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マルチメディアデイジー活用事例集

ここでは、マルチメディアデイジー教科書の活用事例をご紹介します。

 

令和2年12月12日開催の事例報告会資料(PDF)はこちらから入手ください
平成31年2月24日開催の事例報告会から2つの活用事例をご紹介します

当協会が主催したこの事例報告会では、読みの困難のある児童生徒へのデイジー教科書を活用したICT支援の実践、導入について、当事者、支援者それぞれの立場から有効な事例をご報告していただきました。

なお、掲載されている情報は、平成31年2月24日発表時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

デイジーユーザー大学生からの提言

小澤 彩果(立命館大学情報理工学部)

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立命館大学情報理工学部の小澤彩果です。デイジーユーザーからの提言、体験報告をします。

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私は、2008年教科書バリアフリー法制定に向けた、デイジー教材の有効性の検証プロジェクトのモニターを務めた小学生の1人でした。
私は、デイジー教科書第一世代ですが、同世代の1人も、現在私と同様に大学生となっています。

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このデータは、視線を記録する機械で、外国人児童の読み能力検査をしているプロジェクトのお手伝いをした際に、私も被検者になって取ったデータです。
この赤い丸は視線が留まっているところで、大きくなればなるほど、長く留まっていることになります。「かば」の話ですが、私が、初見で、初めて読むと、「かば」を「カバン」と2回ほど読みまちがえてしまいました。かばの鼻の話が出てきてから、誤りに気づき、修正することができています。このように、私の場合、とくに平仮名は苦手です。

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小学校2年生の夏休み、本を5冊読み感想文を書くという宿題がありました。
両親の前で、『わかったさんのドーナツ』という絵本の見開きページを読むと、10分以上かかりました。
両親は、それで何かおかしいと気づいたそうです。
その夏は、父親と読みの特訓をしました。結局、上手に読めるようにはなりませんでしたが、自分自身、読みが苦手なことを自覚させられる良い機会になりました。
特訓の中、区別が難しい言葉がありました。

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たとえば、「今日(きょう)」と「昨日(きのう)」の「よ」と「の」は、ともに、くるっと書きますが、私にとっては、その2つの区別が難しかったのです。
似ているように見えてしまうのです。
現在は、短い文章であれば、読めるのですが、それでも、長くなり大量になると読めなくなってしまったり、他の行と混ざってしまって、別なところを読んだりしてしまいます。

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注意力を維持して読むのにエネルギーを要するため、長時間、文字を見ていると、ピントが合わなくなって、焦点がずれたりして困っています。

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さて、小学校3年生からは、大阪医科大学LDセンターに隔週で通えることになりました。
「弱いところを伸ばすのではなく、強いところを伸ばすことが大切」という指導方針でした。
ここに示したのは、センターから親に渡された助言コメントの写しです。
「文節切り」「漢字へのルビふり」についての重要な指摘があります。
ただし、漢字のルビふりですが、私の場合は、ひらがなが読みにくいので、「ルビ」では困ってしまいます。
この点、音声が付いたデイジー教科書による支援は、高学年になってから始まりましたが、とても助かりました。

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3年生から6年生まで、隔週で4年間、LDセンターに通い、間違い探し、想像力、説明力、時間管理など、様々な「できるところを伸ばすトレーニング」を行いました。
これは、漢方薬のようにじわじわと効果があったと思います。

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この間、母親が読み聞かせなどを行ってくれました。また、音読の宿題では、母親と1文ずつ交互に読んでもらっていました。これにより、授業で当たった時は、覚えていて読むことができていました。こうした家庭での配慮には、感謝しています。

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さて、デイジー教科書と出会ったのは、小学校5年生の冬で、高学年になり、教科書の厚くなってきたころでした。
小学校の時は、「音読の宿題」のために使っていました。
中学校と高校は、テスト勉強を行うために教科書を読むのに使っていました。
パソコンや、iPod touch、iPadを使って、様々なアプリで、デイジー教科書を読んできました。
学校の中では、あまり使っていませんでした。
使わなかった理由としては、そういった方法に慣れていなかったことと、教科書に関しては事前に学習ができたからです。
しかし、道徳の授業などで、その場で資料を渡されるものは、黙読と言われると時間内に全て読みきれませんでした。先生が音読してくれると助かりました。
高校では、先生によっては、自習時間に音楽を聞いてよかったので、そこでみんなと同じようにイヤホンをして、デイジーを使っていました。

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デイジー教科書を利用して良かったことは、誰かの手を借りなくも、自力で勉強できることです。
私は小さい時から、本は大好きでした。しかし、ずっと、身近な人が読んでくれるのを聴いていて、自分で読むのは苦手でした。でも、デイジーに出会って、自分で読める、もっと読もうという意欲がわいてきました。しかし、デイジー化されている図書は限られました。そのため、同世代と比べると、今でも語彙力がないと自覚させられています。
また、音読の宿題では、デイジーで3回読むと、自力で1回音読したのと同じという約束だったので、LP Playerという再生ソフトで、早回しにして聞きました。早く遊びたかったからです。
2倍速くらいでしょうか。いわゆる速聴です。そうした速聴が能力開発にもなったように感じています。

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デイジー教科書を使うことによって、教科書の内容理解も深まり、成績も向上しました。また、短い文章であれば自力で読めるようになりました。
できないとあきらめてしまうのではなく、何事もチャレンジしてできるか試していこうとする姿勢を身につけることができました。
できるところが伸ばせた分、できないことも、いっそう補えるようになりました。
ポジティブな姿勢が好循環したと言えるでしょう。

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公立中学での配慮は、ほぼ、ありませんでした。そのためか、「自分の力で乗り切ろう」という気持ちはかえって強くなりました。もちろん、デイジー教科書がなければ、そのようにポジティブな気持ちにはなれなかったと思います。テストでは、まったく配慮がなかったため、読解を基本とする問題(国語や数学文章題)は、苦手でした。問題文の量から、全て解ききることができなかったり、問題の読み間違えから、分かっているところが解けなかったりと、テストでは苦戦しました。
とくに、行間を詰めた行は読めなかったり、強調部分の下線がどこについているか分からないといったことがありました。下線で強調するより、その文字に色をつけてくれた方が私にとっては嬉しかったのです。また、拡大するより、行間を広くしてもらった方が見やすくなったのです。そのためには別紙で作ることになるので、こうした配慮はありませんでした。
そんな中学生活のなか、素敵な本との出会いもありました。ハリーポッターシリーズです。
サピエ図書館で、文字テキストが付かない音声だけのデイジー図書が入手できることを知って、その音声デイジーと本を使って、ハリーポッターを自力で読むことができました。
これによって、ハリーポッターの世界をよりリアルに感じることができ、本の世界を楽しむことができました。

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高校は、私立校でした。その学校としては、ディスレクシアへの対応は初めてと言われましたが、とても親切な配慮がありました。大学入試で困らないようにと、試験時の配慮が導入されたのです。デイジーでの試験の支援はなかったのですが、別室、時間延長1.3倍、テスト用紙拡大で受けることができました。また、テスト後に、テスト用紙や時間について丁寧に保健室の先生とやり取りしてもらっていました。ただ、たいへんだったのは、高校の教科書になると、簡単にデイジー教科書が手に入らないという点です。これは、現在でも大きな課題として、日本社会に横たわっています。
私の場合は、日本ライトハウスのご厚意で、必要な教科書をデイジー化してもらっていました。

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このような配慮もあり、高校時の成績と特別入試で、大学に現役で進むことができました。
しかし、センター試験では、特別配慮としてデイジーの使用を申請しましたが、事務局は、「デイジーって何ですか」という冷たい反応でした。
結局、高校で実施されていた試験配慮の範囲内で認められました。これもとても困る問題だと思います。

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私がセンター入試を受けたときに、人による読み支援を受けた方が1人いたそうです。拡大や、時間延長よりは、読み上げてもらえる方が良いのですが、大学の先生に読んでもらうとなると自分の好きな箇所を何度も読んでもらうのは、言いにくい人もいるのではないでしょうか。デイジーを用いれば、自分自身の好きな箇所を何度も好きなタイミングで止めることができ、繰り返し聞くことができます。
また、同じタイミングで受ける試験で、公正さも必要になってくる試験だと思います。1人なら対応できるかもしれませんが、複数人にそのような条件の受験者が増えた時、全員に同じ条件で受験させることはではないでしょう。デイジーを使えば、同じ音源を使うことで同じ条件で、その受験者自身のやりたい方法、タイミングなどの自由度を上げることによって、公正さも保てるのではないだろうかと思います。
私の場合は、人が読むスピードだと、試験時間の中で受けることができないので、早くして読みたいです。スピードを速くするにしても、ピッチを変えることで、聞きやすい音にする必要性もあるでしょう。 先ほども、少し指摘しましたが、この間、デイジー教科書による読み支援については、力が入れられてきましたが、成績評価のためのテストの音声化を実施している学校は、ほとんどありません。
このためにも、率先して、センター入試ではデイジーを導入してほしいです。
それによって、初等・中等学校でも、大学でも、その入学試験や日常のテストで当然の配慮とされる日が早まると思います。
センター入試で特別配慮の申請に伴い、読み困難の診断書が認められました。その際実施した、大人向けの検査、WISC4の結果を個人データですが参考のためにお見せします。(これについては、個人情報保護の観点からデータを省略します。)

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デイジー支援を受けてきた私は、なんとか、大学生になることができました。入った学部は、情報科学系学部だったのですが、入学して半年間の配慮は十分と言えるものではありませんでした。
両親と大学学部との半年ほどの交渉の末、1回生の後期から、やっと、試験時に、PC読み上げと用紙拡大、時間延長を別室と組み合わせて実施してもらえるようになりました。
現在、大学の定期テストでは、デイジーは使っていません。
合成音声でテキスト読み上げるソフトを使って、試験を受けています。
このソフトは、読みが完全には正確ではないうえに、キーボードを使って、読み上げる位置を動かし、調整しないといけないので使いにくさがあります。
また、自動で上から順に読み上げるようにもできますが、途中で止めると最初から再スタートするようになっています。
このシステムは、1行ずつの時でも同じようになります。
大学には障害学生支援室という制度が整ってはいるのですが、そもそも、ディスレクシア学生は大学に入学してこないと思っているように感じます。
図書館でも、特別な配慮が始まりました。しかし、テキストデータ化できる量が制限されていたり、最低でも1ヶ月かかったりするために利用していません。
過去に利用者がテキストデータ化を希望したものは全ての利用者が見ることができますが、利用者のほとんどが文系学生であるために、理系学生が利用する本は上がっていません。
このように、まだ支援環境は十分とは言えません。

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情報系学部にいるということもあり、大学生になって、様々な自立に向けての「ツール」や技法を身に付けることができました。
しかし、教科書や参考書は、図書館にあらかじめ、私たちディスレクシアでも読める形式のデジタル図書化を、ぜひ、希望したいです。
教科書や参考書を買うときは、テキストデータ情報が手に入るものを現在は選んで買っています。
また、研究室に配属されてからは、輪講で使用する本などは、スキャンしたものを全員が利用できます。
テキスト化されていなくても、自分で、スキャンするより、スキャンされたものの方が、OCRがテキスト化しやすいので、とてもありがたいです。

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ディスレクシア大学生の支援では、大学図書館が果たさねばならない役割は大きいと思います。
私の大学図書館では、医師の診断がある人に対して必要な資料や図書のデジタルデータ化のサポートが認められています。
しかし、そのデジタルテキストもすぐには手に入らない点や、冊数が限定されるので、私は有効な活用はできていません。
紙媒体からデジタル化は時間がかかるので、デジタルデータを入手したいのですが、出版社からはもらうことができません。
私は、著者である先生から直接データをもらって、自分でデイジー化しています。
図書館に対しては、授業の教科書・参考図書は、デイジー化してほしいと思います。そもそも、著者である大学研究者は率先してデイジー化すべきではないでしょうか。
理系図書も、新しい技術を活用して、デイジー化していってほしいです!
EPUBはデイジーの最新規格ですが、音声シンクロは必須です。その機能を使いつくして、アクセシビリティを最大限追求してもらいたいと思います。

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大学図書館関係者には、たんなるテキストデータ化で良いとする考えもあるようですが、それは間違いです。デイジー化を利用者個人に任せるのも、非効率的です。大学図書館が、責任を持った合理的配慮の仕組みが必要だと思います。
難しい語彙の読み、図表などの説明付加、高度な数式などは、正確な読み音声やデータが組み込まれていないと、読めないのです。デイジー化には、デイジーを作成する様々なツールを使った専門技能が必要です。
こうした技術を持つ専門家が大学図書館には必須です。

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ディスレクシアは文字が読みにくいのですが、その原因としては、眼球の運動に問題がある場合や、文字の認知に問題がある場合があるそうです。しかし、支援が整えば、そうした困難を乗り越えることができるのです。 近眼の人が、「めがね」をかければ、見えるのと同じです。
メガネのようにみんながその使い方を知ることができ、必要な人は誰もが利用できる環境を作るべきです。

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私は、親、学校、塾、支援者、そして、デイジーとその他のツールに支えられて、非常に恵まれた環境にいれたことを感謝しています。
親の中には、障害なんて自分の子が持っているわけはないと支援を拒絶したり、環境を整える努力を怠ったりするケースもあります。私は、親の意識も大切だと思います。
デイジーと出会い、デジタル支援ツールの可能性を体感的に理解ができました。
しかし、今まで説明してきたように、社会として解決してほしい問題も残っています 。
学ぶことが嫌いな人は、いないと思います。しかし、読みにくさのために、学校生活で不幸になってしまっている子どもたちはたくさんいます。
みんなが自信を持って、勉強できる環境を、ぜひ、作っていきたいと思います。
私も、「障害が障害とはならない世界、支援が特別扱いではなく、普通だ、当然だという世界」 になるように貢献していきたいと思っています。

以上です。

マルチメディアデイジー教材の導入活用事例

金森 裕治(大阪教育大学 特別支援教育講座 特任教授)

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マルチメディアデイジー教材の導入活用について、紹介します。

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2009年9月に大阪マルチメディアデイジー研究会が発足しました。
発足当時は、3〜4名でしたが、今は、20〜30名です。目的は研究、副読本のマルチメディアデイジー化、シンポジウム、論文発表、月1回の研究会を実施しています。

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自主シンポジウムの実施ですが、日本特殊教育学会52回大会では、マルチメディアデイジーを利用した研究、53回大会では、社会科副教材のマルチメディアデイジー化、55回大会では試験問題のマルチメディアデイジーに関して発表しました。
今年度は、文科省から助成頂いた、読み困難さの評価指標を用いてに関して発表しました。

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日本LD学会では、第24回は製作ソフトを用いた自主教材の製作・活用等で発表しています。

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このスライドは、社会科副読本をデイジー化した実績ですが、最初にしたのは、大阪府富田林市です。今年度は奈良市の副読本等をマルチメディアデイジー化しております。

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これから、試験問題のマルチメディアデイジー化に関する実践的研究をお話ししたいと思います。

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大阪市内の小学校、現在6年生の男児です。

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2年生のとき、母親から聞いたのですが、九九を覚えられない、漢字も授業では書けるがテストは白紙。本を開いて暗記した内容を発表していたそうです。

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3年生になると内容量も増えて授業についていけなくなり、無気力に近い状態でした。

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その後、大阪医科大のLDセンターに通院し、ディスレクシアという診断がおりました。そんな時に、たまたま大阪市の教育センターで、私の研究室のゼミ生が母親に会う機会があり、私に繋がって支援が始まりました。

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私はまず小学校に行き、お話をしました。そのあと、母親が息子さんに聞いて、「文字が読みにくい、かきにくいってこんなこと」のDVDをつくって、クラスで見てもらって理解を得て、4年生3月にデイジータブレットの授業持ち込みがOKになりました。

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「担任の先生からは、授業の態度が変わった。母親からは、家でも授業の話をしてくれるようになり、デイジーを用いて読もうとする姿勢が現れてきた。」とのことでした。

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そこで、私がテストをデイジー化しましょうか、と提案すると、是非、と言われました。
紙ベースだと、15/200点程度の得点が、デイジー化して提出すると、点数が115/200点と上がりました。読めばわかるのです。

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4年生までは業者テストが、カラーでしっかりした活字で書かれていたが、5年生になると、手書きに近い業者テストです。
彼はほとんど読めない、なんとかして欲しいといってきたので、デイジー化しました。彼は理科が得意で、4年生3学期には、約6割ほどだった点数が、デイジー化すると9割近く取ることができるようになりました。

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これは、5年生になってはじめて100点満点を取った算数のテストです。私のところに持って来てくれました。本人も非常にうれしそうでした。

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これは、5年生の1年間をふりかえったもので、「楽しい」という字です。下に、「今年は楽しかった」と書いて、これも私のところに持って来てくれました。

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業者テストの製作・再生の流れです。
「プレクストークプロデューサー」を用いて制作し、iPadの「いーリーダー」で再生していました。その場合、分節ごとに区切って提供していました。その後、句読点で区切って、提供しました。
来年度は中学校に行きますが、ほとんどの中学校はWindowsタブレットを使っています。中学校の先生方は、大体、テスト前日もしくは当日の朝にしかテスト問題ができないことがあるので、初めは、Windowsタブレットのアドオンソフトの和太鼓での再生を考えていましたが、最新のワードに対応していないこともあり、「よめるんです(OMELET)」で提供しています。
よめるんですは、大阪教育大学の仲矢先生がつくられたものです。今、よめるんですでワードでつくったものを入れて、彼にテストをやってもらっています。

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活用を踏まえた今後の課題です。
子ども達の学習を保障するためにも合理的配慮に基づく教材等の提供が必要です。そして、製作者への負担軽減が大切です。効率的製作方法、分担方法の研究や、製作アプリケーションの機能の充実が必要です。
また、個別の指導計画・個別の教育支援計画へ記入して、実績を残すということも大切です。そして、教職員や友達の理解が必要だと感じました。
彼の夢なんですが、模型会社のタミヤに入りたいと言っていました。彼の夢ができるだけかなうように、少しでも力になれたらいいのかなと思っています。

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2つ目の事例です。「合理的配慮に基づくデジタル教材を活用した知的・発達障害児に対する性教育の事業―男女共同参画の観点から−」です。私が、研究代表者になっています。

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目的は知的・発達障害を有する児童・生徒への性教育への合理的配慮とは何か。また、その教材とは何か。知的・発達障害を有する児童・生徒への合理的配慮に基づいたマルチメディアデイジー化された性教育教材の開発ということで取り組みました。

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大阪府八尾市においてアンケートをとりました。そこには、知的・発達障害を有する児童・生徒へ合理的配慮を実施している例は5割を切っている結果がありました。この現状を打開するため、現場の教師が試行錯誤しているのが現状でした。

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マルチメディアデイジー化したのは、「わたしのはなし」と「おちんちんのえほん」と「あっ! そうなんだ! 性と生」の3冊です。そのうちの「わたしのはなし」という女の子用の性教育の本ですが、母親からご要望がありましてつくって提供しました。
たまたま新聞にも載りました。
この児童は母親と一緒に、「わたしのはなし」を読みながら自分が嫌なことをされそうになったら、「やめて」という言葉が初めて口から出てきたということで、母親に非常に喜んでいただきました。この新聞記事に載ったとき、いろんなところから問い合わせがありましたが、著作権の問題ですべてお断りしました。
この女の子にどういう支援をしたかをご紹介したいと思います。この子には、絵日記を描いてもらい、両親の声をICレコーダーにとっていただき、私がデイジー化しました。この子は知的障害で自閉症の女児で4年間支援をしていまして、月1回、父と母、本人の3人が私の研究室に来ます。
この児童は4年の間、いろいろ支援したところ、読みが、感情こめて読めるようになった、その事例を見ていただきたいと思います。動作を伴い、感情表現が豊かになって、読むことができる、ということで学生10人位にプレとポストを比較してもらいましたが、学生が言うには、自分たちよりもはるかにうまく読めるね、ということでした。 今、放課後デイサービスに行っており、そこで児童4〜5人の前で、先生の代わりに紙芝居を読んでおります。成功した例の1つかな、と私は思っております。

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今後の課題は、マルチメディアデイジーの啓発です。そして、マルチメディアデイジーで製作したものを著作権の問題なく利用希望の方にお届けするために、本学の図書館と連携して、国立国会図書館にアップすることを予定しています。後は、効率的なデジタル教材の製作と思っております。

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これからが、平成29年度の文部科学省で、読み書きに困難のある児童生徒に対するマルチメディアデイジー教材に関する教材開発の話題で、小学校1、中学校2校に協力いただきました。

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マルチメディアデイジー図書の教育上の課題として、その内容選定や、機能調整のための評価指標を作成されてないので、評価指標の作成が研究目的の1つ目です。2つ目は、マルチメディアデイジー図書活用後の学習評価方法の構築です。3つ目は、マルチメディアデイジーデイジー教材を活用するうえで、障害のない幼児児童生徒や保護者や教員の理解が進まないということで、理解、啓発のアニメーションをつくりましたので、見ていただきたいと思います。
ビデオはこのリンクをご覧ください
こんな紹介ビデオをつくりまして、ある小学校の5年生の1組から4組のクラスで、これを実践させてもらいました。たまたまそこの教室に、通級指導教室に行っている児童がいて、みんなから変な目で見られていたが、今日紹介してもらって、みんなにわかってもらえて非常にうれしいと言ってくれました。
もう一つ、保護者や教員の理解が進まないということですが、これについてもビデオを製作中です。どこかの学校あるいは学校の保護者会で実践できたらいいのかなと考えています。

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文部科学省からは、マルチメディアデイジーはいいと言われるが、客観的なデータで評価できる評価方法の確立の依頼を受けました。
1つは、トビーのアイトラッカーをつかって視線追尾もしています。これが読み書き困難さのアセスメントの1つとして、導入前と導入後の変容を評価しています。

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読み上げ文には横書きと縦書きがあります。分かち書き文と通常文があります。もちろん、これらは初見ですので、1つ前の教科書もしくは2つ前の教科書から学年相応の説明文の文章を取り出してつくったものです。
みんな見ていただくといいんですけれども、やはり分かち書きと通常文では、通常文では点の数がたくさんあるということで停留点が多い。私たちは3〜5文字ぐらい先を、先へ先へと読んでいきます。
こんな感じで、停留点がどれだけあるのか、停留時間は平均どのくらいか。普通、停留点は前へ前へと読みますが、戻る、逆が何回あるかとか、「はい、読んでください」といってから、読むまでの時間を潜時と言いますが、その時間を測ったり、文章を最初から最後まで何秒かかって読んだか、読み誤り、飛ばし等、それらを、すべてチェックして評価しています。

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音読及び視線の追尾検査ということで、1つは、停留時間で平均が出ています。単位はmsです。 パフォーマンススコアは、正解の文字数×読み時間分の正解の文字数。パフォーマンススコアが大きいほど、ちゃんと読めている、これを計算して評価しています。音読潜時はありますが、はい、読んでくださいと言ってから、読むまでの時間をはかって評価しています。
一般的に読みに困難のある子たちは、はい、読んでくださいと言ってから、しばらくしてから読む傾向が多いですね。
導入前、導入後で比較します。現在、導入後をまとめているところです。

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2つ目は、標準読み書きスクリーニング検査で、STRAW-Rを使っています。 音読の流暢性ですが、単語のひらがな、カタカナ、その所要時間などから、とても低い、という評価になっています。非語もとても低いといった評価になっています。文章も同じように、とても低いという結果になっています。

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もう一つ、STRAW-Rで読みの正確性もはかっています。
この方はカタカナがとても低い結果が出ています。

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それ以外に中学生については、URAWSS-Englishを使っています。E→Jの正当数がゼロということは、何もできないということです。2番目の方は、20分の2です。
J→Eは、課題も正当数がゼロで、もう一方は、3/20で、とても英語が苦手な生徒です。英語が本当に苦手という生徒は、うつぶせて時間が過ぎるのを待っている。あるいは、固まったように全然鉛筆が動かない生徒たちが多いです。

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それ以外に、URAWSSUもとっています。
書き課題、読み課題、内容理解問題があります。
DEM検査も、視線追尾のところでとるようにしています。

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ATLANは、適応型言語検査で、本学の高橋先生が作られました。
語彙力がないと読めません。その言葉がわかれば、おそらくすっと読めたであろう。
ATLANにはいろんな検査がありますが、語彙力がどれくらいあるのか、語彙力を調べた上で、それの読みや理解への影響をとっています。
これも、わずか何か月かで、7〜8か月くらいではっきりとは出にくいが、全員が前より良くなっている傾向があります。

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自尊感情測定尺度、これは東京都版です。
この人の場合、自己主張・自己決定が1.29で低い。関係の中での自己も低い。一般に、読み書きに困難のある児童生徒は、この自尊感情測定尺度は、最初は結構低い児童生徒が多い傾向があります。先生方はこの結果を見て、日ごろ楽しくやっているのだけど、こんな自己評価をしていたのか、と驚かれる先生が多いですね。支援をして、ある程度読めるようになると、結構それぞれの評価が上がっております。

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一部だけですが、デイジー機能調整ということで、文字の大きさ、行間の広さ、など、コメントを添えて、それぞれの児童、生徒さんの担当の先生にお知らせして、ということをやっております。
これは去年の女の子の場合で、非常に逐次読みの傾向が強い方です。最初は昨年の10月です(視線追尾動画)。自信が無いので声が非常に小さいんですね。次は、今年2月にとったものです(視線追尾動画)。こんな感じで、停留点の数も少なく、比較的、どういいましょうか、先へ先へ行っているかと思います。こんな感じで実際の視線がどういうふうに変容したのか、を評価し、本人にも、担当の先生にもお知らせしていることです。

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事例1は、1文字ずつ逐次読みです。テストや問題文が読めなくて、止まってしまう。
お話しを時系列で、できるようになったことに、私もびっくりしているんですが、自信をもってがんばっている児童です。

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事例2は、中学生の例ですが、「わたしと小鳥とすずと」を渡しました。
この男子生徒は暗記ができないので、先生は他の子にあてる。それではということで覚えていただき、最後に先生の前で立派に発表できたということで、最後には、Vサインを出してビデオに映っています。

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事例3は、英語の読みに困難がある生徒です。提供されている教科書は、1文で読ませるところが多いんですね。そこで、1つずつ単語をハイライトをさせて、提供したんです。そして、1文で読ませる。
すると、非常に喜んでいただき、読める生徒が増えたということでした。
まだまだ読めない子がいる。どうしたかというと、英語にルビをつけて、と言われたんです。
そうして提供したら、読めるようになった、ということで、その子は、高校入試を控えて、3週間で単語を紙ベースでは60点しかとれませんでしたが、デイジーで提供したところ、最初単語、そのあとルビをつけて発音し、そのあと日本語を表示する、ということで提供した。
すると、2回聞いたらみんな覚えちゃって100点取って、高校受験に成功し、高校に行っています。お話を聞く限りでは、中間、期末は67点ぐらいとれて平均点よりも上だと、えらい頑張っているということを聞いています。

以上

平成30年3月23日開催の事例報告会から3つの活用事例をご紹介します

当協会が主催したこの事例報告会では、読みの困難のある児童生徒へのデイジー教科書を活用したICT支援の実践、導入について、学校現場や教育委員会などそれぞれの立場から有効な事例をご報告していただきました。

なお、掲載されている情報は、平成30年3月23日発表時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

大阪市教育委員会

事務局指導部 インクルーシブ教育推進担当 総括指導主事 平岡昌樹

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本日は、この発表の場を与えていただきありがとうございます。
今日の参加者の3分の1が教育関係者、3分の1が保護者、3分の1が製作ボランティアの方だと聞いております。あとで数字を発表しますが、今年度、大阪市教育委員会でデイジー教科書を一括申請させていただき、約100校の小中学校で460名くらいの児童・生徒が今年度、デイジー教科書を活用することができました。

これはデイジー教科書を製作していただいたボランティアのお力がなければ、こういう教科書に子どもたちが触れ合う機会がなかったと思います。本当にありがとうございました。また平成30年度以降も継続して利用していただきますので、またお力をおかしください。

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本日の内容です。
まず、最初に大阪市の宣伝をさせていただきたいと思います。
大阪市の特別支援教育の宣伝をし、その後、デイジー教科書に関わる本市の取組を説明します。

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大阪市の学校園数です。
表のとおり幼稚園54、小学校が290、と表の通りです。政令市は全国で20ですが、人口は横浜市についで第2位です。学校園数も2番目に多いです。

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特別支援学級数は、大阪市は政令市の中でも一番で、横浜市を抜いています。
小学校は290あり、特別支援学級は1,167学級です。中学校は130あり、特別支援学級は472校です。

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幼児、児童、生徒数は少子化で減少していますが、特別支援学級の数と在籍児童生徒数は増えています。
デイジー教科書は特別支援学級だけではなく通常学級でも多く使われていますが、このような在籍状況だということをお知りおきください。

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そういう特別支援学級を含め、支援の必要な児童生徒に大阪市がどのように支援しているか、説明します。
1つは巡回相談。

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指導主事、OT、STなど専門の療育士が学校をまわる制度です。
インクルーシブ教育推進スタッフ、これはOB、OGの先生方を特別支援学級に派遣し、特別支援学級担任を支援する事業です。

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特別支援教育サポーターは、いわゆる特別支援教育支援員です。
大阪市内には577名配置しています。大阪市キャリア教育センターは昭和36年にできた中学校の特別支援学級の生徒向けの職業訓練の施設です。

医療的ケアのあるお子さんが大阪市内に40名くらいいて、通常の小中学校に通っています。そこに看護師を派遣しています。

このように、教育委員会で学校園を支えています。あとは教員研修。私がいるポジションです。

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これは中学生に対するキャリア教育センターですが、職場体験実習をしています。
大阪市内の特別支援学級に在籍する中学生と、一部、支援学校の中学部・高等部の生徒にも門戸を開き、職業訓練をしています。おしぼり加工、ピッキング作業、印刷製本の実習を行う機会がが年に2日ぐらいあります。希望すれば実習ができることになっています。

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いろいろな研修があります。全教員向け対象、新任教員向け、手話条例ができたので手話講座等もしています。
28年度からは、これにデイジー教科書の研修も加えています。あとで説明します。

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学校教育ICT活用事業ということですが、実は大阪市では平成28年9月から、全部の小学校・中学校、420校に授業用ノートパソコンを、普通教室の全教室に入れました。

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普通教室は全教室ノートパソコンが1台あります。プラス、Windowsのタブレットを40台ずつ学校に整備しています。
全児童生徒に1台ずつはないのですが、各学校に少なくとも40台のタブレットがあります。それと各教室に授業用パソコン、そして各教室にはパソコンを映し出す大型モニタ、プロジェクターが整備されました。

導入されているアプリケーションです。基本はofficeです。あとは無料のアプリケーションです。

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大阪市教育委員会では、特別支援教育についてICTにかかる取り組みを平成26年からはじめていまして、文部科学省からお金をいただき、支援機器の教材活用の事業を26年度、27年度、おこないました。
28年度には特別支援学級でタブレットを活用した研究も実施しました。その上でデイジー教科書の普及促進にかかろうと思いました。

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文科省の、障がいを利用とする差別を解消する対応指針です。これと同じようなものを大阪市でもつくっています。まさしくこの通りのことを文部科学省もいっているので、ICTを使わなくてはいけないのです。こういうことが今、合理的配慮として求められていることなので、積極的に学校の中でもICT機器を導入することを、教育委員会としても促進しています。

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平成28年7月に読み困難の児童生徒の数を調査したのと同時に、どんな児童生徒に合理的配慮をしていますかといったことも調査しました。
そのときに出たのは、こういうことです。
教科書にルビを打つ。
代読する。
定規を当てる。
スリットを使う。
拡大教科書を使用する。
付箋を貼る。
デイジー教科書の活用もあったんです。9名でした。え? と思って。
教科書にルビをふるのが200人ぐらいいるんです。

ですから、デイジー教科書を活用しようと思ったのです。
大学入試もタブレットでやる時代ですね。

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本市でデイジー教科書を普及するために、日本障害者リハビリテーション協会に連絡をとったところ、その時点で先行して3つの市が教育委員会としてデイジー教科書を一括申請していて、そちらの市の教育委員会に電話をしました。

教育委員会が小・中学校の校長先生向けにデイジー教科書を使ってくださいねという文書を発信しますが、それらも参考にすることができました。
学会やいろんな研究会で発表した資料もいただきました。
他の3つの市の仕組みが見えてきました。

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ただし、先ほど申し上げたとおり、大阪市は、そのとき既に学校ICT授業が始まっていました。
いわゆる全市の小・中学校420校にパソコンのノートパソコンとタブレットパソコンが入っていました。
全市でノートパソコンが約2万台、タブレットパソコンが700台、集中して管理します。セキュリティーが厳しいんです。
そう簡単にデイジーを再生、保管するデイジーポッドをインストールできませんでした。
さらに、デイジーポッドをインストールできても、デイジー教科書がアップされている、コンテンツサーバにたどり着けなかったんです。なぜなら、ホワイトリストがあって、インターネットの外にでようとすると、ブロックにかかります。それで教科書までたどり着かなかったんです。
そこで、リハビリテーション協会さんから情報をいただき、教科書のサーバーをホワイトリストに登録することで解決しました。
現在は、大阪市教育委員会がデイジー教科書のコンテンツにたどりつくようになっています。セキュリティーが厳しい教育委員会がほとんどだと思いますので、参考にしていただけばありがたいです。

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これが、大阪市が行っている一括申請の仕組みです。
小学校から大阪市教育委員会に申請します。
小中学校が直接、デイジー教科書サーバーにたどり着きます。
これがデイジー教科書の流れです。
お手元の資料にも入っています。
こういったものを小中学校に配布しました。
校務支援システムの中のパソコン申請書を保管しています。
そこからダウンロードし、Excel形式の申請書に、必要事項を記入して、教育委員会にあげる仕組みとしています。

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これが実際の申請書です。

先生方の名前、先生方の個人のID、6番がインストールする学校のパソコンの端末番号、これが使用する児童生徒のイニシャル、対象学年、児童・生徒の読みの困難さです。
これらを記入していただきます。
管理者権限が各学校に付与されると同時に教育委員会からはデイジーポッドのインストールの手順書を送付します。
インストールの手順書は、全部で、A4で7〜8枚あります。この手順書に従って、学校はインストールしていきます。
わたしは教育委員会の人間なので、子どもたちの前で授業をすることはないんですけれども、大阪市では、平成29年度、2回、デイジー教科書の研修をしました。
5月に日本障害者リハビリテーション協会の方を招いて、その意義や導入方法の研修をしました。11月に実際に実践されている小学校2校と中学校1校の先生にお話をいただき、実践事例を発表していただきました。

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実際のパソコン画面です。
大阪市の授業用のノートパソコンでデイジーポッドを使っている画面です。
デイジーポッドジュニアの画面です。
大阪市立S小学校の事例です。

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放課後に個別指導をしている5年生男児の様子です。特別支援学級在籍の児童です。
入学直後から読み書きが苦手なので学習が遅れました。
4年生のときに医師の診断を受けました。STRAW-Rという読みの検査をしました。ひらがな、カタカナ、漢字の検査、約40分かかります。
この児童に関しては、カタカナの音読の正確性に課題がありました。
漢字の音読の正確性に課題がありました。
音読の流暢性に課題が見られました。

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この児童に対して、放課後を中心にデイジー教科書を使った集中的な実践をした事例です。
9月21日から10月18日にかけて主に放課後、15分〜30分かけてデイジー教科書を使った実践をしました。

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場所は児童が下校したあとの教室。指導は特別支援学級の担当教員。主に国語。予習として使っていました。
目的は、内容の理解。
デイジーの使用日は音読の宿題はナシにしたということです。

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指導の流れはこのような感じです。
・まずは全文を再生する。
・内容把握。
・そのときに質問をします。
・それから部分音読。
・それから内容把握。段落ごとに一人読みをして、それから授業を受けます。

学習の様子です。
表示倍率を190〜220%。
再生速度は標準、あるいは、1段階上を使っています。
文字色は黒、背景色は黄色。
これが実際に学習している写真です。
1〜2週間続けると、実際に、たどたどしい読みだったのが、彼の読みが、このように、かなり速くなりました。

事後の読みの速さですが、紹介します。
(ビデオでの紹介)
最初はたどたどしい読みだったのですが、今のように速い読みになりました。
彼は、国語の「注文の多い料理店」の最後のテストでいつもは30点、40点ぐらいだったのですが、180点くらいとって非常に喜んだそうです。
自分の読みの力が上がって点数がとれるようになったので、それ以降も、自分から勉強しようということで、「先生、勉強、教えて」と、次の単元「和の文化を受け継ぐ」もやるようになったそうです。

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担任の先生から聞いた成果として、文章の理解度が上がった。
・読むことへの抵抗感が減った、文のまとまりで読めるようになってきた。
・漢字が読めるようになった。
・授業の時にもすらすら読めるようになってきた。
・本人自身が、自信がついてきたということです。

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教員研修です。
平成28年度にデイジー教科書にかかる初めての研修をしました。
デイジー教科書の本格的な導入前です。
大阪府、あるいは奈良県でデイジー教科書を先駆的に使っている先生にお越しいただきました。
ノートパソコンやタブレットでの効果について教えていただきました。

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今年度は、5月にリハビリテーション協会の方に来ていただき、導入に関する研修をしました。
11月に、小学校、中学校の先生にお越しいただき、実践報告をしました。

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これが今年度、大阪市がリハビリテーション協会に2月末に送った大阪市の児童生徒の利用状況です。

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デイジー教科書による、小中学校の先生からあがったきた成果です。
・児童が自信を持って音読ができるようになった。
・単語のかたまりがわかるようになり、一文字ずつ読むことが減った。

ある小学校の先生から、デイジー教科書を導入して2週間後に教育委員会に電話がありました。
現場の先生から直接、教育委員会に電話があることはあんまりないんです。
その先生は喜んで電話をしてきました。
教科書を読めるようになった子どもがすごい喜んで、校長室に飛び込み、「校長先生、校長先生、僕の音読聞いて」と飛び込んでいったそうです。
そういったエピソードをどうしても伝えたくて、教育委員会に電話してきてくれました。
とても嬉しかったです。たった1事例ですが、やってよかったと思いました。
読むことに自信がついて嬉しかったのだと思います。
中学校では、自ら教科書を開く意欲が出てきたとか、教科書の内容の理解が進んだと聞いています。テスト前にやるとテストの点数があがるなど、効果があったとの声を聞いています。

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実は、まだまだ課題は多いです。
ここには載っていませんが、利用者を500人から1,000人にする工夫、周知が必要かと思います。
教育委員会は、実際の現場の先生にデイジー教科書を紹介するのが仕事です。学校の先生は忙しいので、できるだけ手間を省いて、児童に指導できるように、その機会を作ること。
現場の先生がどれだけ簡単にできるかが肝かと思います。我々はどれだけ汗をかいてもいいので。
先生方がどんなふうに使っていくか、難しいですね。
この後、紹介していただく長野県の2例は役立つと思います。
実践事例を先生方に提供することが必要だと思っています。
実施に児童・生徒にどのように効果があったか、科学的なエビデンス、効果検証が必要だと思っています。
また、年度更新の方法です。
今回、デイジーポッド4という新しいソフトが導入される予定です。
それは年度更新の方法が簡単になると聞いています。
その辺は、クリアできるのではないかと思っています。

ちょうど、時間となりました。ご清聴ありがとうございました。

長野市立南部小学校

特別支援教育コーディネーター 山ア幸子

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皆さん、こんにちは。
長野県から参りました、長野市立南部小学校の山ア幸子です。よろしくお願いいたします。
今日はこのような発表の機会を与えてくださり、ありがとうございます。

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私は、特別支援コーディネーターをしています。読むことが困難な子どもへのアセスメントとしては多層指導モデルMIMを活用して、スクリーニングテストとして使っています。
全クラスでできているわけではないのですが、できるだけ多くのクラスに毎年おこなっています。
読むことが苦手な子どもを早期発見することが急務であると考えているからです。
行動面で気になるお子さんは担任も気になり目をかけていきますが、静かに座っていて、読めないお子さんには指導が行き届かないという現状があるからです。

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そこで、MIM、ELC、K-ABCUなどを使用して、どこかで引っかかったお子さんには早期介入しようと考えました。
すべてのアセスメントをするということではありません。
そして、これらの児童の保護者や担任と面談して、デイジー教科書の使用を勧めています。

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南部小学校はデイジー教科書を導入して3年目です。
学校図書館として登録し、1〜6年生が使用するすべての教科書をiPadに入れています。
iPadは2台、貸与、1台は学校用、あとは教師の個人用。5台を駆使して活用しています。
よって、困っているお子さん1人1人にiPadを手渡すことはできません。

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使用法は、取り出しの個別使用や特別支援学級の指導、自宅での宿題、予習に使用することが圧倒的に多くなっています。

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本校のデイジー教科書導入の課題は2つあります。
人的環境と物的環境です。
1つ目は、読みの困難な児童の発見のために誰でも何処でも、同じ視点に立てるように通常学級担任への理解啓発を行うこと、研修をしていくことです。それによって担任の行動観察とスクリーニングができるようになります。
2つ目は、全ての教室でデイジーが使える環境を整えるということです。学校の情報システムを整備しセキュリティーの問題を解決していくことです。
これは残念ながら私個人の力ではどうすることもできないので、教育委員会にお願いしたいことです。

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本日はデイジー教科書の活用事例を3例紹介します。

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1つ目の事例は、読みに苦手さを感じていて、学習に自信を持てないでいた小学校6年生の男児です。人前で声を出せず自信が持てず、学習になかなか取りかかれませんでした。
でも、休み時間になると友達の輪に入って仲良く遊んでいました。

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そこでWISC-IVやさまざまなアセスメントの結果、視覚情報を記憶する力、見て速く正確に操作する力、視覚的作業をする力を生かして、
@見て考える、
A操作しながら考える、
B絵や図に描いてみる、
Cやり方を話す、
などができる学習にしようと思いました。

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まずやったことは、デイジー教科書の国語を個別指導で使いました。5年生の1学期からですが、クラスで音読の順番が回ってきても、今までは黙ったままだったのが、声を出して読めるようになりました。

次に考えたことは、通常学級の中でデイジー教科書は使えないかということでした。
社会の授業場面でのビデオ場面では手いたずらが多く、黒板をみようとしない、積極的に授業に参加しようとする時間が明らかに少ない。
しかし、ジェスチャーや視覚的な映像になると食い入るように見つめているのが印象に残りました。

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考察です。
デイジー教科書を使うことで、本児は自分の力で学ぶ力をつけました。
温かく包み込む雰囲気があることで学級作りを担任が工夫したので、通常学級で使うのは難しいと言われていますが成功事例だと思います。
単元テストでも、知識、理解力が増して、ほぼ満点をとれるようになりました。
デイジーを使う前は20〜30点ぐらいしかとれなくて、意欲的に取り組むことはできませんでした。

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2つ目は、早期発見、介入により、言葉の読み誤りが改善した小学校2年の女児です。
WISC4の値は高く知的レベルに問題はないが、音読できないとの相談を受けました。
自宅にて国語の音読の宿題で使用しました。
アンドロイドのタブレットを使用しました。

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デイジーの使用回数、単元、変化を記録しました。
すぐに効果が表れ、初日からつまるところがなくなった。
逆さ読み単語もなくなっていき、読む速度も速くなっていきました。
2か月後には、デイジー教科書を使用しなくても逆さ読みはなくなっていきました。

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保護者のインタビューにより、字の大きさは300%ぐらいにして使用したこと、ひらがなのまとまりをとらえるのに、ハイライトが有効だったことがうかがえます。
そして何よりも読むことが楽しいと意欲が増していきました。

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語頭の読み誤り、思い込み読みは、倍率を大きくし、ハイライトする視覚的支援を受け、音で聞いて言う、アクセントを訂正することにより、初読に苦労しなくなり、逆さ読みが解消されました。
デイジーの使用回数は徐々に減っていきました。
結果、デイジーは良かったという感想を持ちました。

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3つ目は、自宅で使い続けることによって読書の世界を広げていった中学校3年A子さんの事例です。
A子さんは初読では読めないことが多いですが、練習すると読めるようになりました。
もともと利発なお子さんで生活能力も高いので読みが苦手であることが、周りの人になかなか理解されず苦労したお子さんです。

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小学校4年生の頃から通級で私のクラスに通い始めました。
読み間違い、漢字が覚えられない、九九が覚えられないなどの症状がありました。
しかし、知的には何ら問題は見られませんでした。
そのため、努力不足と思われることもありました。

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A子さんには様々なことを試みました。
Irenの有色フィルム、教科書の拡大などです。
有効なことと効果がなかったこともありました。
まさに試行錯誤の毎日です。

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そんなころ、偶然、デイジーを知りました。
ディスレクシアのお子さんに効果があるとのことでした。
当時、A子さんは医療機関にディスレクシアの診断は出ていませんでした。
でも私はこれしかないと、試すことにしました。
私はICTに特に詳しいわけでもなくパソコンが得意でもありません。
でも、きっとデイジーはいいんじゃないかなと直感しました。
それから何度わからなくなってリハ協さんに電話したかわかりません。
そのたびに親切に教えてくださったことに本当に大変感謝しております。
A子さんには国語、社会に使いました。
国語は音読で利用し、社会は内容理解のために聞きました。

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デイジー教科書のよさは視覚的支援と聴覚的支援が同時にできて、読みを促進します。
A子さんは音声でガイドされたことがよかったのではないかと今は言っています。
音楽も聞いて歌詞を覚えるからだそうです。
A子さんのエピソードは、特別支援学級に入るとき、泣いて、幸子先生のクラスに入りたいと言ったことがありました。
A子さんは静かな環境で落ち着いて、授業を受けることを希望していたのでしょう。

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6年生のとき特別支援学級に入りました。
国語「平和について考える」では、全17時間中、ほとんどと支援学級で学習し、最後の2時間を通常学級で学習しました。
最終の時間にスピーチ発表会をしました。
最初、デイジーで読んでも読むのが精いっぱいで、内容まではまだ分かりませんでした。
しかし、2回目、3回目となると内容がわかるようになり、スラスラ読めるようになりました。
「嬉しかった」という感想も書かれるようになりました。

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読みに要した時間も2回目になるとグンと短くなります。
1回目とは優位な差がありました。

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もともと意欲的で、理解力も高いお子さんなので、テスト問題をデイジー化すると満点がとれました。
この調子で中学校にいっても使えれば、と希望を膨らませました。

「平和について考える」では、意見文を書きました。
発表に際して、自分で大事だと思うところに、黄色でラインを引きました。そして読みやすいように、スラッシュを入れています。
これもデイジーを参考にして、自分で工夫した点です。

途中で、「私は心の中に平和のハートを描いてみました」というところがあり、その中に友達と仲よく暮らす、笑顔でいる」とあるんですが、ハートを描いたのは、何か物事を想起するとき、映像が浮かんでくるので、絵や図にした方がわかりやすい最後の部分です。

私は今回iPadを使って、デジタル教科書、デイジーで学習しました。デイジーの花言葉は希望です。
私はデイジーで希望を持ちました。この希望がこれから続く私や他の人の道となるのではないかと言っています。
みんなとは違う、少し違う学び方だけど、私も意見文が書けた、そしてみんなにデイジーをつかっていることを公表することもできました。

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特別支援学級で学んだことが通常学級で生き、グループ活動でお互いにアドバイスをし合う、双方向の相互作用が生まれました。

感想では、みんなの意見があってとてもうれしかったですと書いています。
このように4人グループで話し合いました。
このことで、A子さんの自尊感情尺度は向上しました。

考察です。
デイジーをつかって個別に指導することは、読むこと、読解力の向上に有効でした。
短時間の指導でも有効でした。
誰でも読みに困難を抱えていれば登録して使用できる、有効なツールでもあります。
デイジーを使用することにより、その結果を通常学級にフィードバックすることで集団参加を高め、その結果として自尊感情の向上につながりました。
デイジーをつかって学習することで原文を書く際に文節で区切る、マーカーをしてわかりやすくするという工夫が見られました。
混乱しやすいものを工夫し、自分でセッティングできる、用意できる、攻略を身につけることができました。
デイジーで読みやすくなることは大切ですが、デイジーをヒントに、自分なりのやり方を身につけていくことが最終の目標であると思います。

意見文の発表の中で子ども同士のやりとりがあり、マーカーで視覚的に支援する方法を友達にアドバイスする場面がありました。
アドバイスができたことは、自分の意見を持って発表する際にも有効であったと考えられます。
デイジーで学んだことで、参加の場面の広がりを見せたと考えられます。

半年後に読みがどのように変化したか、同様の難易度である小6国語、「海の命」で検証しました。
読み飛ばし、勝手読みがなくなり、読む速度が増しました。これは「平和について考える」の読みの推移と同様の結果です。
1回デイジーを読めば、時間は短縮されました。

ご静聴ありがとうございました。


上田市立丸子中央小学校

特別支援学級 教諭 池田明朗

平岡先生から行政的な普及の話をされていましたので、上田市のiPadやデイジー教科書の普及について触れたいと思います。
実は、上田市内では今、特別支援学級で1学級に2台、iPadが入っています。
そうなるまでには5年前、平岡先生のような指導主事の方に私の授業を見に来ていただいて、それを教育委員会の方に持っていっていただき、今度は教育長、市長に私の授業を見に来てもらい、そこから議会にかかって、予算化していただいて、次の年度からiPad、デイジー教科書導入ということで、平成27年度から3年かかって今年の29年度で、市内の全小中学校の特別支援学級に配布が完了しました。5年くらいかかっています。

今は丸子中央小学校にいますが、今日話す内容は、平成27年度までいた上田市立神科小学校の実践内容も含めて報告します。
またWISC検査の結果や児童の様子なんかも出てきます。保護者と本人に承諾を得ていることをここでお話させていただきます。
一昨年の4月、障害者差別解消法が施行されて公的機関には合理的配慮の提供が義務づけられました。私の実践報告は、合理的配慮、インクルーシブ教育における手だての一つになるということで報告します。

デイジー教科書を再生するアプリはいーリーダーを使っています。
もう1つはパソコンで動かすソフト、ブロデューサーという製作ソフトがあります。学習プリントをスキャナなどで取り込んだものをデイジー再生アプリケーションで読めるようにしてくれるものです。これで私たち教員が今まで作ってきた学習プリントをデイジー教材としてタブレット端末で利用することができるのです。
実践事例に出てきますので簡単に紹介しました。
前置きはこれくらいにして、今日は実践報告会なので、できるだけたくさんの事例をご紹介します。

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平成27年度は、全校児童760名ほどの神科小学校におりました。特別支援学級に全部で12台のiPad、24名で使用率は3.2%。丸子中央小学校は、今年度全校児童435名で、特別支援学級4クラスで8台、iPadを配置。17名、3.9%の児童が使用しています。
デイジーの使い方はタブレット端末と、デイジーアプリの操作を特別支援学級で学習します。
その後、特別支援学級、通常学級、そして自宅と、児童の個々に合った場所で、学習プリント、テスト問題、宿題などに使われます。
自宅で使っているものは、学校のものを貸せないので、個人で購入していただいたものに限って自宅で使ってもらっています。

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最初の事例です。
6年生になると教材文が長く、文も長くなり、どこを読んでたっけという言葉がよく聞かれます。
Aくんは文章は逐次読みで、漢字の読みがあいまいですが、言葉は流暢に話します。
Aくんがデイジー教科書を読みながら、学習プリントを解いている事例の写真です。
再生している部分をハイライト表示してくれるので、どこを読んでいるか見失うリスクがなくなります。
聴覚優位のお子さんなので、音声再生が中心です。

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写真の学習プリントですが、教科書を読むだけでは学習の理解度がわからないので、プリントで確認します。
これは2年の「スイミー」です。デイジー教科書でこれを読みます。
その後に問題があるので、読める子はルビのまま読み、読めない子は、先ほどのプロデューサーで変換して読んでもらいます。
選択式と記述式と合わせて書いています。書くのが苦手なお子さんは、書くこと自体がストレスになります。そういう子には選択式の回答欄だけ。書けるお子さんは、記述式を用意します。
その子にあわせて、プリントを書き換えて渡しています。

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このお子さんBくんはデイジー教科書を使って、音読学習をしている様子です。
こんなふうにつぶやいたんです。
「おれみんなと一緒に読めない」と。みんなと一緒に学習していたのは、小学校1年生の時まででした。
デイジー教科書を使ってみてはどうか、と話すとやってみるということで担任の先生と打ち合わせして使ったのがこの写真です。

今、私は特別支援学級の担任をしています。
周りに音がもれるとほかのお子さんにうるさくなるので、イヤホンやヘッドホンなど使いやすいものを使っています。ヘッドホンがいいという子もいますが、それぞれのお子さんが使いやすい形で使ってもらい、このように音はイヤホンで聞いて使っています。
通常学級でどう使っているかの様子です。
まずは教師が範読するのを追いかけて読んでいる様子です。
次は役割を分担し、グループで読んでいる様子です。

この2人はデイジー教科書を使う前は、授業で教科書がほとんど読めないので、教科書もひらかず、机に突っ伏して寝ている。担任教師からの相談でデイジー教科書を使う流れになりました。
国語のテストも0点、10点というお子さんです。

今、見ていただいたのは6年生の国語の単元の「やまなし」です。この1時限の授業後、算数の個別授業で私のところに来ました。
教室に入るなり、私に「クラムボン」って何ですか?と聞きました。
仮にDくんとFくんとします。
二人でクラムボンについて会話をしているのです。これ、ただ読んでいるだけじゃないですね。

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そして、この2人のやりとりを見ながら、私は後ろで板書していました。
2人で国語の授業を進めてくれているのです。2人のやりとりを聞きながら、こっそりと、教師用指導書、赤で答えが書いてあるのを見つけました。そこには、クラムボンの正体について時間をかけることは避けたいと書いてあるんですね。
でも算数の授業をやめて2人のやりとりを聞きたいと思いました。

一番驚いたのは、最後にF君が、「クラムボンって妹のことかもな」と言ったことです。
「やまなし」の教科書を何べん見ても妹のことは出て来ないんです。教科書をめくっていくと、その次にイーハトーブの夢という読み物がついています。その中に賢治の妹のことが出てくるんです。
Fくんは、この時間に次のところまで読んじゃってたんです。
F君は45分授業内に妹が出てくる話のところまで読んでしまっていました。半年前までは机に突っ伏して寝ていた子です。
余談ですが、私はクラムボンについて、よく知らなかったんです。あとでよく調べると、宮澤賢治のクラムボンについて、英語のカニ、クラブ説、泡説、母カニ説とか、妹説もあり、この2人は、ほぼ言い当ててますね。
妹説を調べました。2つ違いの妹、トシが賢治にはいました。大正12年になくなっています。
その半年後の翌年5月に「やまなし」を発表しているんだそうです。その流れを考えると、クラムボンを妹として考えることができるんだと。改めて読んでみると、すごい感動する話なんだと私も勉強させてもらいました。

ちなみに、この2人は書くことも苦手です。
タブレット、iPadのカメラ機能を使って、板書を撮影して、次の授業に持っていったようです。

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続いて、プロデューサーを使った事例です。

プリントの問題が読めない、5年生。WISCの検査も低い。漢字の読みは2年生、眼球運動も困難がある。書くことも困難。

このお子さん、ルビをふっていない学習プリントに、最初はデイジーを使わないで取り組みました。これがそのプリントです。
ここに答えが書いてあるんですが、上に、「足し算の式にかきましょう」とある。でも読んでいないので、そこは飛ばして書かないで。

数字だけを見て、今までの生きる力で解いているのです。答えは一応合っています。
これを、プロデューサーで変換してタブレットの中に入れて、それを読んでもらって問題を読んでもらうと、1番上の問題に気づき、問題が解けた。「読めればこの子はできるんだ」と。
この子は国語のテストでも同じようにして、タブレットに変換して入れて、使ったところ、自力で初めて、小学校入学以来はじめて80点をとりました。お母さんはこのテストを額に入れて飾ってあるそうです。もうしまってあるそうですが。それでも初めて80点とったということでとても嬉しかったということでした。

実はこのお子さん、プリント問題も、教科書も読めないので、このように2台使っています。
左がデイジー教科書。右がプロデューサーで変換したもの。
テストの様子をあとで動画であとで見ていただきます。

これは小さいタブレットですが、7インチと、右が11インチぐらい。大きい方がいいんじゃないかとよく聞かれます。

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今、学習プリントはA4、大きい11インチのものを2台並べました。
机の上にタブレットは、いっぱいいっぱいですが、ぎりぎりセーフかな。ただ、横プリントを置くと隠れてしまいます。
お子さんが使うニーズによって大きいものにしたり小さいものにしたり選んであげるのがいいと思います。

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もう一人、5年生、別のお子さんです。
教科書が読めない子。WISC検査の結果も低いですね。漢字の読みも1年生ぐらい。ただ計算は同学年の5年生よりできます。
アンバランスなお子さんですよね。
このお子さんもテストでこのように、長い文章、右側がデイジー教科書。
国語のテストは、上が問題文、下がデイジー。下の問題文を左側のもう1台のタブレットに入れてやっています。

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このお子さんは、5年生から会ったのですが、4年生までテストはいつも白紙だったそうです。真っ白。
今回、これをやったところ、うっすら、見えにくいのですが、75点でした。
「読めばできる」という結果でした。

宿題のプリントもタブレットを使いたいという子。
3年生のお子さん。
診断は特になく、医療機関に行ってない。漢字以外は逐次読み、よくつまずいて間違う。ただしよく喋ります。マシンガンのようにしゃべります。
このお子さんも宿題プリントはこんな感じ。
紙ベースを持っていき、タブレットの中にプロデューサーで変換したものを家に持ち帰って、自分のiPadを持っていき、宿題をする。
いつもはこのお子さん、お母さんが帰ってくるまで、宿題ができなかったそうです。読んでもらわないととりかかれなくて。だからお母さんが遅くなって帰ると、それから宿題、になるので、ご飯もお風呂も寝るのも遅くなって次の日、調子が悪いと。
自分でできるようになってからは、お母さんが帰ってくるころには宿題は終わってる。
生活リズムも整って、おうちの中でも家庭の時間がとれて、お母さんも子どもも喜んだという事例です。

私の教室に、今日相談にくる子がいるというので、教室に入ってきた時にいったセリフです。
私に向かって「漢字さえ読めればいいんです」と。
じゃ、デイジー教科書をつかってみる?と言うと、「先生、この教科書、どこに売ってるんですか」と聞かれました。
このお子さん、実は、検査で言語理解の数値は高いんです。処理速度もそこそこ。視覚優位で聴覚からの情報入力が苦手。漢字の読み書きに困難があります。
ただ、ものすごい絵の才能がある。抜群です。絵画コンクール、ほぼ金賞です。
私も観ると、モネとか印象派、あんな感じの絵を描きます。
私の所に来た時は、「100年後のふるさと」も10点、こんな状況で私のところに来ました。
タブレットのデイジー教科書をつかってテストを受けてもらった様子です。

この結果が、いくつかは三角ですが、あとは○。最後、時間がなかったのか書いていないのですが、いっぱい書いてあります。テスト文はここにありますが、この子はデイジー教科書まで、この続きまで読んじゃって。後ろから答えを引っ張ってきている。でも内容的には合っているんです。
担任の先生は「よく書けたね」と言っている。ここから選べということなので、○はできないので、結果は75点でしたが、デイジー教科書を使うとこれだけ差がある。
現在は、各テスト会社からは総ふりがなテストということで、テストの漢字に全部ルビがついているのがサービスでついてきたり、購入して用意したりなどできます。タブレットなしでもテストが受けられます。

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次は、衝動性のあるお子さんです。
WISC検査も、目からの情報も、処理速度も苦手なところがありワーキングメモリも低め。診断はADHDで、衝動性が激しいです。逐次読みですが、言葉は流暢に話します。
通常学級での授業中は教室の後ろに掃除用具のロッカーがあります。
その上に座って、腕を組んで、見下ろしながら先生の授業をうけているというお子さんです。
この子も、最初の3年生のときのテスト、これが破っちゃったもの。2回目のものは破ってしまったものです。

デイジー教科書を読んでテストを受けてもらったら60点でした。
次は特別支援学級にきて、デイジー教科書を使ってもらいましたが、テストのときはつかわないでもらいました。頑張っても20点。
それなら使ったほうがいいね、とデイジー教科書を使ってテストを受けたところ85点をとりました。
第6回目の「ごんぎつね」のテストの時は、自信あるからデイジー教科書いらないと、持っていきませんでした。
自信あるならいいよと、頑張りましたが、30点だったんです。
やっぱり使ったほうがいいよと、次のテストで使ったところ85点を取りました。
単元テストの評価ですがデイジー教科書を使ったときと使わない時では、これだけ差があるという結果になりました。

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3年生のお子さんです。
特別支援学級でデイジー教科書を使って学習したときに、つぶやいた言葉がこんな言葉です。
「これがあれば、○年○組で(みんなと一緒に)勉強できるのにな」とぼそっとつぶやきました。
ワーキングメモリは低いですがほかの数値は結構高い子です。多動です。
1年生の漢字の読みでつまります。言葉は流ちょうに話します。2年までの国語の単元テストは、最高で30点でした。
このお子さんに、タブレットのデイジー教科書を使ってテストを受けてもらったところ、「きつつきの商売」でいきなり100点。
次の単元も93点、90点、90点と、ずっと90点前後をとり続けました。

4年生になって国語の授業は通常学級でタブレットを使って学習をしています。
授業では通常の教科書も使っています。
先生が何ページの3行目を見てくださいと言ったとき、デイジー教科書は読みやすい大きさにポイントを変換しているので、行がずれてしまいます。
先生が3行目と言ったとき、こちらで確認して、同じところを自分で探して学習を続けます。
後ろを向いている子もいる中、この子は真剣に授業を受けて挙手して答えています。
このように4年生の時は国語の時間をずっと学習しました。
今度5年になりますが、特別支援学級を利用せず、デイジー教科書があれば大丈夫ということで、4年生からは通常学級に在籍ということになりました。
ちなみに国語のテストの裏面ですが、漢字は全滅です。5点。でも下の言葉の問題は全問正解です。
バランスが悪いですが、読めればできる、お子さんです。

実は4年生のテストで総フリガナテストを使いました。
1回目の90点は、デイジー教科書を使ってもらいました。
次の単元は総フリガナテストだけ。デイジー教科書は使いませんでした。
勝手が違ったのか78点。
次の総フリガナテストでは90点でした。
ということは、テストにふりがながあればできるお子さんの場合もあるということです。
通常の授業ではタブレットを使っていますが、これは中学校のテストや高校受験でも、デイジー教科書がなくてもルビの配慮があれば、このお子さんは通常の児童生徒と何ら変わりなく、授業を受けられる例です。

スライド1

簡単にまとめます。
本来、デイジーは視覚障害者に開発されたものですが、タブレット端末、デイジー再生アプリケーションなどによって読みに困難な児童、生徒に有効であることがわかりました。
タブレット端末、デイジー教科書を使用することで、通常学級でみんなと一緒に学習できることもわかりました。
平岡先生と山ア先生もおっしゃっていたように、わかる、できる、学習意欲が向上する、ここが一番だと思います。

デイジー教科書がささえてくれたのは何か。
教師がよくやりがちなのは、読めない、書けないといったとき、まず五十音を覚えてから、語彙を増やしてからなど、ステップをつくりたくなるんですが、読むって楽しいとか、自分で読める、だからまた読みたいってなるんだと思うんです。
「できそうだ」ということが支えられたこと、意欲が継続したことでできたのはないか。
ここのやる気ですね。
そこが一番デイジー教科書に支えてもらっているところかなと思います。

いろいろな所で、研修会に出ていますが、ある講演会でノンステップバス、床の低いバス、ユニバーサルデザインと言われているもののバスの話を聞きました。
ノンステップバスをただ走らせるだけでは意味がない。ちゃんとバスの運転手さんが、停留所の狭い場所ではずらして、乗り降りしやすい場所に動かして、バスを利用してもらう配慮をしている。
実はタブレット端末、デイジー教科書も同じで、当たり前に使える環境を、学校、教師の側が用意する。学級経営もそうです。
誰もが学べるための配慮をすることが1つ。
それからスマホやケータイ、ゲーム機のように、タブレット端末を中学で紹介すると、スマホと一緒でしょと言われるんですが、そうではなく、メガネや補聴器と同様に当たり前に利用できる、そのための柔軟な対応が学校側には必要だと思っています。
時間となりましたが、文字が読めない、漢字が読めないという壁を取り払うだけで通常学級の中で自分の力を発揮できる、そういうお子さんたちがたくさんいるということを、今日はご覧いただきました。
ぜひ様々な場で、デイジー教科書を使っていただきたいという思いを込めて終わりたいと思います。ありがとうございました。

平成28年3月31日作成の活用事例をご紹介します

ここでは、マルチメディアデイジー教科書を活用いただいている学校の先生の協力を得て、活用事例を掲載いたします。

 

 

学習障害(ディスレクシア・算数に弱さ)小学4年児童への指導
(1)本児の現状

本児は、学習障害(ディスレクシア・算数に弱さ)の小学4年生である。
通常学級に在籍し週2時間通級指導教室での指導(読み書き・算数)を受けている。1年生でひらがな学習が始まり、ひらがなの定着が悪いことから読み書きに困難さを持つことがわかった。
小学2年生から週に1時間読み書きの指導を受け、ひらがなやカタカナは、定着してきたが3年生から学習単語が増え、教科書を読んで内容を理解することが難しく学習に対して意欲が低下しやすい。意欲の低下を防ぐため学習内容の獲得のための支援が必要である。支援の一つとしてデイジー教科書を使って予習と復習を行っている。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

「パソコン」「iPad」

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画
  • 個別の指導計画は、通常学級と通級指導教室での学習上の支援ツールとしてマルチ導計画にマルチメディアデイジー教科書の使用方法や家庭学習での使用について通級での学習指導と共に学習することを記載する。
  • 個別の教育支計画には、長期目標を視野にデイジー教科書の使用教科等必要な支援内容について記載する。
(4)指導の内容
  • マルチメディアデイジー教科書の再生の仕方(パソコン・iPad)と自分に合わせた設定のしかたと使用場面を児童と共に考える。
  • マルチメディアデイジー教科書を使って、あらかじめ学習内容をつかむ。
  • マルチメディアデイジー教科書を使って漢字の読みを確認し、紙の教科書にルビをふる。
  • テスト前に学習内容を復習する。
(5)支援機器の使用効果あるいは、指導の効果と支援機器の評価
  • マルチメディアデイジー教科書を使うと学習内容をほぼ理解することができ、読めないことで学習内容が理解できないということが少なくなった。また、読める単語や熟語が増えた。
  • 学級での学習時の参加態度が積極的になった。(挙手・音読)
  • 単元末テスト(読み上げ支援)で高い点数(100〜80点)をとれる時もあり、学習への達成感を感じることができ自信がついて学習意欲の向上に繋がった。
  • 学習単語や熟語の習得がしやすくなった。
  • マルチメディアデイジー教科書を使用することで、読みへの抵抗感が少なくなった。
  • 絵本を読もうとする姿が見られるようになった。
(6)まとめと今後の課題

 読みに困難さを持つ児童が、通常の教科書を読むことは難しく、文字による情報を読み取ることは困難である。読むことができればその中にある内容を理解することができる児童である。しかし、文字を読むことに難しさを感じるため文字や文章から遠ざかる。マルチメディアデイジー教科書を使用することで、難しさを感じている児童自身に文字へのアクセスの方法を知らせることになる。それまで読めない教科書、頑張って読んでも理解できにくいため学習に抵抗感を持ち、授業での態度が悪かったが、マルチメディアデイジー教科書やデイジー化されたテストを使用し支援をすることで学習への抵抗感を減らし、達成感を持つことができた。

 通級指導教室担当と学級担任の日常的な連携によって通級指導教室での指導と在籍学級でのデイジー教科書やデイジー化されたテストを有効に活用することができた。

 今後は、本児への合理的配慮を明記している個別の指導計画や教育支援計画で支援方法を引き継ぐことが求められる。中学校での支援にも繋がるように連携していくことが不可欠である。また、本児自身が必要なときに活用できるように本児の活用技能や学習方法の選択ができるように支援していくことも必要である。

読みに困難を感じている児童への指導

長野県長野市立南部小学校 山ア 幸子 教諭

(1)本人の現況

 本事例の対象は、小学校の通常学級または特別支援学級に在籍する児童である。知的に発達の遅れはないものの、読みに困難を生じている児童である。教科書や配られたプリント教材、テストの文章が読めないために、周りの児童から理解されない、または自尊感情が低くなってしまっていた児童である。このような児童に印刷物である教科書ではない方法でアプローチしていくことが重要であると考えた。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

使用機器:

iPad 「Voice of Daisy」
パソコン 「 EasyReader Express」

特長

教科書のハイライトされた部分を読み上げる。
速度や大きさを調節できる。
教科書の挿絵や図も表示されていることから、通常の教科書と同じように使用できる。

使用した機器を選定した理由
デイジーは、日本障害者リハビリテーション協会で提供を行っているデジタル教科書である。小中学校の教科書に対応して作ってあること、フォントを大きくする、色を変えることができる、読む速さや音量を変えることができるなど、授業に合わせて視覚的にも聴覚的にも支援できる利点がある。また、登録すれば簡単にダウンロードできること、自宅や学校のPCを利用することができることなど利便性が高い。

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画

個別の指導計画は、全教科の「指導の工夫と配慮事項」にDAISY教科書の使用を記載する。また、PC環境の構築、個人のiPadの使用を記載する。また学習の状況について記載する。
個別の教育支援計画は、「学校での生活」の「必要な支援内容」の項目に、関連する学習状況を記載する。
個々の児童生徒の支援内容をデータベースに掲載して、関係教員がいつでも確認できるようにする。

(4)指導の内容
  • 近隣の小中学校の特別支援学級担任者会でデイジーを紹介
    自校では、全職員に登録のしかた、ダウンロードのし方、実際にタブレットを操作してもらう。
  • デイジーの使用法
    通常学級の児童を個別に取り出して指導をする。授業時間や朝の時間を利用した。
    特別支援学級の児童に特別支援学級にて指導する。主に国語と社会で利用した。
    自宅にて宿題の国語の音読で使用した。
    自宅にて予習に使用した。主に聞いて内容を理解することに使った。
    教科は国語、社会、理科で利用した。
(5)支援機器の使用効果あるいは、指導の効果と支援機器の評価

 デイジーの良さは、読む部分を抽出して提示すること、フォントの大きさをアレンジすることができること、背景色、ハイライトの色を変えることができること、漢字にルビがついてものを提供される教科書もあり、視覚的な支援ができることである。
 また、音声でガイドしてくれること、音声のスピードを調整することができることにより聴覚的な支援も受けることができることである。それにより、読みを促進することができ、理解力が向上した。
更に誰かに読み上げてもらうのではなく、自分で速さや大きさを調節して読むことで、もう一度読み返したい場所に簡単に戻ることができる。また、他人を気にしないで自由に操作できる。
以上から自分でやればできるという自己肯定感の向上にもつながった。

(6)まとめと今後の課題

 読みに困難を抱えている児童にとってデイジーを使用することは、読みの速度を促進させることに有効であった。また、漢字の読み間違いが減ること、語頭や語尾の読み間違いが減ることがわかった。特に予習で使用することの有効性が示された。
 保護者にデイジーの使用により子どもがどう変化したかインタビューしてみた。読むことに抵抗感がなくなり、以前に比べて意欲的に読むこと、内容を理解しやすくなった、宿題に取りかかるまでの時間が短縮されたなどが示された。保護者にもデイジーを使用することが読みの困難を改善する方法になっていると実感していることが推察される。
今後は、通常学級の中でデイジーを使用する方法について事例を積み重ねていき、検討する必要がある。更に、タブレットやPCを使用することが通常学級の中で当たり前になって、どの子どもも「できる、わかった」を実感できるような物理的な環境を整えていく必要がある。

高等部3年(肢体不自由、構音障害、中途難聴、知的障害)生徒への指導

奈良県立明日香養護学校 高等部  村瀬 直樹 教諭

(1)本人の現況

 高等部3年生(2015年度現在)のAくんは、肢体不自由があり不随意運動が原因でゆっくり行動する傾向にある。また、構音障害、中度難聴、知的障害があるので、聞いたことを理解し、思ったことを言葉にして発言するまでに時間がかかる。小学校中学年程度の漢字を読むことができる。筆記は、不随意運動で字形がゆがむうえに時間がかかる。以上の理由で、高等部入学当初は、学校生活やまわりの学習ペースにあわせることが難しく、受け身的で消極的であった。また、そのことでストレスをため、気持ちが不安定になることがあった。

 しかし、Aくんは、会話やスポーツ、本を読むことが大好きである。特にプロレスに興味をもっており、週刊誌を買って読んでいるが、ひらがなと小学校中学年程度の漢字だけを読むので、内容を理解することが難しく困っていた。

Aくんは、プロレスの雑誌をもっと読みたいという願いをあり、高等部2年生の2学期から、自立活動の時間に本に書かれている内容が理解できる方法を探し始めた。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴
@パソコン
再生ソフト「EasyReader Express」など

AiPad(10インチ)

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画

 主体的に活動できる環境を整え、自己肯定感を育てる取組を学校生活全般で行った。その一つとして、Aくんがもっている能力を使い雑誌を読むことができる方法を身につけることを目標にし、自立活動の時間に取り組んだ。

(4)指導の内容

 いつでもどこでも読めるように考え、10インチのタブレットPCを使用してマルチメディアデイジー図書などの電子書籍を音声で読み上げさせた。使用したタブレットPCの大きさだと手首を置く位置が定まらず、手指がうまく動かせず使いづらいことがわかった。一時停止など操作したいときに、気持ちが焦り目的の場所を正確にタップできなかった。

 そこで、デスクトップパソコンを使いマルチメディアデイジー図書を読むようにした。慣れているキーボードやマウスなどを使用したので、操作が楽になり、集中して読むことができた。内容もほぼ理解することができていた。理解が難しい言葉については説明した。

 繰り返しマルチメディアデイジー図書を使用すると、自分にあった読み方が文字を見ながら音声の読み上げを聞くことだということを理解することができた。難聴による不鮮明な耳からの情報を、文字を見ることで補い、漢字が読めないことを音声が補って読書ができたと考えられる。

 しかし、マルチメディアデイジー図書を使用した読書は、読みたい本が見つからず、あまり興味を示さなくなった。

 一方で、Aくんは、家庭に帰ってからプロレス雑誌の記事をスマートホンに文字入力し、音声読み上げを繰り返し聞いて楽しむようになった。読めない漢字は、母親に読み方を聞いて入力していた。入力した記事や写真を見ながら音声読み上げを聞く方法は、マルチメディアデイジー図書の機能をAくんなりに試行錯誤して再現したものであった。音声読み上げは、人に聞かせるために使用するようにもなった。これらの方法は、2年生3学期から始め、3年生3学期現在でも余暇活動として継続している。

 高等部入学当初から、学級の教員とEメールでやりとりをしているが、3年生になる頃には、内容や文章の構成がわかりやすく整ったものになった。放課後等デイサービスの連絡帳の写真や文を見て、その日にあったことを思い出しながら文章を作成し、入力していた。Aくんに尋ねると、写真と文字があると言いたいことを思い出してまとめやすいことに気づき、この方法を考え出したと教えてくれた。

 Aくんは、読書する方法を考え出したことで自信がうまれ、積極的に学校生活にかかわるようになった。

(5)効果

 マルチメディアデイジー図書を使用し、自分の特性を理解してどのようにすれば読書しやすいか学習した。その結果、音声読み上げと文字の組み合わせが自分にあっていることを理解し、実生活に活かすことができた。
 マルチメディアデイジー図書に読みたいものがない場合、どのようにすれば解決するか様々な方法が考えられる。そのうち、Aくんがおかれた環境のなかで最善の方法をAくん自身で考えることができた。普段から主体的に活動できるよう環境を整えたり、支援したりしたことが土台となり、シンプルでわかりやすいマルチメディアデイジー図書を使用して学習することで、達成されたと考えられる。
 波及効果として、自己肯定感が低かったAくんが自信をもち、積極的に様々な活動に参加するようになった。書くことによって気持ちが伝わることがわかり、文章を書くことに興味をもつようになり、Eメールや作文での文章表現が豊かになった。結果、安定した気持ちで日々を過ごせるようになった。
 Aくんは、母親ともEメールでやりとりをしているが、3年生の2学期に、初めて母親に「ありがとう」という言葉を送った。会話では伝えたことがなかったので、保護者の方も喜ばれ、視覚的に伝える大切さを実感されていた。

 

(6)今後の課題

 卒業後の進路先と連携し、身につけた力を活かしてコミュニケーションがとれるように中度難聴や肢体不自由に関する理解を深める引継を行いたい。Aくん自身についても自分のことについて説明と必要な支援を求めることができるように、さらに自己理解をはかっていきたい。

 教員にとってマルチメディアデイジー図書は、シンプルなので教科学習だけではなく、自立活動の指導や余暇活動としての読書支援、マニュアルなど様々な目的で使用することができる。柔軟に生徒の要望や成長にあわせて、マルチメディアデイジー図書のよさを活かした指導や支援にあたっていきたい。

 

通常学級におけるマルチメディアデイジー図書の活用 (小学6)

長野県上田市立神科小学校 池田明朗 教諭 

(1)本人の現況

国語と算数は特別支援学級を利用している。言葉はとても流暢に話す。漢字の読みが曖昧で、ルビを振ってあげた教科書を読む時にも逐次読みになってしまう。多動や不注意の傾向があるため、長文を読んでいる時は、読んでいる所がわからなくなってしまう。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

iPad「い〜リーダー」

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画(本人の希望する支援)

<実 態>

  1. 算数の問題が解けなくて黙ってキョロキョロしながら困っていた時、「わからない時は、先生わかりませんとか、先生教えてくださいって言えばいいんだよ。」と話すと、その後、わからない時には「先生わかりません、来てください」と言って呼ぶようになった。
  2. 自分で解けなかった国語の学習プリントの問題を、国語の教科書を教師が読んでから解いたところ、「あっ、わかった」と言って解くことができた。
  3. 国語の教科書を音読する時、漢字の横にふりがなを書いて読んだところ、つまずかずに読むことができた。
  4. 計算問題で、全体の計算を終わった筆算を見せながら説明すると「そういうことか」と理解した。
  5. 朝の挨拶をほめたところ、次に挨拶した時はさらに大きな元気な声で挨拶した。
  6. 算数で図形の問題を解けた時、「難しい問題を解けたね、すごいね」とほめたところ、「もう1問やろう」と、さらに自分から新しい問題に取り組んだ。

<とらえ>

  • 困った時に言葉で表現する方法を教えると、礼儀正しく適切に使うことができる。(1)
  • 漢字にふりがなをふったり、教師が代わりに読んであげることで、文章を読んだり理解したりすることが できる。(2、3)
  • 視覚的なヒントを与えることで自分の力で問題に答えることができる。(4)
  • 賞賛したり、自信を持たせることで、自分から積極的に活動する姿勢が見られる。(5、6)

<期待できる姿>

  • 自信を持って自分の考えを言葉で表現したり、活動に集中して取り組むことができるようになる。

<手だて>

  • 文字の学習は音声が出る文字ボードやパソコンソフトなどを使い、聴覚や視覚の得意な面を優先的に用いながら学習する。
  • 国語の教科書は朗読CDやデイジー教科書などを使いながら学習を進め、なるべく本文を暗唱しながら内容を読解していく。
  • できなかったことができるようになった時や、できなくても頑張って努力した時は必ず賞賛する。
  • 成功体験を多く積み重ね、自信を持つようにする。

<生活単元学習・自立活動のねらい>

  • 情緒の安定をはかり、静かな学習環境の中で集中して学習ができるようになる。

<教科・個別学習の時間のねらい>

  • ルビが振ってある国語や社会の教科書を読めるようになる。
  • 算数は6年生の基礎的な学習を中心に理解することができるようになる。

<保護者の願い>

  • 読み書きの力をのばしてほしい。
  • 原級との人間関係を切らないでほしい。
  • 中学校へ進学しても通級で特別支援学級を利用したい。
(4)指導の内容

タブレット端末でマルチメディアデイジー教科書を使用し、ハイライトと読み上げ機能を利用している。通常学級での一斉授業で使用し、教科書を教師が範読したり友だちが読んだりしているところを、手動でハイライト表示を動かして追いかけていく。児童が座席順に一文ずつ交代で読んでいく時には、音声再生を聞いてそのとおりに声を出して読む。
集団の中で使用する時はヘッドホン又はイヤホンを使用する。
学習している様子

(5)効果

音読が滑らかにできるようになった。自信をつけて、その後も通常学級の国語の時間に参加するようになり、単元テストもタブレット端末とマルチメディアデイジー教科書を使ってみんなと一緒に受けるようになった。

(6)今後の課題

特別支援学級在籍の児童が、通常学級の一斉指導の授業に参加できるようになった。課題として、タブレット端末とマルチメディアデイジー教科書を通常学級の中で利用するにあたり、学級内の他の児童への理解など、だれもが学べるための配慮を行う必要がある。

国語科単元テストでの活用を通して (小学5)

長野県上田市立神科小学校 池田明朗 教諭

 

(1)本人の現況

通常学級在籍の児童。視覚優位で聴覚からの情報入力がとても苦手である。教師の言語指示はあまり伝わらない。
漢字の読み書きにも困難があり、算数の文章題も計算より漢字の読みでつまずく。しかし、統計処理の能力は高く、正確にグラフを書いたり読み取ったりすることが得意である。また絵画も得意で独特の表現で描く絵はいつも絵画展で入選する。
漢字の読みでつまずくことから教科書が読めず、授業中は机に突っ伏して教科書を開くこともせず、授業や学習に意欲を持てずにいた。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

iPad「い〜リーダー」
 PLEXTALK Producer (DAISY製作ソフト)

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画(本人の希望する支援)

<実 態>

  1. 算数の問題がわからずに困っていた時、「わからない時は、先生わかりませんとか、先生教えてくださいって言えばいいんだよ。」と話すと、その後、わからない時には「先生わかりません」と言って呼ぶようになった。
  2. 計算をする時、1マスにひとつの数字を書くようにして計算したところ、位取りを間違えることなく計算することができた。
  3. 算数の文章題で、模型やブロックを使って説明すると「そういうことか」と理解した。
  4. 朝の挨拶や礼儀正しいしぐさをほめたところ、挨拶やしぐさがますます丁寧になった。
  5. 算数の問題を解いた時、「解き方を覚えたね、すごいね」とほめたところ、ガッツポーズをして「ここまでやる」と、自分から区切りの良いところまで問題に取り組んだ。
  6. タブレットとデイジー教科書を使って、音読することができた。また、面積を求める問題も電卓を使う ことで計算でつまずくことなくスムーズに解くことができた。


<とらえ>

  • 困った時に言葉で表現する方法を教えると、礼儀正しく適切に使うことができる。(1)
  • ノートの使い方をパターン化し、マス目ノートを使って字や数字を見やすく整理することで、間違いを減らすことができる。(2)
  • 具体物で視覚的なヒントを与えることで自分の力で問題に答えることができる。(3)
  • 賞賛したり、自信を持たせることで、自分から積極的に活動する姿勢が見られる。(4、5)
  • 苦手な活動は、タブレットや電卓など代替機器を使うことで活動することができる。(6)

<期待できる姿>

  • 自信を持って自分の考えを言葉で表現したり、自分の力で学習に取り組もうとする姿が見られるようになる。

<手だて>

  • 文字の学習は、大きいマス目のノートを使ったり、タブレットやパソコンソフトなどを使い、視 覚を優先的に用いながら学習する。
  • 国語などの教科書はタブレットとデイジー教科書を使って本文の内容を理解し、読解していく。
  • 苦手な計算は電卓等を使い、計算に時間をかけないようにして単元の内容を理解をしていく。
  • 賞賛する機会や成功体験を多く積み重ね、自信を持つようにする。


<生活単元学習・自立活動のねらい>

  • 静かな学習環境の中で、自分のペースで学習 ができるようになる。

<教科・個別学習の時間のねらい>

  • 6年生の漢字100字を書けるようになる。
  • 算数で、6年生の学習ができるようになる。

<保護者の願い>

  • 読み書きの力をのばしてほしい。
  • 計算の力をのばしてほしい。
(4)指導の内容

タブレット端末で総ルビのマルチメディアデイジー教科書を使用し、ハイライトとともに利用している。通常学級での一斉授業で使用し、教科書を教師が範読したり、友だちが読んだりしているところを、手動でハイライト表示を動かして追いかけていく。

児童が座席順に一文ずつ交代で読んでいく時には、読んでいる所をハイライト表示で追いかけながら、自分の番になると音読する。

学習プリントや単元テストを行う時は、DAISY製作ソフトウェア「PLEXTALK Producer(プレクストーク プロデューサー)」で自作した学習プリント又は単元テストをDAISYデータ化し、利用する。例えば国語の単元テストでは、テストの上段部分は、マルチメディアデイジー教科書をテスト出題範囲部分から頭出しできるように設定したものを用意し、テスト下段の問題文は教師が自作しDAISYデータ化してもう1台のタブレット端末で再生できるように用意し、合計2台のタブレット端末を使用する。
表

 

(5)効果

タブレット端末とマルチメディアデイジー教科書を使用することで、学習への意欲が出てきて授業中も発言をするようになった。単元テストでは、今まで0点又は10点だったものが、75点をとることができた。「僕、漢字さえ読めればいいんです」という本児からの訴えどおりの結果となった。
*

 

(6)今後の課題

読むことに困難を持つ通常学級在籍の児童が、授業や学習への意欲が持てるようになり、授業態度も変わった。「PLEXTALK Producer」を教育現場で活用するための課題として、あまりICTに精通していない教師にも利用できるような操作の簡易化、そして、単元別の学習プリントや単元テストをテキストファイル化した、ベースになるデジタルコンテンツの整備があげられる。

宿題プリントでの活用を通して (小学3)

長野県上田市立神科小学校 池田明朗 教諭

 

(1)本人の現況

特別支援学級在籍の児童。漢字以外は逐次読みできるが、言葉のまとまりとして読むことは困難である。流暢に会話し、言語による指示もしっかり理解できる。

(2)使用する機器(支援機器)の名称と特徴

iPad 「い〜リーダー」
PLEXTALK Producer (製作ソフト)

(3)個別の指導計画と個別の教育支援計画(本人の希望する支援)

<実 態>

  1. 日直当番のときは、日めくりをしたり、ホワイトボードに給食のメニューを書き写したりしていた。
  2. ひまわりの教室にすすんで勉強に来て、予定をひとつひとつ聞いて確かめていた。
  3. お手本があると、文字をていねいに書くことができる。
  4. 算数の計算問題はひとつひとつ○をすると、一生懸命やろうとしていた。
  5. タブレットで国語の教材を何回も読むと、内容を理解して質問に答えることができた。
  6. 調理活動を喜んでやり、用意やかたづけをすすんでやっている。。
  7. 朝は、クラスの仲間と校庭に出て、元気に遊んでいる。


<とらえ>

  • 自分の仕事を一生懸命やる。(1、6)
  • 見通しをもち、安心できると活動することができる。(2、3、4)
  • 聴覚優位で、文章を聞いて簡単な質問に答えることはできる。(5)
  • 調理や手芸などの活動を通して、学習に積極的に取り組む姿勢が見られる。(7)
  • 人にすすんでかかわろうとしている。(7)


<期待できる姿>

  • 一人でできる学習がふえ、自信がもてるようになる。


<手だて>

  • 気が散らないように集中できる環境を整えて、簡単な問題を一人で進められるようにしていく。
  • 自分からすすんでやろうとしている時は必ず褒め、成果が見てわかるようにしていく。
  • 手や指を使ったいろんな活動を通して目と手の協調性を高めながら、学習をすすめていく。
  • タブレットとデイジー教科書を使って、音声再生をしながら文章を読むようにする。
  • ビジョントレーニングを取り入れ、目で物を見ていく力をつけていく。
  • 調理活動や販売学習等を通して、人とのかかわりから、社会性が持てるようにしていく。
  • スモールステップで成功体験を積み重ね、自信が持てるようにする。


<生活単元学習(作業学習)のねらい>

  • 製作活動を通して成功体験を積み重ね、自分からすすんで活動するようになる。
  • 調理活動や販売学習を通して食べ物を作る喜びや人とかかわる喜びを知り、お金の計算や、用件を伝えることができるようになる。

<教科・個別学習の時間のねらい>

  • 指をしっかり動かして計算問題に取り組める。
  • 語彙数を増やし、日常生活に必要な指示や単語がわかるようになる。
  • 右と左がわかり、安全に気をつけて生活できる。

 

<保護者の願い>

  • ひらがな・カタカナが読めるようになってほしい。
  • 計算力をつけてほしい。
  • まわりの人を思いやる気持ちを大切にしてほしい。


(中学校、高校もタブレット端末とデイジー教科書を使いながら学習をさせてもらいたい)

(4)指導の内容

DAISY製作ソフトウェア「PLEXTALK Producer(プレクストーク プロデューサー)」で自作した宿題プリントをハイライトと読み上げ機能で利用する。児童は宿題データを入れたタブレット端末と宿題プリントを持ち帰り、自分でハイライト表示や音声再生をしながら宿題を行う。

画面

 

(5)効果

タブレット端末で宿題を持ち帰るようになり、自分の力で宿題プリントができるようになった。母親や教師が側で読んであげなくてもできるようになり、学校から家に帰るとすぐに宿題を始め、宿題を終えた状態で夜は家族と過ごすという、良い生活リズムまで作ることができるようになった。

(6)今後の課題

読むことに困難を持つ児童が、母親が側にいなくても自分の力で宿題プリントを行うことができるようになった。課題として、個人で購入していただいた家庭のみで実施しているため、今後、タブレット端末の購入補助など公的な援助があることで利用児童が増えるものと思われる。