トピックス-日本相談支援専門員協会による「災害時障害福祉コーディネーター」認定資格の養成がスタート~新たな防災体制構築に向けた第一歩~
「新ノーマライゼーション」2026年1月号
日本相談支援専門員協会 顧問
菊本圭一(きくもとけいいち)
はじめに
近年の日本は地震や台風などによる自然災害が多発しています。災害時には必ずといってよいほど、一般の方々以上に高齢者や障害のある方々に対して、大きなしわ寄せや被害の集中があることの報告がありました。例えば、周りへの気兼ねから避難所に入れないことや支給される食事の配給の行列に並ぶことができないなど、そのしわ寄せはさまざまな場面で生じてきました。そのため、日本相談支援専門員協会(以下、当協会)は被災自治体等の要請を受けながら、災害派遣活動を行う機会が増えてきており、声が上げられない障害者への支援は社会全体の課題となっています。今回ご紹介する取り組みは、このような社会の要請を受け、災害時に活動が行える人材育成が急務であると考え、被災地の現場で必要となる、知識や経験を有したリーダーを養成し、災害に備えることを目的としています。
認定資格者養成の背景と目的
阪神・淡路大震災以降、災害時における障害者支援の重要性が社会的に認識されるようになりました。しかし現場では「誰が何をすべきか」が明確でないことが課題でした。2025年5月28日には、災害救助法が73年ぶりに改正され、国が費用負担をする「救助」の種類に「福祉サービスの提供」が位置づけられることになりました。この「福祉サービスの提供」とは、災害救助の初期段階から、中長期の復旧・復興・生活再建段階に至るまで「災害ケースマネジメント」の充実化とともに両輪で実施されることになります。
当協会は、こうした状況を踏まえ、障害福祉分野(サービス)の専門性を持ち、災害時にも即応できる人材に対して認定資格を交付することで、障害者支援の社会的な認知も向上できると考えています。
また、当協会はこれまで東日本大震災、熊本地震、能登半島地震などの大規模災害時に、避難所に入ることが困難な在宅障害者に対して戸別訪問を実施してきました。例えば、東日本大震災では石巻市・女川町を中心に約1300件、熊本地震では約8700件、能登半島地震では約2380件の戸別訪問を行ってきました。これらの活動により、障害者の実態把握や必要な支援の提供、情報共有が進められました。こうした現場経験は、認定資格養成の必要性を裏付け、今後の支援体制強化にも大きく寄与することを期待しています。
災害時障害福祉コーディネーターとは
災害時障害福祉コーディネーターは、災害発生時に障害のある方やそのご家族が発災後なるべく早い段階から、安全かつ適切なサポートを受けられるよう、行政機関、福祉サービス提供団体、医療機関、ボランティア団体などと連携し、調整などを行うことになります。福祉避難所や避難先での生活環境の整備(バリアフリーなど)、必要な医薬品や福祉用具の確保、コミュニケーション支援など、多岐にわたる業務を担います。
養成のためのカリキュラム内容は、災害時の支援活動について基礎から学ぶとともに、被災障害者とその家族のニーズに合わせた配慮のポイントや重要性などについて、実例を踏まえ生きた知識を取得していただきます。具体的には、以下のような力を備える人材育成を目指します。
- 被災地で障害者に対する基礎的な生活支援が行える能力
- 所属する地域での受援力や派遣要請に対するマネジメントが行える能力
- 被災地での支援チームの掌握・マネジメントを行える能力
- 行政との折衝を含めた災害時の支援全般におけるマネジメントができる能力
- 被災地外からの派遣調整や、現地での多職種連携を担う力
- 被災地のニーズをアセスメントし、障害福祉の再構築を支援する力
- 現地の相談支援専門員と連携し、個別訪問を通じて支援を実施
- 災害支援リーダーとして、平時の業務の延長上で災害対応を考える など
二層構造による人材養成
図1にあるように災害時障害福祉コーディネーターの養成は、「災害時障害福祉コーディネーター」と「災害時障害福祉メンバー」という二層構造で行われます。メンバーはなるべく多くの人数を養成し、災害派遣活動の基礎を有して、具体的な活動を行うことを目標にしています。一方、コーディネーターは、災害発生時の派遣活動においてメンバーをまとめるリーダー役となり、被災地域との連携の中心役となることを期待して養成されます。令和7年度はまず、「メンバー」を養成することから始め(図2)、令和8年度には「メンバー」養成修了者の中から「コーディネーター」養成を行い、二層構造の基盤を整備します。そして、令和9年度以降はそのコーディネーターが中心となり、ブロックごとの養成を活発に行うこととしています。
図1 養成研修の構造
(拡大図・テキスト)
図2 人材育成計画
(拡大図・テキスト)
養成プログラムの内容
養成プログラムには、災害対応の基礎知識、障害特性の理解、現場での連携方法、受援力の向上やコミュニケーション能力の強化など、実践的な内容が盛り込まれています。座学だけでなく、シミュレーション訓練やケーススタディも重視され、即戦力となる人材の養成を目指しています(図3、4)。
図3 カリキュラムの概要1(メンバー向け)
(拡大図・テキスト)
図4 カリキュラムの概要2(コーディネーター向け)
(拡大図・テキスト)
被災地で障害者に対する基礎的な生活支援を行う能力は、災害時障害福祉コーディネーターにとって不可欠です。所属する地域においては、受援力の向上や派遣要請に対するマネジメントを担い、被災地では支援チームの掌握やマネジメントを行う力が求められます。また、行政との折衝を含めた災害時の支援全般においても、的確なマネジメント能力が必要です。被災地外からの派遣調整や現地での多職種連携を担う役割も重要であり、被災地のニーズを的確にアセスメントし、障害福祉のサービス提供体制を早期に再構築するような支援力が期待されます。さらに、現地の相談支援専門員と連携し、個別訪問などの支援を通じてDMATやDWATなどのチームと協働することも重要になると考えられます。
今後の展望
この養成のスタートは、誰もが安心して暮らせる社会を目指すうえで非常に意義深い取り組みであり、今後も多くの人材がこの資格を取得し、災害時の障害者支援の中核を担うことを目指しています。認定資格の修了者が増えることで、各地域での災害時障害者支援体制がより強固になり、平時からのネットワーク構築や情報共有も進むことが期待されています。行政や関連団体との連携も強化され、よりきめ細やかな支援体制が実現することを願っています。