1月号

拇速弘美(ぼそくひろみ)
全国パーキンソン病友の会山梨県支部事務局次長

私は病歴13年のパーキンソン病患者です。パーキンソン病とは、神経の伝達物質ドパミンが作れなくなる病気で、だんだん動けなくなる難病です。この足りないドパミンをドパミン補充薬で補うことが治療の中心ですが、病歴が進むとコントロールが難しくなり、突然、動けなくなったり、自分の意志に関係なく身体がゆらゆら揺れたり、ゆっくり歩きたいのに走ってしまう突進歩行になったりします。病歴13年の私は、今まさにそんなふうです。

現在、平屋の戸建てに住んでいますが、以前は南アルプスや富士山が見える見晴らしの良い14階建てのマンションの11階に住んでいました。

戸建てに住みたいと思うようになったきっかけは、近年の地震の多発と私のパーキンソン病の発症です。マンションは耐震構造になっているので、たとえ震度1でも地上の震度3くらいかと思うほど、揺れます。大きな地震が来た時の揺れを想像すると恐ろしくなります。そして、エレベーターが止まってしまったら動きが悪い時でも、突進歩行の時でも、夜中の薬を飲んでいない時でも、階段を使わなければなりません。それはとても危険で、そもそも薬を飲んでいない時は不可能です。

そんな時、実家から徒歩1分の所にあるお宅に現れた売地の看板を見た瞬間、家をそこに建てる決心をしました。

私が家を建てるにあたり、工夫したことは、1.玄関口にスロープを付ける2.玄関を広くする3.トイレを広くする4.トイレの出入り口を玄関と寝室の2か所にする、でした。

1から3は、車椅子、歩行器に対応するためです。パーキンソン病の薬のドパミン補充薬は、もともと身体からすぐ出ていってしまう薬で、病歴やその時の食事内容などにより、切れる時間が変わり、うっかりすると急に歩けなくなってしまうので、歩行器や車椅子が必要になります。4は夜のトイレのためです。夜間は薬が飲めないため、薬効が切れて体全体が重くなり、脚も「動け!」という指令が伝達されにくくなり、歩くのが非常に困難になります。これまで、夜間のトイレ問題が私にとって一番の困りごとでした。病歴の長い方から、ポータブルトイレを利用されていることを聞き、トイレをベッドの隣に作ればよいのではと思い、設計してもらいました。夜のトイレが楽になり大満足です。

トイレを広くしたため、最近移動する時につかむところが必要になりました。介護保険を利用して手すりをレンタルしていますが、とても助かっています。自立タイプなので、手すりがほしいところにすぐ置けるすぐれものです。

menu