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マルチメディアデイジー活用事例集

公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会情報センター
2016年3月作成

 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会は、1999年1月に厚生省補正予算事業実施のために「デイジー情報センター」(現在は同協会情報センター内「DAISY研究センター」)を設置して以来、継続して、国内におけるDAISYの普及に努めてきました。
 過去のDAISY関連事業の記録は、「DAISY関連事業のあゆみ」をご参照ください。

 当協会は、2008年9月より、ボランティ団体の協力を得てマルチメディアデイジーによる教科書を小・中学の読むことが困難な児童生徒に製作し、提供を開始しました。
 

ここでは、マルチメディアデイジー教科書を活用いただいている学校の先生の協力を得て、活用事例を掲載いたします。

2016年3月31日作成

 

 

学習障害(ディスレクシア・算数に弱さ)小学4年児童への指導
(1)本児の現状

本児は、学習障害(ディスレクシア・算数に弱さ)の小学4年生である。
通常学級に在籍し週2時間通級指導教室での指導(読み書き・算数)を受けている。1年生でひらがな学習が始まり、ひらがなの定着が悪いことから読み書きに困難さを持つことがわかった。
小学2年生から週に1時間読み書きの指導を受け、ひらがなやカタカナは、定着してきたが3年生から学習単語が増え、教科書を読んで内容を理解することが難しく学習に対して意欲が低下しやすい。意欲の低下を防ぐため学習内容の獲得のための支援が必要である。支援の一つとしてデイジー教科書を使って予習と復習を行っている。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

「パソコン」「iPad」

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画
  • 個別の指導計画は、通常学級と通級指導教室での学習上の支援ツールとしてマルチ導計画にマルチメディアデイジー教科書の使用方法や家庭学習での使用について通級での学習指導と共に学習することを記載する。
  • 個別の教育支計画には、長期目標を視野にデイジー教科書の使用教科等必要な支援内容について記載する。
(4)指導の内容
  • マルチメディアデイジー教科書の再生の仕方(パソコン・iPad)と自分に合わせた設定のしかたと使用場面を児童と共に考える。
  • マルチメディアデイジー教科書を使って、あらかじめ学習内容をつかむ。
  • マルチメディアデイジー教科書を使って漢字の読みを確認し、紙の教科書にルビをふる。
  • テスト前に学習内容を復習する。
(5)支援機器の使用効果あるいは、指導の効果と支援機器の評価
  • マルチメディアデイジー教科書を使うと学習内容をほぼ理解することができ、読めないことで学習内容が理解できないということが少なくなった。また、読める単語や熟語が増えた。
  • 学級での学習時の参加態度が積極的になった。(挙手・音読)
  • 単元末テスト(読み上げ支援)で高い点数(100〜80点)をとれる時もあり、学習への達成感を感じることができ自信がついて学習意欲の向上に繋がった。
  • 学習単語や熟語の習得がしやすくなった。
  • マルチメディアデイジー教科書を使用することで、読みへの抵抗感が少なくなった。
  • 絵本を読もうとする姿が見られるようになった。
(6)まとめと今後の課題

 読みに困難さを持つ児童が、通常の教科書を読むことは難しく、文字による情報を読み取ることは困難である。読むことができればその中にある内容を理解することができる児童である。しかし、文字を読むことに難しさを感じるため文字や文章から遠ざかる。マルチメディアデイジー教科書を使用することで、難しさを感じている児童自身に文字へのアクセスの方法を知らせることになる。それまで読めない教科書、頑張って読んでも理解できにくいため学習に抵抗感を持ち、授業での態度が悪かったが、マルチメディアデイジー教科書やデイジー化されたテストを使用し支援をすることで学習への抵抗感を減らし、達成感を持つことができた。

 通級指導教室担当と学級担任の日常的な連携によって通級指導教室での指導と在籍学級でのデイジー教科書やデイジー化されたテストを有効に活用することができた。

 今後は、本児への合理的配慮を明記している個別の指導計画や教育支援計画で支援方法を引き継ぐことが求められる。中学校での支援にも繋がるように連携していくことが不可欠である。また、本児自身が必要なときに活用できるように本児の活用技能や学習方法の選択ができるように支援していくことも必要である。

読みに困難を感じている児童への指導

長野県長野市立南部小学校 山ア 幸子 教諭

(1)本人の現況

 本事例の対象は、小学校の通常学級または特別支援学級に在籍する児童である。知的に発達の遅れはないものの、読みに困難を生じている児童である。教科書や配られたプリント教材、テストの文章が読めないために、周りの児童から理解されない、または自尊感情が低くなってしまっていた児童である。このような児童に印刷物である教科書ではない方法でアプローチしていくことが重要であると考えた。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

使用機器:

iPad 「Voice of Daisy」
パソコン 「 EasyReader Express」

特長

教科書のハイライトされた部分を読み上げる。
速度や大きさを調節できる。
教科書の挿絵や図も表示されていることから、通常の教科書と同じように使用できる。

使用した機器を選定した理由
デイジーは、日本障害者リハビリテーション協会で提供を行っているデジタル教科書である。小中学校の教科書に対応して作ってあること、フォントを大きくする、色を変えることができる、読む速さや音量を変えることができるなど、授業に合わせて視覚的にも聴覚的にも支援できる利点がある。また、登録すれば簡単にダウンロードできること、自宅や学校のPCを利用することができることなど利便性が高い。

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画

個別の指導計画は、全教科の「指導の工夫と配慮事項」にDAISY教科書の使用を記載する。また、PC環境の構築、個人のiPadの使用を記載する。また学習の状況について記載する。
個別の教育支援計画は、「学校での生活」の「必要な支援内容」の項目に、関連する学習状況を記載する。
個々の児童生徒の支援内容をデータベースに掲載して、関係教員がいつでも確認できるようにする。

(4)指導の内容
  • 近隣の小中学校の特別支援学級担任者会でデイジーを紹介
    自校では、全職員に登録のしかた、ダウンロードのし方、実際にタブレットを操作してもらう。
  • デイジーの使用法
    通常学級の児童を個別に取り出して指導をする。授業時間や朝の時間を利用した。
    特別支援学級の児童に特別支援学級にて指導する。主に国語と社会で利用した。
    自宅にて宿題の国語の音読で使用した。
    自宅にて予習に使用した。主に聞いて内容を理解することに使った。
    教科は国語、社会、理科で利用した。
(5)支援機器の使用効果あるいは、指導の効果と支援機器の評価

 デイジーの良さは、読む部分を抽出して提示すること、フォントの大きさをアレンジすることができること、背景色、ハイライトの色を変えることができること、漢字にルビがついてものを提供される教科書もあり、視覚的な支援ができることである。
 また、音声でガイドしてくれること、音声のスピードを調整することができることにより聴覚的な支援も受けることができることである。それにより、読みを促進することができ、理解力が向上した。
更に誰かに読み上げてもらうのではなく、自分で速さや大きさを調節して読むことで、もう一度読み返したい場所に簡単に戻ることができる。また、他人を気にしないで自由に操作できる。
以上から自分でやればできるという自己肯定感の向上にもつながった。

(6)まとめと今後の課題

 読みに困難を抱えている児童にとってデイジーを使用することは、読みの速度を促進させることに有効であった。また、漢字の読み間違いが減ること、語頭や語尾の読み間違いが減ることがわかった。特に予習で使用することの有効性が示された。
 保護者にデイジーの使用により子どもがどう変化したかインタビューしてみた。読むことに抵抗感がなくなり、以前に比べて意欲的に読むこと、内容を理解しやすくなった、宿題に取りかかるまでの時間が短縮されたなどが示された。保護者にもデイジーを使用することが読みの困難を改善する方法になっていると実感していることが推察される。
今後は、通常学級の中でデイジーを使用する方法について事例を積み重ねていき、検討する必要がある。更に、タブレットやPCを使用することが通常学級の中で当たり前になって、どの子どもも「できる、わかった」を実感できるような物理的な環境を整えていく必要がある。

高等部3年(肢体不自由、構音障害、中途難聴、知的障害)生徒への指導

奈良県立明日香養護学校 高等部  村瀬 直樹 教諭

(1)本人の現況

 高等部3年生(2015年度現在)のAくんは、肢体不自由があり不随意運動が原因でゆっくり行動する傾向にある。また、構音障害、中度難聴、知的障害があるので、聞いたことを理解し、思ったことを言葉にして発言するまでに時間がかかる。小学校中学年程度の漢字を読むことができる。筆記は、不随意運動で字形がゆがむうえに時間がかかる。以上の理由で、高等部入学当初は、学校生活やまわりの学習ペースにあわせることが難しく、受け身的で消極的であった。また、そのことでストレスをため、気持ちが不安定になることがあった。

 しかし、Aくんは、会話やスポーツ、本を読むことが大好きである。特にプロレスに興味をもっており、週刊誌を買って読んでいるが、ひらがなと小学校中学年程度の漢字だけを読むので、内容を理解することが難しく困っていた。

Aくんは、プロレスの雑誌をもっと読みたいという願いをあり、高等部2年生の2学期から、自立活動の時間に本に書かれている内容が理解できる方法を探し始めた。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴
@パソコン
再生ソフト「EasyReader Express」など

AiPad(10インチ)

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画

 主体的に活動できる環境を整え、自己肯定感を育てる取組を学校生活全般で行った。その一つとして、Aくんがもっている能力を使い雑誌を読むことができる方法を身につけることを目標にし、自立活動の時間に取り組んだ。

(4)指導の内容

 いつでもどこでも読めるように考え、10インチのタブレットPCを使用してマルチメディアデイジー図書などの電子書籍を音声で読み上げさせた。使用したタブレットPCの大きさだと手首を置く位置が定まらず、手指がうまく動かせず使いづらいことがわかった。一時停止など操作したいときに、気持ちが焦り目的の場所を正確にタップできなかった。

 そこで、デスクトップパソコンを使いマルチメディアデイジー図書を読むようにした。慣れているキーボードやマウスなどを使用したので、操作が楽になり、集中して読むことができた。内容もほぼ理解することができていた。理解が難しい言葉については説明した。

 繰り返しマルチメディアデイジー図書を使用すると、自分にあった読み方が文字を見ながら音声の読み上げを聞くことだということを理解することができた。難聴による不鮮明な耳からの情報を、文字を見ることで補い、漢字が読めないことを音声が補って読書ができたと考えられる。

 しかし、マルチメディアデイジー図書を使用した読書は、読みたい本が見つからず、あまり興味を示さなくなった。

 一方で、Aくんは、家庭に帰ってからプロレス雑誌の記事をスマートホンに文字入力し、音声読み上げを繰り返し聞いて楽しむようになった。読めない漢字は、母親に読み方を聞いて入力していた。入力した記事や写真を見ながら音声読み上げを聞く方法は、マルチメディアデイジー図書の機能をAくんなりに試行錯誤して再現したものであった。音声読み上げは、人に聞かせるために使用するようにもなった。これらの方法は、2年生3学期から始め、3年生3学期現在でも余暇活動として継続している。

 高等部入学当初から、学級の教員とEメールでやりとりをしているが、3年生になる頃には、内容や文章の構成がわかりやすく整ったものになった。放課後等デイサービスの連絡帳の写真や文を見て、その日にあったことを思い出しながら文章を作成し、入力していた。Aくんに尋ねると、写真と文字があると言いたいことを思い出してまとめやすいことに気づき、この方法を考え出したと教えてくれた。

 Aくんは、読書する方法を考え出したことで自信がうまれ、積極的に学校生活にかかわるようになった。

(5)効果

 マルチメディアデイジー図書を使用し、自分の特性を理解してどのようにすれば読書しやすいか学習した。その結果、音声読み上げと文字の組み合わせが自分にあっていることを理解し、実生活に活かすことができた。
 マルチメディアデイジー図書に読みたいものがない場合、どのようにすれば解決するか様々な方法が考えられる。そのうち、Aくんがおかれた環境のなかで最善の方法をAくん自身で考えることができた。普段から主体的に活動できるよう環境を整えたり、支援したりしたことが土台となり、シンプルでわかりやすいマルチメディアデイジー図書を使用して学習することで、達成されたと考えられる。
 波及効果として、自己肯定感が低かったAくんが自信をもち、積極的に様々な活動に参加するようになった。書くことによって気持ちが伝わることがわかり、文章を書くことに興味をもつようになり、Eメールや作文での文章表現が豊かになった。結果、安定した気持ちで日々を過ごせるようになった。
 Aくんは、母親ともEメールでやりとりをしているが、3年生の2学期に、初めて母親に「ありがとう」という言葉を送った。会話では伝えたことがなかったので、保護者の方も喜ばれ、視覚的に伝える大切さを実感されていた。

 

(6)今後の課題

 卒業後の進路先と連携し、身につけた力を活かしてコミュニケーションがとれるように中度難聴や肢体不自由に関する理解を深める引継を行いたい。Aくん自身についても自分のことについて説明と必要な支援を求めることができるように、さらに自己理解をはかっていきたい。

 教員にとってマルチメディアデイジー図書は、シンプルなので教科学習だけではなく、自立活動の指導や余暇活動としての読書支援、マニュアルなど様々な目的で使用することができる。柔軟に生徒の要望や成長にあわせて、マルチメディアデイジー図書のよさを活かした指導や支援にあたっていきたい。

 

通常学級におけるマルチメディアデイジー図書の活用 (小学6)

長野県上田市立神科小学校 池田明朗 教諭 

(1)本人の現況

国語と算数は特別支援学級を利用している。言葉はとても流暢に話す。漢字の読みが曖昧で、ルビを振ってあげた教科書を読む時にも逐次読みになってしまう。多動や不注意の傾向があるため、長文を読んでいる時は、読んでいる所がわからなくなってしまう。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

iPad「い〜リーダー」

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画(本人の希望する支援)

<実 態>

  1. 算数の問題が解けなくて黙ってキョロキョロしながら困っていた時、「わからない時は、先生わかりませんとか、先生教えてくださいって言えばいいんだよ。」と話すと、その後、わからない時には「先生わかりません、来てください」と言って呼ぶようになった。
  2. 自分で解けなかった国語の学習プリントの問題を、国語の教科書を教師が読んでから解いたところ、「あっ、わかった」と言って解くことができた。
  3. 国語の教科書を音読する時、漢字の横にふりがなを書いて読んだところ、つまずかずに読むことができた。
  4. 計算問題で、全体の計算を終わった筆算を見せながら説明すると「そういうことか」と理解した。
  5. 朝の挨拶をほめたところ、次に挨拶した時はさらに大きな元気な声で挨拶した。
  6. 算数で図形の問題を解けた時、「難しい問題を解けたね、すごいね」とほめたところ、「もう1問やろう」と、さらに自分から新しい問題に取り組んだ。

<とらえ>

  • 困った時に言葉で表現する方法を教えると、礼儀正しく適切に使うことができる。(1)
  • 漢字にふりがなをふったり、教師が代わりに読んであげることで、文章を読んだり理解したりすることが できる。(2、3)
  • 視覚的なヒントを与えることで自分の力で問題に答えることができる。(4)
  • 賞賛したり、自信を持たせることで、自分から積極的に活動する姿勢が見られる。(5、6)

<期待できる姿>

  • 自信を持って自分の考えを言葉で表現したり、活動に集中して取り組むことができるようになる。

<手だて>

  • 文字の学習は音声が出る文字ボードやパソコンソフトなどを使い、聴覚や視覚の得意な面を優先的に用いながら学習する。
  • 国語の教科書は朗読CDやデイジー教科書などを使いながら学習を進め、なるべく本文を暗唱しながら内容を読解していく。
  • できなかったことができるようになった時や、できなくても頑張って努力した時は必ず賞賛する。
  • 成功体験を多く積み重ね、自信を持つようにする。

<生活単元学習・自立活動のねらい>

  • 情緒の安定をはかり、静かな学習環境の中で集中して学習ができるようになる。

<教科・個別学習の時間のねらい>

  • ルビが振ってある国語や社会の教科書を読めるようになる。
  • 算数は6年生の基礎的な学習を中心に理解することができるようになる。

<保護者の願い>

  • 読み書きの力をのばしてほしい。
  • 原級との人間関係を切らないでほしい。
  • 中学校へ進学しても通級で特別支援学級を利用したい。
(4)指導の内容

タブレット端末でマルチメディアデイジー教科書を使用し、ハイライトと読み上げ機能を利用している。通常学級での一斉授業で使用し、教科書を教師が範読したり友だちが読んだりしているところを、手動でハイライト表示を動かして追いかけていく。児童が座席順に一文ずつ交代で読んでいく時には、音声再生を聞いてそのとおりに声を出して読む。
集団の中で使用する時はヘッドホン又はイヤホンを使用する。
学習している様子

(5)効果

音読が滑らかにできるようになった。自信をつけて、その後も通常学級の国語の時間に参加するようになり、単元テストもタブレット端末とマルチメディアデイジー教科書を使ってみんなと一緒に受けるようになった。

(6)今後の課題

特別支援学級在籍の児童が、通常学級の一斉指導の授業に参加できるようになった。課題として、タブレット端末とマルチメディアデイジー教科書を通常学級の中で利用するにあたり、学級内の他の児童への理解など、だれもが学べるための配慮を行う必要がある。

国語科単元テストでの活用を通して (小学5)

長野県上田市立神科小学校 池田明朗 教諭

 

(1)本人の現況

通常学級在籍の児童。視覚優位で聴覚からの情報入力がとても苦手である。教師の言語指示はあまり伝わらない。
漢字の読み書きにも困難があり、算数の文章題も計算より漢字の読みでつまずく。しかし、統計処理の能力は高く、正確にグラフを書いたり読み取ったりすることが得意である。また絵画も得意で独特の表現で描く絵はいつも絵画展で入選する。
漢字の読みでつまずくことから教科書が読めず、授業中は机に突っ伏して教科書を開くこともせず、授業や学習に意欲を持てずにいた。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

iPad「い〜リーダー」
 PLEXTALK Producer (DAISY製作ソフト)

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画(本人の希望する支援)

<実 態>

  1. 算数の問題がわからずに困っていた時、「わからない時は、先生わかりませんとか、先生教えてくださいって言えばいいんだよ。」と話すと、その後、わからない時には「先生わかりません」と言って呼ぶようになった。
  2. 計算をする時、1マスにひとつの数字を書くようにして計算したところ、位取りを間違えることなく計算することができた。
  3. 算数の文章題で、模型やブロックを使って説明すると「そういうことか」と理解した。
  4. 朝の挨拶や礼儀正しいしぐさをほめたところ、挨拶やしぐさがますます丁寧になった。
  5. 算数の問題を解いた時、「解き方を覚えたね、すごいね」とほめたところ、ガッツポーズをして「ここまでやる」と、自分から区切りの良いところまで問題に取り組んだ。
  6. タブレットとデイジー教科書を使って、音読することができた。また、面積を求める問題も電卓を使う ことで計算でつまずくことなくスムーズに解くことができた。


<とらえ>

  • 困った時に言葉で表現する方法を教えると、礼儀正しく適切に使うことができる。(1)
  • ノートの使い方をパターン化し、マス目ノートを使って字や数字を見やすく整理することで、間違いを減らすことができる。(2)
  • 具体物で視覚的なヒントを与えることで自分の力で問題に答えることができる。(3)
  • 賞賛したり、自信を持たせることで、自分から積極的に活動する姿勢が見られる。(4、5)
  • 苦手な活動は、タブレットや電卓など代替機器を使うことで活動することができる。(6)

<期待できる姿>

  • 自信を持って自分の考えを言葉で表現したり、自分の力で学習に取り組もうとする姿が見られるようになる。

<手だて>

  • 文字の学習は、大きいマス目のノートを使ったり、タブレットやパソコンソフトなどを使い、視 覚を優先的に用いながら学習する。
  • 国語などの教科書はタブレットとデイジー教科書を使って本文の内容を理解し、読解していく。
  • 苦手な計算は電卓等を使い、計算に時間をかけないようにして単元の内容を理解をしていく。
  • 賞賛する機会や成功体験を多く積み重ね、自信を持つようにする。


<生活単元学習・自立活動のねらい>

  • 静かな学習環境の中で、自分のペースで学習 ができるようになる。

<教科・個別学習の時間のねらい>

  • 6年生の漢字100字を書けるようになる。
  • 算数で、6年生の学習ができるようになる。

<保護者の願い>

  • 読み書きの力をのばしてほしい。
  • 計算の力をのばしてほしい。
(4)指導の内容

タブレット端末で総ルビのマルチメディアデイジー教科書を使用し、ハイライトとともに利用している。通常学級での一斉授業で使用し、教科書を教師が範読したり、友だちが読んだりしているところを、手動でハイライト表示を動かして追いかけていく。

児童が座席順に一文ずつ交代で読んでいく時には、読んでいる所をハイライト表示で追いかけながら、自分の番になると音読する。

学習プリントや単元テストを行う時は、DAISY製作ソフトウェア「PLEXTALK Producer(プレクストーク プロデューサー)」で自作した学習プリント又は単元テストをDAISYデータ化し、利用する。例えば国語の単元テストでは、テストの上段部分は、マルチメディアデイジー教科書をテスト出題範囲部分から頭出しできるように設定したものを用意し、テスト下段の問題文は教師が自作しDAISYデータ化してもう1台のタブレット端末で再生できるように用意し、合計2台のタブレット端末を使用する。
表

 

(5)効果

タブレット端末とマルチメディアデイジー教科書を使用することで、学習への意欲が出てきて授業中も発言をするようになった。単元テストでは、今まで0点又は10点だったものが、75点をとることができた。「僕、漢字さえ読めればいいんです」という本児からの訴えどおりの結果となった。
*

 

(6)今後の課題

読むことに困難を持つ通常学級在籍の児童が、授業や学習への意欲が持てるようになり、授業態度も変わった。「PLEXTALK Producer」を教育現場で活用するための課題として、あまりICTに精通していない教師にも利用できるような操作の簡易化、そして、単元別の学習プリントや単元テストをテキストファイル化した、ベースになるデジタルコンテンツの整備があげられる。

宿題プリントでの活用を通して (小学3)

長野県上田市立神科小学校 池田明朗 教諭

 

(1)本人の現況

特別支援学級在籍の児童。漢字以外は逐次読みできるが、言葉のまとまりとして読むことは困難である。流暢に会話し、言語による指示もしっかり理解できる。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

iPad 「い〜リーダー」
PLEXTALK Producer (製作ソフト)

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画(本人の希望する支援)

<実 態>

  1. 日直当番のときは、日めくりをしたり、ホワイトボードに給食のメニューを書き写したりしていた。
  2. ひまわりの教室にすすんで勉強に来て、予定をひとつひとつ聞いて確かめていた。
  3. お手本があると、文字をていねいに書くことができる。
  4. 算数の計算問題はひとつひとつ○をすると、一生懸命やろうとしていた。
  5. タブレットで国語の教材を何回も読むと、内容を理解して質問に答えることができた。
  6. 調理活動を喜んでやり、用意やかたづけをすすんでやっている。。
  7. 朝は、クラスの仲間と校庭に出て、元気に遊んでいる。


<とらえ>

  • 自分の仕事を一生懸命やる。(1、6)
  • 見通しをもち、安心できると活動することができる。(2、3、4)
  • 聴覚優位で、文章を聞いて簡単な質問に答えることはできる。(5)
  • 調理や手芸などの活動を通して、学習に積極的に取り組む姿勢が見られる。(7)
  • 人にすすんでかかわろうとしている。(7)


<期待できる姿>

  • 一人でできる学習がふえ、自信がもてるようになる。


<手だて>

  • 気が散らないように集中できる環境を整えて、簡単な問題を一人で進められるようにしていく。
  • 自分からすすんでやろうとしている時は必ず褒め、成果が見てわかるようにしていく。
  • 手や指を使ったいろんな活動を通して目と手の協調性を高めながら、学習をすすめていく。
  • タブレットとデイジー教科書を使って、音声再生をしながら文章を読むようにする。
  • ビジョントレーニングを取り入れ、目で物を見ていく力をつけていく。
  • 調理活動や販売学習等を通して、人とのかかわりから、社会性が持てるようにしていく。
  • スモールステップで成功体験を積み重ね、自信が持てるようにする。


<生活単元学習(作業学習)のねらい>

  • 製作活動を通して成功体験を積み重ね、自分からすすんで活動するようになる。
  • 調理活動や販売学習を通して食べ物を作る喜びや人とかかわる喜びを知り、お金の計算や、用件を伝えることができるようになる。

<教科・個別学習の時間のねらい>

  • 指をしっかり動かして計算問題に取り組める。
  • 語彙数を増やし、日常生活に必要な指示や単語がわかるようになる。
  • 右と左がわかり、安全に気をつけて生活できる。

 

<保護者の願い>

  • ひらがな・カタカナが読めるようになってほしい。
  • 計算力をつけてほしい。
  • まわりの人を思いやる気持ちを大切にしてほしい。


(中学校、高校もタブレット端末とデイジー教科書を使いながら学習をさせてもらいたい)

(4)指導の内容

DAISY製作ソフトウェア「PLEXTALK Producer(プレクストーク プロデューサー)」で自作した宿題プリントをハイライトと読み上げ機能で利用する。児童は宿題データを入れたタブレット端末と宿題プリントを持ち帰り、自分でハイライト表示や音声再生をしながら宿題を行う。

画面

 

(5)効果

タブレット端末で宿題を持ち帰るようになり、自分の力で宿題プリントができるようになった。母親や教師が側で読んであげなくてもできるようになり、学校から家に帰るとすぐに宿題を始め、宿題を終えた状態で夜は家族と過ごすという、良い生活リズムまで作ることができるようになった。

(6)今後の課題

読むことに困難を持つ児童が、母親が側にいなくても自分の力で宿題プリントを行うことができるようになった。課題として、個人で購入していただいた家庭のみで実施しているため、今後、タブレット端末の購入補助など公的な援助があることで利用児童が増えるものと思われる。